「日本が敵だったのに?」=戦争で父親を亡くした祖父の意外な言葉―中国人学生

日本僑報社    2019年3月29日(金) 23時0分

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過去の歴史から日本に対して複雑な感情を抱く中国人が少なくない中、山東政法学院の張伝宝さんの祖父は、張さんの「中日友好の伝導者になりたい」という夢を応援してくれた。そこにはどのような考えがあったのか。資料写真。

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過去の歴史から日本に対して複雑な感情を抱く中国人が少なくない中、山東政法学院の張伝宝さんの祖父は、張さんの「中日友好の伝導者になりたい」という夢を応援してくれた。そこにはどのような考えがあったのか。張さんは以下のように綴っている。

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大学入試に合格した時、私が一番学びたいことは日本語だった。だが、両親は私の考えが軽率だと思ったようだ。頑として反対した。こうして私は、合格の喜びに浸る間もなく、急転直下奈落の底に突き落とされた。

それから3日後。両親と私は、祖父母宅を訪ねることになった。私は祖父に問われるままに、「僕の夢は中日友好の伝導者になることなんだ」と夢を語った。それを聞くや否や、祖父は「若者の未来は、若者自らが決定するべきものだ。本人の考えを尊重してやろう」と両親を説得してくれた。祖父は第2次世界大戦の生き残りだが、意外なことに私を応援してくれた。当時の私は藁にもすがる思いだった。そのときの感動は生涯忘れることはないだろう。

ところが、1年後。私の気持ちは大きく変化し、動揺していた。大学入学後最初の夏休み、ソファーでのんびりとくつろいでいた祖父に、私は思いきって話しかけた。

「日本語を勉強し、中日友好の懸け橋になることについてだけど、もうやめたい」「ふうん、いきなりまた、どうして」「僕の日本語のレベルの学生って、全国にいっぱいいて、だから僕はごく普通の日本語専攻の学生に過ぎなくて、『伝道者』なんて夢はもう実現不可能だから」「はっは、普通でいいのさ。偉くなって欲しいなんて夢にも思ってないから」と祖父は私を慰めた。

それでも私は、「いや、でも、もうできない。もう無理」と繰り返し、いつまでも小さな子どものように駄々をこねた。しまいに、祖父の顔から笑いが消えた。真剣な顔で祖父は話し始めた。

「1943年、軍人だった私の父は抗日戦争で死んだ。父がいない私は、生まれたその日から中日の数年にわたる戦争とその混乱の中を、切ない思いで暮らさなくてはならなかった。その時、一番自分がやりたかったこと、大人に一番期待したことは日本人に復讐することではなく、戦争をやめることだったんだよ」

「どうして。当時、日本が敵だったのに?」

「お前も若いな。戦争こそが一番怖いものだ。日本人は元々怖いものではない。本当に怖いものは戦争にほかならない。いつまでもお腹が空き、毎日死んだ人を見た。耳に入るのは銃、飛行機の地獄のような音だった。いまだに思い出す当時の光景はまるで地獄のようだ。その時、一番役立ち、中日友好のために努力した人たちはほかならぬ日本語専攻の学生たちだったんだ。そういう大変な時代に流暢に交流をしている姿は天使のようだった」

「本当?きっと偉い人たちだったんだね。でも、今は戦争がないから偉くなれるチャンスもないよ」

「いいや、同じように偉い。ただ戦争中のように目立った活躍の機会がないだけだ。中日交流を支える唯一無二の人材はお前のような日本語専攻の中国人と中国語専攻の日本人学生たちだ。今でも一番役立つ学科だよ。自分たちの気持ちを相手の言語で話し、自分と祖国の本当の姿を伝えられる力は大切だ。友好交流はもちろん、戦争を阻止する原動力なんだよ」

祖父は私に語り続けた。あの時の祖父の熱い思いがいまだに心に残っている。日本語学習から逃げ出そうとした日本語専攻学生の私にとって、新たな出発の原点となった。

今や、祖父のように恒久の平和を望む中国人は多い。私のように日本語を専攻するごく普通の学生だけでなく、現代を生きる若者の多くが、友好交流の進展を望んでいる。私は今日も「中日友好の伝道者として、必ず役立ちたい」という夢を実現するため、普通の大学生の一人として、懸命に努力している。両国の人たちの本当の気持ちを双方に正しく伝え、友好交流に寄与したいからだ。(編集/北田

※本文は、第十四回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「中国の若者が見つけた日本の新しい魅力」(段躍中編、日本僑報社、2018年)より、張伝宝さん(山東政法学院)の作品「祖父の望みを背負って」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。

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