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人は一生の3分の1は眠っている。しかし現代のリズムの速い生活の中では、多くの若者にとってしっかり眠ることは一種のぜいたく品となっているようだ。
人は一生の3分の1は眠っている。しかし現代のリズムの速い生活の中では、多くの若者にとってしっかり眠ることは一種のぜいたく品となっているようだ。中国新聞網が伝えた。
▽3億人の睡眠障害の大軍 1980年代生まれ・1990年代生まれが中心
世界保健機関(WHO)がまとめた統計によると、世界の睡眠障害の有症率は27%に達する。中国睡眠研究会が2016年に発表した睡眠に関する調査の結果によると、中国の成人の不眠有症率は38.2%にも達し、3億人以上が睡眠障害を抱えていることになり、さらにこの数字は年々上昇している。また睡眠障害を発症する層に若年化の傾向がみられることが懸念されるという。
18年に中国医師協会睡眠医学専門委員会が発表した世界の睡眠の状況と理解に関する最新の調査データによると、90後(1990年代生まれ)の60%以上が「睡眠が足りない」と答え、「ぐっすり眠っている」は5.1%しかいなかった。
同年に発表された「2018年中国インターネットユーザー睡眠白書」によれば、北京、上海、広州、深センの一線都市はプレッシャーが大きく、北京の若者の睡眠時間が最も短く、平均7時間に達しなかった。
仕事にかかるプレッシャーの大きさが眠りの質を低下させる一番の原因で、ネットユーザーの70%が「影響がある」と答えた。次は生活のプレッシャー、環境要因、個人の習慣などだ。また「睡眠時間を削ってでも大事な仕事を終わらせたい」とした人は58%に上った。
80後(1980年代生まれ)と90後は睡眠障害の中心になりつつある一方で、青少年や児童の睡眠時間も理想的とはいえない。
同研究会がさきに発表した「2019年中国青少年・児童睡眠指数白書」では、満6〜17歳の青少年・児童で睡眠時間が8時間に満たない人は62.9%に上り、満13〜17歳では81.2%に達したという。
睡眠不足は中国社会のあらゆる年代にみられる問題だと考えられる。
▽睡眠障害の中にビジネスチャンス 「睡眠経済」が静かに進行中
睡眠障害を抱えたたくさんの人々が眠れずに何度も寝返りを打っているその時、一部の企業は睡眠障害の中にビジネスチャンスを見いだした。
ECプラットフォームで「睡眠サポート」と検索すると、すぐに「睡眠をサポートする神グッズ」が大量に画面に現れる。
睡眠ホルモンのメラトニン、安眠枕、心地よい眠りに誘うアロマといった従来の商品に加え、「画期的な技術」を売り文句にした安眠ブレスレット、睡眠をサポートするパッチやスプレーや音楽などさまざまだ。価格もさまざまで、数十元(1元は約16.5円)ほどのものから1万元を超えるものまでいろいろある。
ECプラットフォームが販売する安眠ブレスについて、企業に問い合わせると次のように説明してくれた。「このブレスはハイテクを導入しており、15日間ほど身につけると睡眠サポート効果が得られ、副作用による身体への影響はない」。米国製をうたい文句にするこの商品の価格は2千元あまり。
オフライン市場をみると、一部の大型スーパーや商店では「睡眠サポート」を掲げる商品がたくさん売られており、価格は決して安くない。
商店に置かれた首を支え、眠りをサポートする効果があるという枕は1700元以上する。業者によると、こうした商品がよく売れており、眠りをサポートする商品なら100元以上でも、さらには1千元以上でも出していいという消費者はたくさんいるという。
また睡眠に関連したアプリケーションも次々登場している。ユーザーの睡眠状態を記録して、睡眠レポートを作成するアプリもあれば、眠りを誘う周波数を出して寝付きをよくするアプリもある。起動回数がのべ1千万回を超えたアプリも少なくない。
▽睡眠の問題を解決するにはどうすれば?
医学的にみて、睡眠障害には「寝付けない」、「起きられない」、「よく眠れない」の3大カテゴリーの90種類を超える症状があり、健康レベル、生産活動の安全性、生活の質に深刻な影響を及ぼしている。
15年に全米睡眠財団(NSF)は年代別の睡眠のアドバイスを打ち出した。
それによると、一日に必要な睡眠時間は、新生児が14〜17時間、3〜5歳の児童が10〜13時間、6〜13歳の学童が9〜11時間、14〜17歳の青少年が8〜10時間、成人は7〜9時間、65歳以上の高齢者が7〜8時間という。
中国の多くの若者にとって、この基準を満たすのは非常に難しいことだといえる。
中国科学技術協会の睡眠呼吸サイエンスコミュニケーションの首席専門家の郭兮恒さんは、「睡眠障害の最も大きな誘因は精神状態や心理状態と関係がある。質の高い睡眠を得たいなら、心を整え、リラックスし、仕事と生活時間の正しいリズムを身につけなければならない」と話す。
郭さんは続けて、「電子製品の普及や夜の活動が豊富になったことから、若者の生活リズムが乱れ、その睡眠に大きな影響を及ぼした。これから睡眠障害の若年化の傾向はますます深刻化する可能性がある。寝床に就く1時間前からはできるだけ電子製品に触らないことだ。携帯電話をいじるのをやめて音楽を聴いたり本を読んだりするといい」とアドバイスする。(編集KS)