ソフトバンクの「輸血力」に疑問符 上場初日に価格割れ

人民網日本語版    2018年12月21日(金) 18時20分

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日本のソフトバンクグループ(SBG)の子会社の電気通信事業大手ソフトバンクが19日、東京証券取引所に上場したが、日本の株式市場ではまれな「初日の公開価格割れ」に陥った。

日本のソフトバンクグループ(SBG)の子会社の電気通信事業大手ソフトバンクが19日、東京証券取引所に上場したが、日本の株式市場ではまれな「初日の公開価格割れ」に陥った。この総額235億ドル(1ドルは約111.2円)に達する新規株式公開(IPO)は、日本の株式市場の歴史の中で最高額のIPOであり、また世界でも歴代2位のIPOだった。「中国証券報」が伝えた。

SBGは公開市場で調達した資金を、人工知能(AI)を含む科学技術投資に充て、新興科学技術などの成長分野の発展を後押ししようとしていた。だがアナリストは、「ソフトバンクの電気通信事業の成長の見通しは楽観できない。今後は科学技術投資のための持続的な輸血力という点で力不足に陥る可能性がある」と指摘する。

▽ソフトバンクが「公開価格割れ」に

ソフトバンクがIPOで調達した資金は2兆6500億円に上り、日本のIPOの最高記録を更新したとともに、2014年の阿里巴巴(アリババ)上場時の250億ドルに次ぐ世界2位となり、3位となった12年のフェイスブック上場時の160億ドルを大きく引き離した。こうした重量級の上場は広く注目を集めていただけに、初日の動きには失望が広がった。19日の値動きをみると、取引開始後すぐに2%下落し、最大で10%下落し、終値は1282円で、募集価格の1500円から約15%下落し、大幅な「公開価格割れ」となった。

メディアによると、これほど不調な上場初日の動きは日本の株式市場では珍しい。今年にIPOを行った企業82社のうち、初日につまずき、公開価格を割り込んだのはソフトバンクを含めて7社しかない。またここ数年の大型IPOのうち、初日に公開価格を割り込んだのは14年の日本ディスプレイだけだった。

アナリストの説明によると、ソフトバンクの上場は「タイミングがあまりよくなかった」。最近は世界的に株式市場が変動して下降トレンドにあるという要因だけでなく、同社は上場前にも「多難な冬」を経験していた。

日本の電気通信産業はこのところ政府の圧力を受けて相次ぎ通信料金を引き下げている。ソフトバンクはNTTドコモ、KDDIに次ぐ日本3位の電信企業で、ドコモは40%もの値下げを発表し、KDDIも具体的な値下げ措置を検討中といい、ソフトバンクは巨大な値下げ圧力に直面する。市場では通信料金の大幅な値下げが通信キャリアの業績に打撃となることへ懸念が広がり、日本の電信銘柄の株価はこのところ軒並み下落した。さらに日本のEC大手の楽天がこのほど携帯電話事業者の認定を受け、来年秋にもサービスを開始することになり、市場では産業が飽和状態になることへの懸念が増大している。

ソフトバンクは上場直前の重要な時期に通信障害問題を起こした。12月6日、ネットワーク通信に障害が起こって4時間以上も通話・通信が困難になり、日本全国に広がる大規模な通信障害に発展した。ソフトバンクはその後、障害の原因はエリクソン社製交換機に搭載されたソフトウェアにあったと説明したが、アナリストは、「この件が潜在的投資家の懸念を引き起こした」と指摘する。

▽親会社への「輸血力」に疑問符

電信事業からスタートしたSBGは今、「電気通信企業」の看板を急いで下ろそうとしている。SBGの創業者・孫正義氏はここ数年、ますます革新的技術市場を狙うようになり、ソフトバンクという企業を「科学技術帝国」に発展させることを目指している。孫氏の説明によれば、「今回、電気通信子会社を切り離して単独で上場したのは、科学技術投資大手への転換に向けた動きの一部で、ソフトバンクという企業が『日本の電気通信企業』から『世界のハイテク投資企業』に転換するようバックアップするためだ」という。

また孫氏は、「今回の上場により、電気通信子会社にはより大きな自立的経営権が与えられると同時に、自分も『解放されて』他の事業や投資に精力を傾けられるようになる。これまでは電信事業に精力をほとんど費やしてきた」と話す。SBGは、「電信子会社の上場により親会社と電信子会社それぞれの役割がはっきりする」としている。米格付け会社のムーディーズのアナリストは、「今回のIPOによりSBGのポートフォリオの透明性が増す」といい、同じく米格付けのスタンダード・アンド・プアーズは、「今回の重量級のIPOはソフトバンクという企業の投資持ち株グループへのモデル転換を一層強化する。今回のIPOはモデル転換戦略にキャッシュフローをもたらし、調達した資金はSBGが次の科学技術投資ラッシュを巻き起こすのを後押しすることになる」との見方を示す。

ここ数年、SBGと傘下の設立してまもなく1千億ドルの規模に達したソフトバンク・ビジョン・ファンドは、世界の科学技術分野で「トルネード旋風」を巻き起こす投資を行ってきた。

ただ、ソフトバンクが親会社の投資ビジョンのために輸血を続けられるかどうかには疑問符がつく。ソフトバンクは、「2019年3月までの18年度以内に、営業収入3兆7千億円と純利益4200億円を達成し、営業収入の前年同期比増加率は3.3%、利益の同増加率は9.7%を目指す」としているが、アナリストのクリス・レーン氏は、「電信市場の長期にわたる基本的側面から考えて、重要な好材料が現れでもしない限り、この産業が高い利益の伸びを達成するのは難しい」と指摘し、別のアナリストも、「ソフトバンクの過去2年間の純収入増加は主に減税政策の恩恵を受けたからで、この好材料が長く続くことはあり得ない」と指摘する。これまでに指摘した逆風となるさまざまな要因の出現で、ソフトバンクが力強く収益を出し続けられるかどうかはわからなくなった。さらに、料金値下げや新規プレイヤーの登場により、来年の日本の電信市場は競争が一層激しくなり、関連銘柄も変動がより激しくなる可能性があり、ソフトバンクの今後ははっきり見通せない。

またメディアが最近伝えたところによると、今年9月末現在、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの280億ドルの投資は27%ものリターン率を達成し、この数字は成功といえるが、来年は逆転する可能性がある。なぜなら目下、複数の投資を楽観視できず、来年のSBGは投資の相場と資産価格が下落する巨大な圧力に直面するとみられ、孫氏の投資拡大計画も頓挫する可能性が出ている。(編集KS)

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