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<コラム>米高官が真剣に話すトンデモ次世代戦闘機案、新センチュリーシリーズ

配信日時:2019年4月23日(火) 13時50分
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中国のA2/AD(接近阻止・領域拒否)と呼ばれる戦略に対応するために、アメリカは航続距離の長い高性能な戦闘機の必要に迫られている。しかし、現在の米空軍はまだ対応できていない。資料写真。

1991年にソ連が崩壊して、冷戦が終了すると、アメリカの覇権をおびやかすような国はなくなった。アメリカの敵になったのは、米空軍よりはるかに劣る相手になった。たとえば多くの中東の戦いでは、アメリカ空軍は攻撃目標から近い基地から活動することができた。そのような戦いでは、性能はそこそこで、航続距離が短いかわりに、安価で数多くの任務をこなせる戦闘機が重んじられた。

しかし、ここ約10年での中国の急激な台頭でふたたび状況が変化している。中国のA2/AD(接近阻止・領域拒否)と呼ばれる戦略に対応するために、アメリカは航続距離の長い高性能な戦闘機の必要に迫られている。しかし、現在の米空軍はまだ対応できていない。

未来を予測することは、非常に難しい。ひょっとしたら技術的ブレイクスルーがおこり、中国の戦略がまた変わるかもしれない。あるいは、奇襲的に米戦闘機が最も苦手とする能力を重点的についてくるかもしれない。

たとえばF-35A戦闘機は、メーカーが主契約を勝ち取ってから、初期作戦能力を獲得するまでに15年かかっている。新戦闘機を開発する十数年もの長い期間に、将来の戦場の環境が変わってしまっているかもしれない。どうしたらいいだろうか?

2015年からアメリカ国防総省と米空軍は、将来の航空戦で有利になる技術の分析をずっとしてきた。しかし、米空軍次官補(調達・技術・兵站担当)のウィル・ローパー氏は、空軍が正しい戦略として選んだものにまだ満足していない、と米空軍協会が主催するシンポジウムでレポーターたちに語った。英字航空雑誌『アヴィエーションウィーク』が伝えている。

「2030年の脅威を予測することは不可能である、ということを受けとめなければならないと思う」ローパー次官補は言う。「センチュリーシリーズ時代の独創的な米空軍のことをあらためてよく考えてみてほしい」

1950年代にアメリカは、さまざまな用途に特殊化した戦闘機を何種類も導入した。それがセンチュリーシリーズである。ローパー次官補は、有名なセンチュリーシリーズこそが、『次世代航空支配(NGAD)』計画がお手本とすべきものだと考えているという。

何種類も戦闘機を開発して配備しておけば、技術的なブレイクスルーがおこったり、未来の戦場に予期しないことがおこったときのためにリスクヘッジできる。

「考えてみてほしい。もしも、3から4年ごとに新しい種類の航空機や衛星を開発することができれば、どれほど敵にとって破滅的だろうか?それが2年ごとなら?」ローパー次官補は言う。「ひょっとしたら、それらは実戦には必要ないかもしれない。しかし対応するためのコストを敵に強要し、戦わずに打ち負かすことができるかもしれない」

現代のデジタルデザインツールを使用すれば十分な類似点をもちながら多様な航空部隊をつくることができ、一般的な航空部隊にだいたい匹敵するくらいのコストで維持することが可能である、とローパー次官補は言う。ローパー氏は、デジタル工業技術での少量生産の可能性について、いまいちど考える必要があるとしている。

しかし、本当にそんなことが可能だろうか?英字外交誌『ナショナルインタレスト』でアメリカ陸軍戦略大学のロバート・ファーリー客員教授がこの主張を批判している。「多様性に富んださまざまな飛行機のアイデアは直感にアピールするものがあるが、センチュリーシリーズの戦闘機に恋い焦がれるまえに、それらの時代におこった問題や欠点に洞察力のある目を向けるべきだ」と、ファーリー氏は書いている。

デジタル技術や3Dプリンターの発達で、保守部品においても低コストの少量生産が注目されているのは事実である。しかし、時代が進むにつれ、戦闘機の開発コストは極めて高額になっていく傾向にある。また、過去の戦闘機開発でも、違う用途の戦闘機に共通パーツを多用するようなアプローチがあったが、あまりうまくいっていない。派生型の戦闘機の間で共通点を多くすれば、それぞれの用途に適応しきれない中途半端な戦闘機ができあがってしまう。逆にそれぞれの特殊化に重点をおけば、最初に想定したよりも共通点が少なくなって開発コストが激増する。

ほんとうのところ、ローパー氏の案は、どれくらい現実的で、どれくらい米次世代機計画に影響するだろうか?今後、要注目といえるだろう。

■筆者プロフィール:洲良はるき
大阪在住のアマチュア軍事研究家。ブログやツイッターで英語・中国語の軍事関係の報道や論文・レポートなどの紹介と解説をしている。

※掲載している内容はコラムニスト個人の見解であり、弊社の立場や意見を代表するものではありません。
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