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買うために徹夜で並び、発売されると「喧嘩騒ぎ」まで起こり、「1秒で売り切れ」て、さらに数千元(1元は約16.7円)のプレミアがついた。スターバックスが発売した「猫の手カップ」がここ数日、インターネットで最も話題を集めたことは間違いない。
買うために徹夜で並び、発売されると「喧嘩騒ぎ」まで起こり、「1秒で売り切れ」て、さらに数千元(1元は約16.7円)のプレミアがついた。スターバックスが発売した「猫の手カップ」がここ数日、インターネットで最も話題を集めたことは間違いない。その後、スタバは販売計画を修正し、3日間、各日1千個ずつ販売する計画だったのを、一日ですべて売り切ることにした。しかし、「発売されるとすぐ売り切れた」といい、多くのネットユーザーが、「このカップを手に入れるのは、春運(春節<旧正月>期間の帰省・Uターンラッシュに伴う特別輸送体制)の鉄道チケット争奪戦よりも大変だ」と嘆く。実店舗で全然手に入らないだけでなく、ECプラットフォームでもわずか2日間で4千個が売り切れた。この異常なほどの人気は、コーヒー市場の争奪戦に巻き込まれているスタバにとって、格好の話題作りになった。「北京日報」が伝えた。
▽「猫の手」で争奪戦勃発
「猫がニャーと鳴くほどの短時間で、あっという間に売り切れていた」。張さんは3千個が発売される日の午後、携帯電話の画面をずっと注視して、初めてこの「秒単位の争い」に参戦した。彼女も発売した瞬間に売り切れる事態は想定していなかったという。
このカップは外側に桜の花をあしらわれ、二重になった内側は猫の手の形をしており、色のついた飲み物を注ぐとシルエットが浮かび出て、まるで子猫が手を振って呼んでいるようにみえる。インターネットで突然人気に火がつき、ネットユーザーたちが熱狂的に追いかけるようになった。
張さんが初めてこのカップを見たのは、SNSの小紅書のアプリでだった。「コロンとした形を見た瞬間、自分の中の乙女心がわしづかみにされた」という。スタバでの発売前からショート動画コミュニティ・ティックトックや小紅書などで話題になり、ネットユーザーたちの購買意欲をそそっていた。公式販売価格は199元だが、非公式なプレミア価格はすでに1千元ぐらいになっていた。このカップを手に入れようと、深夜にスタバ店舗前で待ち構える人もおり、2月26日に発売になると、なんとしても手に入れたい人々が店内で喧嘩騒ぎまで起こした。
これほどの事態はスタバ側も予想していなかった。スタバ中国法人は26日に微博(ウェイボー)を通じて、「猫の手カップは急ピッチで追加生産しており、近く天猫(Tmall)のスタバ旗艦店に並びます」と発表した。また2月28日から3月3日まで、毎日午後3時からネットで各日1千個販売するとしていた計画を変更し、1日午後3時から残り3千個を一気に販売することにした。
そして1日。まるで「ダブル11」(11月11日のネット通販イベント)の商品争奪戦のように、開始早々に大量の顧客フローが押し寄せ、多くの人が無駄足を踏むことになった。天猫が提供したデータによれば、2月28日午後3時に売り出した1千個はわずか0.07秒で売り切れ、検索ワードで「猫の手カップ」が急上昇して検索件数が8800%増加し、お気に入りに加えた人は30万人を超えた。
スタバは販売数をわざと少なくして購買意欲をあおっているのではないかと疑問の声を上げる人も少なくないが、スタバはこうした見方を否定し、「手に入らない事態は、当社にとっても本当に想定外だった」としている。しかし猫の手カップの販売計画はこれまでの新製品の時とは異なる。
▽サイドビジネスでスタバの若いファンを増やす
実際、春の桜のシーズンになると、スタバには桜モチーフのカップが登場し、数量限定のため、毎年ちょっとした争奪戦が繰り広げられていた。だが今回のような異常ともいえる人気は初めてのことだ。スタバは今年、31種類の「桜カップ」を販売し、猫の手カップと同じ棚に並んでいる。子犬が桜を眺めているマグカップ、桜とペットのペアカップ、桜の木をモチーフにしたマグカップなどいろいろなカップがあるのに、なぜ猫の手カップだけ人気が沸騰し、ネットで話題を集めるようになったのだろうか。
張さんは多くの女性の気持ちを代弁して、「自分でも何匹か猫を飼っているので、猫が出てきたら夢中になってしまう。このカップは大勢の猫好きをたちまち虜にした。ピンク色も乙女心をくすぐる。より重要なことは、消費能力が上がったのでさらに思い切りよく買い物できるようになったことだ。以前なら数百元も1千元以上も払ってカップを買おうとする人はいなかった」と話す。
40歳になる王さんはスタバのカップをコレクションしているが、そんな彼女も今回の猫の手騒動には加わらなかった。「このカップは容量が少なすぎて、コーヒーはもちろん飲めないし、数滴のシロップを飲む時くらいしか使えない。観察してみると、猫の手カップに注目するのは若い人がほとんどで、実用性はないけれど、若い女性たちは夢中だ」という。
中国の食品産業アナリストの朱丹蓬さんは、「猫の手カップの人気のわけは、スタバのプチブル的生活という位置づけや手の届くぜいたく品というブランドイメージと切り離せない。ここ数年、次世代の消費者が登場し、猫はこうしたプチブルを象徴するペットとなった。スタバは消費高度化の新トレンドに合わせ、プチブルの色彩を帯びた製品を打ち出し、正確なマーケティングに成功した」と分析している。
スタバは販売量を故意に減らしてはいないとするが、これまで低調だったスタバが今年初めてオンラインで大規模な人気イベントを打ち出したことから、中国市場における新しいタイプの競争を重視する姿勢がありありとうかがえる。中国ではコーヒー消費が急速に普及拡大し、新手のライバルも突如現れるようになった。カップ事業はスタバのサイドビジネスに過ぎないが、今回の猫の手カップのようなネットで話題を集められる商品によって、若い人がスタバを再認識するようになったことは間違いない。(編集KS)