<コラム>スモールディールという単語がトランプの口から出た

配信日時:2019年4月16日(火) 21時0分
<コラム>スモールディールという単語がトランプの口から出た
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2月27、28日のハノイ会談決裂のあとすぐに、北のチェ・ソンヒ外交部次官が「最高指導部の決意」の発表が近々あるはずだと予告していたものが行なわれた模様だ。資料写真。
2月27、28日のハノイ会談決裂のあとすぐに、北のチェ・ソンヒ外交部次官が「最高指導部の決意」の発表が近々あるはずだと予告していたものが行なわれた模様だ。4月12日の北の最高人民会議にて行なわれた金正恩委員長の施政演説がそれ。北の代表的報道機関である朝鮮中央通信が4月13日に明らかにした。

過去、金日成主席時代には最高人民会議で施政演説をしてきたが、金正日国防委員長執権以後、北朝鮮の最高指導者が最高人民会議で演説をしたのは今回が初めて。これは、いまや金正恩委員長が名実共に北の指導者として君臨したことを証明する出来事でもある。金委員長から金正恩主席という呼び名に変わるのも、時間の問題かもしれない。

報道によると、金委員長は「米国が正しい姿勢を持って我々と共有することができる方法を発見したという条件において第三次米朝首脳会談をしようとするならその用意はある」と明らかにした。ちょっと長ったらしいが、簡単にいえば米が北の意見を入れてくれるなら第三次会談をやってあげようという態度であろう。

しかし「制裁の解除に焦りながら米国との首脳会談にこだわる必要はないと考える」とし「今年末までに忍耐を持って米国の勇断を待とうと思うが、前回のように良い機会を再び得るのは困難」とし、米国が要求するいわゆる「一括妥結式ビッグディール」を受け入れることができないという立場を再度明らかにした格好だ。

金委員長はさらに、米朝ハノイサミット決裂と関連し、「我々が戦略的な決断と勇断をもって臨んだハノイ会談であったけれど、あの一歩一歩が果たして正しかったのかという強い疑問をかもし出した」とし、「米国は本当に米朝関係を改善しようとする考えがあるのかと警戒心を持つようにしたきっかけを作った」と評価した。

金委員長はさらに、「我々はもちろん対話と交渉を通じた問題解決を重視するが、一方的に自分の要求だけを主張するアメリカ式の話し方は体質的に合わず興味もない」とし、「我々はハノイ首脳会談のような会談が再現されるならば、そんなことには歓迎する気もないし意欲もない」と重ねて明らかにした。

金委員長はまた、北朝鮮の弾道ミサイル迎撃を想定した試験と米韓軍事訓練再開の動きなどが露骨化しているとし、「我々はこのような流れを非常に不快に思う」とし、「米国の対北朝鮮敵視政策が露骨になるほど、それに応える我々の行動もこのようになっている」と警告した。ロケット実験施設の再準備などが報道された背景には、やはりこうした北の米に対するメッセージがあったのである。

その一方で金委員長は、ドナルド・トランプ米国大統領と関連し「私とトランプ大統領との間の個人的な関係は、二国間の関係のように敵対的でない。我々はまだ良好な関係を維持している」とし、「いつだってお互いの安否を尋ねる手紙を出したりもらったりすることができる」とした。

金委員長はこの日の施政演説で、韓国側に向けたメッセージも出した。彼は「南朝鮮当局と手を握って南北関係を持続的かつ強固な和解協力関係に転換させ、全同胞が一様に願いどおりに平和共同繁栄できる新しい民族史を願うことは私の不動の決意」としながらも、「(韓国側が)米国依存のポリシーに終止符を打ち、すべてのことを南北関係の改善に注力しなければならない」と強調した。

お節介の「調停役」「まとめ役」のふりをするのではなく、民族の一員としてまともな精神を持ち、堂々と自分の考えを言うなかで、民族の利益を擁護する当事者にならなければならない」とし、「言葉だけではなく実践的な行動でその心を示して勇断を下さなければならない」と述べた。今後のムン・ジェイン政府の「仲裁」の役割が多少困難になることを予告した格好となった。

内部的には自力更生をもとにした経済発展路線を継続していく立場を明らかにしている。これは米国との長期戦を念頭においての発言と思われる。

そんな中、文大統領がアメリカに行きトランプと会った。夫婦同伴の会談は「2分」で終わったという報道もあるけれど、時間はそれほど問題ではないだろう。トランプがはじめて「スモールディール」つまり段階的な制裁解除について一言の言及があったことが重要だ。

トランプの口から「スモールディール」という単語が出るのはこれがはじめてだ。ボルトンとポンペイオの二人が反対しているだけに、スモールディールが米のメインのフレームになるかどうかはわからない。しかしトランプの頭の中には「スモールディール」という観念がやっぱりあったんだということが知れただけでも、この発言は重要といえる。

北も一時、「もう一つの新しい道」の模索に入るという警告性の報道があったものの、「新しい道」に関する言及は今回の金委員長の施政演説にはなかった。もう一つの新しい道とは、核を作りロケットをぶっ飛ばすということ。世界が憂慮していた発言であったけれど、北もそこまでぶっちゃけてはいなかったようだ。

これからの流れとしては、韓国から北のほうに特使などを送ったりして南北会談が開かれることになるだろうし、米は米で、その内部で「スモールディール」へのフレーム作りが始動することになるのか。米がスモールディール路線へと転換することになるのかが、最大の関心事だ。(筆者としては)

今年2019年末まで待つと金委員長は釘を刺した。今年もまた年末まで北、米、韓およびそれを取り囲む日、中、ロシアの動きに目の離せない年となりそうだ。

■筆者プロフィール:木口 政樹
イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。三星(サムスン)人力開発院日本語科教授を経て白石大学校教授(2002年〜現在)。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。
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