<コラム>日本本土を初めて“爆撃”した中国人は英雄となった

工藤 和直    2018年12月13日(木) 12時50分

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第2次世界大戦で、日本本土への初空襲は1942年4月18日のドーリットル空襲が有名であるが、それ以前の1938年、中国空軍は日本本土に侵入し爆弾の代わりに“宣伝ビラ”を投下帰還した史実がある。写真は筆者提供。

第2次世界大戦で、日本本土への初空襲は1942年(昭和17年)4月18日のドーリットル空襲が有名であるが、それ以前の1938年(昭和13年)、中国空軍は日本本土に侵入し爆弾の代わりに“宣伝ビラ”を投下帰還した史実がある。中国軍機2機による目標は九州、長崎・福岡などの都市、この空爆は爆弾の代わりに宣伝ビラを撒いただけだ。その主旨は、日本国民の仁愛精神を呼び覚まし、共に軍閥の武力を乱用する妄想を粉砕するとともに、中国空軍は日本本土襲撃の能力があることを警告するものであった。宣伝ビラは風に流され、熊本県人吉や宮崎県にも落下したという。

以下は「中国新聞網」(2013年3月31日)の記事からの抜粋である。1938年5月19日~20日、中国のパイロット徐煥昇(隊長)を含む8人の2チームは、200万枚の宣伝ビラを米国製マーティンB-10型爆撃機2機に搭載した。飛行時間は16時間、東シナ海を飛び越えて日本本土に遠征し、九州に宣伝ビラをすべて投下した。当時、日本の本土に遠征できる飛行機はマーティンB-10爆撃機だけで、この飛行機の最大の巡航速度は時速343キロメートル、最大航続距離は900キロメートルであった(写真1)。

1938年3月17日、マーティン爆撃機での訓練を行い、飛行距離を増やすため爆撃機の爆弾倉の一部をガソリン・タンクに変えた(1900キロメートル可能)。この任務を行う空軍第14チームが武漢に着くと、蒋介石夫人「宋美齢」が自ら武漢南湖空港に臨んでメンバー達を激励すると、彼ら全員は最大の努力で使命完遂することを誓った。5月19日、2機のマーティンB-10爆撃機は、午後4時に武漢を離れ、前進基地の寧波空港を通って、その夜の11時48分に日本に向けて飛び立った。

5月20日午前2時20分、2機のマーティン爆撃機は九州の西部海岸上空に着き、海面にそって長崎港に直行した。明け方3時、長崎市はまだ警備の状態がなく、飛行機は旋回し都市の照明を借りて第1陣の宣伝ビラを投下、宣伝ビラは雪片のように舞い落ち、長崎の市街区で散った。飛行機は、佐世保→佐賀→久留米→熊本→福岡上空を飛んだ。福岡に入ると、日本側は直ちに防空警報を出しサーチライトを照らし高射砲攻撃を行った。2機の爆撃機は本土上空を半時間ほど旋回して、200万枚の宣伝ビラをすべて投下した後、帰還した。

5月20日の朝、2機の爆撃機は中国東海岸に到着。8時48分に爆撃機2機は昆山玉山飛行場(昆山)と南昌とにそれぞれ着陸、給油して午前11時30分に武漢(漢口)飛行場に帰還した。ビラ投下を行った勇士は、16時間の長距離飛行を経て首尾よく使命を完了した。

その後、もう一度日本本土攻撃をしたが生還していないので、この最初の攻撃だけが成功例として史実に残った。徐煥昇は戦後国民党政府(台湾)に移住し、英雄となっている。この1938年の快挙により、中国は戦勝国のひとつ(日本と直接戦った国のひとつ)となった。

6年後、アメリカの雑誌「ライフ」が世界に名高い12名のパイロットの写真を掲載したが、徐煥昇はその中に含まれていた。写真には、「ドーリットル中佐より前に、日本本土を爆撃した最初の人物」との説明があった。また、有名なアニメ作家「宮崎駿」は、この歴史的出来事を漫画「九州上空の重轟炸機」に記している。

■筆者プロフィール:工藤 和直

1953年、宮崎市生まれ。1977年九州大学大学院工学研究科修了。韓国で電子技術を教えていたことが認められ、2001年2月、韓国電子産業振興会より電子産業大賞受賞。2004年1月より中国江蘇省蘇州市で蘇州住電装有限公司董事総経理として新会社を立上げ、2008年からは住友電装株式会社執行役員兼務。2013年には蘇州日商倶楽部(商工会)会長として、蘇州市ある日系2500社、約1万人の邦人と共に、日中友好にも貢献してきた。2015年からは最高顧問として中国関係会社を指導する傍ら、現在も中国関係会社で駐在13年半の経験を生かして活躍中。中国や日本で「チャイナリスク下でのビジネスの進め方」など多方面で講演会を行い、「蘇州たより」「蘇州たより2」などの著作がある。

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