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<直言!日本と世界の未来>保護主義が蔓延する世界で、企業に求められるもの―立石信夫オムロン元会長

配信日時:2018年12月23日(日) 5時0分
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「米国第一主義」を掲げるトランプ米政権は保護主義的な経済政策を推進している。1月から日米間で交渉がスタートする物品貿易協定(TAG)は実質的な自由貿易協定(FTA)であり、我が国企業にとって懸念材料となる。写真は東京。

「米国第一主義」を掲げるトランプ米政権は保護主義的な経済政策を推進している。1月から日米間で交渉がスタートする物品貿易協定(TAG)は実質的な自由貿易協定(FTA)であり、我が国企業にとって懸念材料となる。

1980年代に、筆者は拡販のために世界を飛び回っていたが、巨額貿易黒字を背景とする対外経済摩擦が燃え盛り、東芝機械のココム違反事件など日本バッシングが激化。電撃的プラザ合意による「円の実質大幅切り上げ」のほか、対日制裁色の強い包括通商法、日米構造協議など次々に「対日要求」が突き付けられた。苦い思い出である。今回トランプ政権の矛先は中国に向かっているが、TAG交渉の過程で自動車の対米輸出が制限されたり為替市場での円安相場が問題にされたりする懸念もあるようで油断ならない。

こうした中で、日本は反保護主義の旗手としての役割が求められている。企業もこれまでの国内中心、業界中心の視点から大きく経営の視点を転換し、グローバルなメガコンペティション時代に向け、これまでの日本的経営慣行を打ち破り、新たなパラダイム変換に対応していかなければならない。
 
そのためには、投資家をはじめ企業を取り巻くあらゆるステークホルダー(利害関係者)が、企業を正しく評価し、資本市場をはじめ、労働市場、消費者市場が有効に機能するよう、自らの企業使命の明確化とその透成のためのコーポレートーガバナンス(企業統治)原則を策定・公開し、世界市場にアピールしていくことが重要である。
 
その改革の要点は以下の3点である。
第1は、企業は自らの使命を再確認し、今後の事業の中核となるコアコンピタンスを再確立するとともに、それに向けて分権化、分社化、M&A(企業の合併・買収)などあらゆる戦略・手法を駆使して自らの企業構透の再構築を推進することである。
 
第2は、経営の意志決定システムの効率化とスピード化である。
今や半年で急激に状況が変わると言われる時代にあって、企業は即断即決、臨機応変に変化に対応することが求められる。
 
そのためには経営の意志決定システムの効率化とスピード化を図ることである。その対応策としては執行役員の分離や取締役会、監査役会の強化と経営からの独立性の確立が求められる。その一環として取締役会メンバーの削減や社外取締役あるいは社外からのアドバイザリー・ボードの導入などが既に始まっている。
 
第3は、企業の透明性と情報公開の向上である。企業は、市場で正しく評価してもらうため、株主へのアカウンタビリティー(説明責任)と、国際会計基準などに準拠した情報開示や、IR(投資家向け広報)活動の充実、さらに一般向け情報公開としてのディスクロージャーの充実を図るべきである。

要は、国際市場の中で、企業として自らの企業使命とその実現のためのコーポレートーガバナンス原則を明確化し、経営トップから社員まで共有化するとともに、その情報を市場や社会にアピールし、ヒトーモノーカネ・技術・情報などあらゆる資源調達とその効率的な運用を促進し、経営のパフォーマンスを向上していくこと、それが今後の企業改革のポイントであると言えよう。

保護主義が蔓延すれば、世界経済は行き詰まり、日本も打撃を受ける。資源に乏しい貿易投資立国・日本の政府と日本企業は率先して「グローバリズム」の灯を高く掲げるべきであろう。
(直言篇74)

■筆者プロフィール:立石信雄
1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。SAM「The Taylor Key Award」受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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