<コラム>国防と経済で揺れるイスラエルの対中政策

配信日時:2019年4月1日(月) 23時40分
<コラム>国防と経済で揺れるイスラエルの対中政策
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イスラエルの中国に対する政策が安定しない。イスラエルのネタニヤフ首相は経済振興に熱心で、貿易に厳しい基準をもうけることで中国との取り引きが縮小し、経済的な打撃を受けることを恐れている。
イスラエルの中国に対する政策が安定しない。イスラエルのネタニヤフ首相は経済振興に熱心で、貿易に厳しい基準をもうけることで中国との取り引きが縮小し、経済的な打撃を受けることを恐れている。しかし、イスラエルにとって中国は、国家の安全保障とはほとんど関係のない遠い東の国ではない。中国とイランとの軍事関連の協力関係が密接なのは無視できない。言うまでもないが、イスラエルにとってイランは不倶戴天の敵である。

近年、中国政府は中東への投資を増やしてきた。その中には当然のようにイスラエルも含まれている。英字メディア・フォーリンポリシーによると、1992年から2017年の間に、中国とイスラエルの2国間の貿易額は、5千万ドルから131億ドルと、大きく増大している。イスラエルにとって中国は欧州連合(EU)とアメリカに次いで、3番目に大きな貿易相手国である。

中国とイスラエルの商業的なつながりは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相のもとで促進されている。2017年3月には、ネタニヤフ首相が訪中し、北京で習近平国家主席と会見した。

しかし、イスラエルとの繋がりが強くなるのに乗じるように、中国は積極的にイスラエルの軍事技術分野にアプローチしている。中国が標的にしているのは、イスラエルの主要な航空機会社や軍事関連企業だ。これらのイスラエル企業は関連子会社がアメリカ国内にあり、ミサイルや戦闘機用電子部品などのイスラエルでもっとも進んだ軍事関連製品の製造に貢献している。

イスラエルの対情報活動機関の調査によると、中国のハッカーはアメリカの防衛産業と深い関わりのあるイスラエルの企業に特に興味を持っていることがわかったという。イスラエルの企業が合弁事業で共同研究をおこなっている企業には、アメリカのレイセオン社、ボーイング社、ロッキード・マーティン社がある。

レイセオン社はミサイルやレーダーで有名な会社だ。イージス艦の対空ミサイルもレイセオン社のものだ。ロッキード・マーティン社は、日本も購入を決めているF-35戦闘機の中心製造メーカーである。フォーリンポリシーによると、中国はイスラエルをアメリカの軍事機密にアクセスするためのバックドアとみなしているという。

イスラエルはこれまで中国に多くの兵器や軍事関連技術を売却してきた。度重なるアメリカからの抗議をうけて、ようやく2005年にイスラエルは中国へ兵器を販売するのをやめることに同意している。しかし、たとえば人工知能やサイバーセキュリティのような、民生だけでなく軍事関連にも使えるグレイゾーンの技術についての中国への譲渡はさらに拡大しているという。

また、中国がイスラエルで強い興味を示しているのは、デュアルユーズの技術分野もあるという。デュアルユーズ技術というのは、民生用と軍事用のどちらにも利用できる技術のことだ。いくらかのデュアルユーズ技術の輸出にはイスラエル政府の特別な認可が必要になるが、そこには数多くの抜け穴があるようだ。ネタニヤフ首相は、中国との商業的つながりを促進することに熱心で、中国との取引に厳格な基準を設ける政府機関の設立計画に消極的であるという。

一方で中国は、イスラエルの不倶戴天の敵であるイランとのつながりをも強めている。1979年にイラン革命がおこって以来、イランはイスラエルを排除することを主張してきた。イランの指導層から見れば、イスラエルという国はイスラム教徒たちの土地を理不尽に占拠している非道な国家にすぎない。逆にイスラエルの視点からすれば、イランは国家存亡にかかわる眼前の大きな脅威である。そのためイスラエルは、イランが核兵器を持つことをなんとしても阻止しようとしてきた。

しかし、現在のイランは民生用にしろ原子力技術を持っている。このイランの原子力技術を手厚く支援してきたのが、ほかでもない中国だ。中国政府はイランの原子力技術者の訓練プログラムや、ウランの調査・採掘などを助けてきた。

中国によるイランへの軍事関連の取引は多岐に渡る。これまで弾道ミサイルの部品や対艦巡航ミサイル、新型の機雷、ミサイル艇などが中国からイランへ引き渡されている。2017年12月には北京で、中国の常万全国防部長(国防大臣)が、イラン軍のガディル・ネザミプール副参謀総長と会見している。

アメリカのレイセオン社やロッキード社などの最先端技術がイスラエルを介して中国に渡り、さらにイランへともたらされるようなことがあれば、イスラエルにとってはまがまがしい悪夢となるだろう。

■筆者プロフィール:洲良はるき
大阪在住のアマチュア軍事研究家。ブログやツイッターで英語・中国語の軍事関係の報道や論文・レポートなどの紹介と解説をしている。
※掲載している内容はコラムニスト個人の見解であり、弊社の立場や意見を代表するものではありません。
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