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「配達員」という職業グループの実態は、一体どのようなものなのか?彼らは18 歳から35歳までの若者が圧倒的多数を占めている。関連報告によると、2018年、中国全土の宅配取扱量は500億件を突破した。
「配達員」という職業グループの実態は、一体どのようなものなのか?彼らは18 歳から35歳までの若者が圧倒的多数を占めている。関連報告によると、2018年、中国全土の宅配取扱量は500億件を突破した。膨大な数に上る新たな雇用グループがたちまちに誕生し、速達郵便のEMSや「順豊」、「三通一達」と呼ばれる宅配企業の「申通」、「圓通」、「中通」、「韻達」などに代表される宅配企業の最前線で活躍する配達員の数は300万人を上回る。また、オンラインフードデリバリープラットフォームの「美団」や「Eleme」などのO2O(オンライン・ツー・オフライン)やフードデリバリー業界も、100万人をこえる正社員とアルバイトの配達員を擁している。中国青年報が伝えた。
〇「配達員」の特徴は入れ替わりが激しく、勤続年数は短い
社会科学院調査研究チームは、今回の調査において、調査対象サンプル5279件を分析した。この結果、配達員は男性が多数を占め(88.9%)、年齢層では若者が主体(20-29歳49.3%、30-39歳40.8%、40歳以上7.4%)であることが判明した。農村戸籍者が多数を占め(77.9%)、その多くが都市に出て働く一時的な出稼ぎ青年たちだった。学歴別にみると、中卒以下が29.2%、高校・高等職業学校・中等専門学校卒が47%、大専卒(短大に相当)が15.7%、大学学部卒以上が5.3%と、低い傾向にあり、政治的にもその多くが政党に所属していない「群衆」(57.9%)で、中国共産主義青年団団員(21.9%)と共産党員(5.7%)の割合は低かった。
「配達員」が宅配業界に身を投じる以前、彼らの多くは建築作業員、飲食業従業員、セールスマン、ガードマン、運転手などの仕事に就いていた。南寧の調査によると、「宅配業界に入るハードルは低く、すぐに仕事を覚えられる」と認識している配達員は69.8%に達し、46.8%が、「配達員は、特に高学歴である必要がない割には高収入を得られる職業」と考えていた。
「配達員」の就労時間は、一般的に長く、1日の就労時間について、「10-12時間」の配達員が約50%を占め、「8-10時間」は30.6%、「12時間以上」も21.4%いた。「毎週、休みは1日だけ」と答えた人は48.9%、「決まった曜日に休みはとれない」とした人は44.5%だった。
「配達員」の業務のキツさは、どれくらいなのだろうか?1日に取り扱う荷物の数について、「50から100件」と答えた人は38.4%、「100から150件」は11.8%、「150件以上」は19.2%だった。中国最大の販促イベント「ダブル11」のピーク期には、取扱件数は激増する。聞き取り調査では、「忙しすぎて、休む間もなく駆け回っている」、「疲れ過ぎて誰とも話をしたくなくなる」といった感想が最も多かった。
報告は、顧客からのクレームといったトラブルが多く、保障も十分ではなく、職業としてのスキルアップが図れないといった問題から、多くの若者は宅配の仕事を長期的に続けようとは考えていないと指摘している。その勤続年数は、「1年未満」は39%、「1年以上2年未満」が31.2%、「2年以上3年未満」が12.1%、「5年以上6年未満」が5.9%、「7年以上」が11.9%と、宅配業においてはその勤続年数の短さが目立った特徴となっている。
武漢での調査によると、EMSや順豊の配達員の離職率はいずれも30%前後だった。また、現在仕事に就いている配達員のうち、学生がバイトとして働いているケースが18.6%に上っている。
〇東部の「配達員」の平均月収は5110元
多くの人が、「配達員の収入は高い」と思っているが、現状はそうとは限らない。調査報告によると、彼らの平均月収は、「3千元(1元は約16.5円)以下」が23.3%、「3千~4千元」が20.2%、「4千~5千元」が25.7%、「5千~6千元」が13.2%「6千元以上」が17.6%をそれぞれ占めた。配達員の平均月収を地域別でみると、東部は5110元、中部は4464元、西部は4247元だった。
2017年、全国都市部の民営企業従業員の平均月収は3813.4元だった一方で、配達員は4859元で、27.4%高かった。このデータを見る限り、表面的には、宅配業界の収入レベルは低くはないが、配達員の高収入は、非常にきつい業務や長時間残業による結果にすぎない。時間あたりの報酬で見ると、平均23.9元と、最低賃金基準(人力社会保障部が発表した32都市の最低賃金基準は、北京が1時間24元、その他の地方は1時間15元から20元となっている)とほとんど変わらない。
具体的な報酬算出方法によると、「配達員」の賃金は、「完全歩合制」が多数を占め(55.8%)、「月給制(11.5%)」、「基本給+業績給(14.9%)」、「基本給+歩合給(10.6%)」が続いた。物流宅配や直販スタイルの多くが、「固定給+業績給」という報酬パターンを採用している一方で、フードデリバリー、宅配クラウドソーシング、フランチャイズ形式の多くは、完全歩合制を採用している。
〇配達員の過半数が「人々から敬意を払われていないと感じる」
配達員の支出についてみると、彼らの日常生活では、「消費が多く、娯楽が少ない」という傾向を呈していた。2017年、全国住民1人あたり消費支出は1万8322元で、同年の配達員1人あたりの消費支出は2万3459元と、全国平均より28%も多かった。聞き取り調査では、「給料でほぼ生活できている」と答えた人は44.5%、「生活は少し苦しい」とした人は33.2%、「生活は大変苦しい」と答えた人は19.4%だった。
配達員はこうした状況のもと、特に、「疲れ果てて、仕事が終わるとただひたすら眠りたい」ほど仕事上のストレスにさらされており、レジャーや娯楽に時間やエネルギーを注ぐ配達員は極めて少ない。その娯楽も「ショート動画を見る(17.8%)」、「音楽を聴く(15.0%)」、「テレビドラマや映画を見る(14.2%)」、「ゲームで遊ぶ(10.3%)」などにとどまり、「何もしない」が半数以上を占めた。
仕事が非常にきつく、収入レベルはそれほど高くはないものの、仕事に対する配達員の満足度は「中レベル」だった。仕事に対する満足度を10段階でみると、配達員平均は6.62で、「8以上」と評価した人の割合は44.8%に上り、「4未満」は15.9%にとどまった。
宅配の仕事に就く多くの若者たちは、「宅配はストレスが高くてしかもきつい仕事」と認識している。しかし疲れることは疲れるが、その収入はまあまあのレベルと言え、特に、時間について比較的自由で、決まったエリア内で配送任務を全うすればそれで良い点は評価されている。その一方で「自分の仕事は人々から敬意を払われていない」と感じている人は56.3%、「職業としてあまり認められていない」と考える人が65.1%に、それぞれ達していた。(編集KM)