中国の若者に浸透のクレジット消費は「助け舟」?それとも「アヘン」?―中国メディア

人民網日本語版    2019年2月28日(木) 21時20分

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80後(1980年代生まれ)、90後(90年代生まれ)が消費市場の「主力」となり、「今月購入し、次月に返済」という消費スタイルもすでに目新しいことではなくなってきている。

80後(1980年代生まれ)、90後(90年代生まれ)が消費市場の「主力」となり、「今月購入し、次月に返済」という消費スタイルもすでに目新しいことではなくなってきている。清華大学中国経済思想・実践研究院がこのほど発表した「2018中国消費クレジット市場研究」によると、2018年10月の時点で、中国の消費金融は84兆4500億元(約1351兆2000億円)規模に達している。中国青年報が伝えた。

「過剰消費」に陥り、返済期限が1年以内のクレジット商品を利用しているのは主に若者となっており、日常的な消耗品や衣類、電子機器の購入や家賃の支払いに利用している。

長年、消費文化を研究している蘭州大学新聞・伝播学院の劉暁程(リウ・シャオチョン)准教授は、「西洋の消費文化や中国国内の産業構造、経済発展など多くの要素が重なり、若者の過剰消費や個人の楽しみや体験を重視するといった消費文化の新しい特徴を見ることができる。彼らは後先を考えず、今のことしか考えていない」と指摘する。

■お金を使うというよりゲーム感覚に

支付宝(アリペイ)の2018年の年間利用明細を見て、ゲーム業界で働く趙●(ジャオ・シン、●は品の口が金)さんは心底驚いた。なぜならこの1年間で、支付宝を通じて8万元(約128万円)も消費していたからだ。この金額は趙さんと同年齢の人の96%を上回る数字だった。そのうち一番多かったのは食費で、デリバリーを218回も利用していたこともあり、2万元(約32万円)以上に達していた。このほかに交通費、文化・教育・娯楽の順に合わせて3万元(約48万円)を使っていた。

趙さんは「アリペイが提供するクレジット業務・花唄の数字を見ていると、お金を使っているというより、ゲーム感覚。そのような『幻の富』が自身の消費欲を掻き立て、1000元(約1万6000円)多く使っても、1000元少なめに使っても、大した変わりはないと感じるようになってしまった。せいぜい期日通りに返済できない時に、生じる高額の利子がもったいないと感じるだけだ」と、自分の「衝動買い」の原因について分析している。

90後を見ると、趙さんと同じような道を歩んでいる人が1000万人以上もいる。支付宝が17年に発表した「若者の消費・生活報告」によると、90後の若者1億7000万人のうち、4500万人以上がクレジットサービス「花唄」に登録し、90後のユーザーの約4割が支払いの時に「花唄」を優先的に利用するように設定している。

大半の若者が「今月購入し、次月に返済」という消費スタイルに過度に依存しているだけでなく、「自分へのご褒美消費」や「利用明細上だけの貧困脱却」といったように、こうした現状を揶揄するネット用語まで生まれている。

そのうち、重要な位置を占めているのが大学生だ。調査会社・艾瑞諮詢(iResearch)が発表した「2018年大学生消費洞察報告」によると、大学生が自由に使える金額は1カ月当たり1405元(約2万2500円)で、うち、非生活必需品に593元(約9500円)使っていた。用途は交際や娯楽、菓子や飲み物、靴・帽子・衣類、スキンケア・コスメなどだ。また、「今月購入し、次月に返済」という消費意識が強く、大学生の50.7%がローンを利用したことがあった。

若者は、自身を着飾ったり、楽しみのために消費限度額をアップし続けている一方で、返済期限内のローン返済能力は低下し続けている。

支付宝と騰訊(テンセント)が発表している統計からこうした状況を垣間見ることができる。17年、支付宝が発表した「若者の消費・生活報告」によると、90後の99%が返済期限内に返済していた。しかし、今年1月、騰訊が発表した「18微信(Wechat)返済状況報告」によると、返済期限内に返済する習慣をキープしているユーザーはわずか61%だった。

■盛り上がる消費の陰で膨れる借金

過剰消費の「ニーズ」があり、それを「支える」金融プラットフォームもあり、さらに、それを宣伝するルートもたくさんある。このように表面的には現在の社会には強力な原動力を持つ消費市場があるように見え、「過剰消費」を通して、若者が発展のボーナスを得ているように見える。

しかし専門家らは、中国の生産型社会から、消費型社会へのモデル転換期における若者の「過剰消費」は、方向性が歪み、一定のリスクが存在し、社会も注意を払う必要があると指摘している。

華南理工大学の法学教師で弁護士でもある葉竹盛(イエ・ジュウション)氏は、「金融会社がインターネットプラットフォームを利用して広告を高い頻度で配信する行為は、若者を『クレジット消費』に溺れさせる『経済的アヘン』だ」と警鐘を鳴らしている。

一方、前出の劉准教授は、「クレジット消費も消費スタイルの一つに過ぎず、広告やPR、メディアなどの影響を受けていることだけが原因ではない。むしろ社会の物質や制度、観念のレベルこそ、密接な関係があると言える。消費の落とし穴が出現しているのはつまるところ、物質レベルにおいて適切な消費商品がなく、制度レベルにおいても、効果的な監督・管理が十分されておらず、個人においても、物欲が強い刺激を受ける社会において、盲目的に能力以上のことをしようとしており、さらには外部環境も『簡単に何でもできる』という間違った観念を植え付けようとしている。こうした間違った観念が総合的に影響を与えていると言える」との見方を示す。

そして、「若者というものは人生において不安定な段階にあり、一部の事業者が人が生来備えている『欲』を掘り起こし、心理学的ツールを使ってその『悪い部分』を掻き立て、消費欲を刺激することで、不合理で不健全な消費観念が形作られるよう人々を惑わしており、最終的に一部の若者をクレジット消費や過剰消費に陥らせてしまっている。そして、習慣的にクレジットで消費するようになり、個人の信頼を損なうだけでなく、家庭が崩壊したり、学業や成長にまで悪影響を及ぼす可能性がある」と強調する。

それらのリスクをいかに回避するかについて、劉准教授は、「社会は若者に、消費の高度化を実現できるもっと多くの機会を与え、教育や告知を通して、過剰消費のタイプやその限界、それらがもたらす悪い結果などについて、明確に伝えていかなければならない。また、生活必需品が満たされ、サービスが発展する中で、合理的に楽しむために、理性的でバランスの取れた見方を養えるようにサポートしなければならない」と指摘している。(提供/人民網日本語版・編集/KN)

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