まるで「目覚まし時計」のような生活 「996」勤務体制に苦しむ若者たち

人民網日本語版    2019年4月3日(水) 10時40分

拡大

プログラマー業界で最近、ある大事件が発生した。ソースコードの管理・共有プラットフォームとして有名な「GitHub」上で、インターネット関連企業の「996」勤務体制を排斥する目的で、「996.ICU」という名前のプロジェクトが立ち上がったのだ。

プログラマー業界で最近、ある大事件が発生した。ソースコードの管理・共有プラットフォームとして有名な「GitHub」上で、インターネット関連企業の「996」勤務体制を排斥する目的で、「996.ICU」という名前のプロジェクトが立ち上がったのだ。このプロジェクトに、多くのプログラマーから大きな反響があった。「996」とは、午前9時から午後9時まで週に6日間働く勤務形態を指し、「996.ICU」は、「996で働くと、病気になってICU(集中治療室)に行く羽目になる」という意味だ。中国青年報が伝えた。

インターネット関連企業では、「996」は特に珍しいことではない。「出勤するときには、日はまだ出ておらず、退勤時にはすでに日が落ちている」というライフスタイルは、彼らの日常では当たり前のことだ。

法律では、996勤務体制の合法性は極めて疑わしい。社員の通常の勤務時間に残業を盛り込むことが当たり前になり、さらにはこのような体制が言葉巧みに肯定されて、文化的・道徳的な色合いが加えられている。例えば、このような勤務体制を積極的に受け入れる社員が、仕事に前向きで開拓精神に溢れ、夢や希望を持っていると評価される一方で、積極的に受け入れない社員には、楽をすることばかり考え、その場しのぎの仕事しかしないと、非難の目を向けられる。このような状況のもと、個人がこのような体制に「NO」と言う事は、ほぼ不可能になっているのが現状だ。

「就活は一方的なものではなく双方向的なものであるから、996勤務体制を受け入れられないのならば、他業界に転職すれば済むことだ」という意見もある。しかし、このような意見は、従業員の権利保護の正当性について目を背けているだけではなく、現在の996勤務体制がすでにインターネット関連で起業する企業特有の現象ではなく、さまざまな業界にまで蔓延しているという事実も軽視している。

今回のプログラマーが集団で反旗を翻したことに対し、一体どのような反応が得られるのかは、現時点ではまだ何とも言えない。ただいずれにせよ、今回の現象は、労働監察部門に一種の啓示を与えたと言ってもよいだろう。労働者の権益保護をめぐるこれまでの議論のほとんどは、出稼ぎ労働者などの弱者層を対象としたものだったが、現実には、インターネット関連企業で働く「高大上(ハイレベル)」といわれるプログラマーたちも、労働権益保護の危機に直面している可能性が高いということを証明している。

さらに、996勤務体制に対する関心から、現在の中国の若者が直面する社会的プレッシャーについて考えを深めることもできる。最近、1人の若者が自転車で道を逆走し、それを制止されるや突然スマホを地面にたたきつけてブチ切れ、「あまりにもプレッシャーがありすぎる。毎晩11時か12時まで残業続きだ」と大声で泣いて訴えたというニュースがSNS上で広く転送された。これは極端な例かもしれないが、こうした大量の事件が集まれば、それが現象となる。

中国社会科学院の調査によると、2017年における中国人の1日あたりの平均余暇時間は2.27時間だった。これに対し、米国やドイツの国民の平均余暇時間は1日約5時間となっており、中国人の2倍以上となっている。また、ある統計データによると、中国におけるうつ病の発症率は6.1%で、しかもこの割合は、ここ数年にわたって毎年上昇傾向にある。

これらの現象には、複数の原因が重なり合っている。しかし、996勤務体制や、高い不動産価格に低い出生率といった社会的現実と結びつけると、若者たちが相当なプレッシャーに直面していることは容易に想像できる。その昔、中国は韓国や日本を若者に対するプレッシャーがかなり大きな国であると見なしていた。しかし中国社会も、若者にプレッシャーが「大挙して押し寄せる」時代に突入したことを現実が証明している。「どの世代であれ、青春とは容易ではない」ことは確かだが、現実から見るにせよ、他の国の先例を見るにせよ、若者たちにのしかかるプレッシャーが大きすぎることから生じる社会全体へのマイナス影響は、決して軽視してはならない。若者たちは奮闘しなければならないが、社会に「決まった時間に鳴る目覚まし時計」のような若者がますます増える状況は、喜ばしいこととは決して言えない。

当然のことながら、若者のプレッシャーを軽減するためには、単に彼らの労働時間を減らせばよい、ということではない。また、ある特定の業界や企業だけの責任でもない。社会システムの方面から若者に対するプレッシャーをどのように減らすかについては、時にはマクロ的な視野に立って正面から直視する必要がある。996勤務体制が反発に遭ったことは、単なる警鐘のひとつに過ぎない。(編集KM)

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携