日本人の先生の言葉に困惑、「なぜ真逆の使い方を?」―中国人学生

日本僑報社    2018年12月10日(月) 21時50分

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日本語を学ぶ外国人を悩ませるものの一つに敬語がある。上海杉達学院で日本語を学ぶ劉通さんは、敬語に関してわいたある疑問を日本人の先生にぶつけてみたようだ。

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日本語を学ぶ外国人を悩ませるものの一つに敬語がある。一口に敬語と言っても、尊敬語から謙譲語、丁寧語とさまざまで、日本人でも完ぺきに使いこなすのは容易ではない。上海杉達学院で日本語を学ぶ劉通さんは、敬語に関してわいたある疑問を日本人の先生にぶつけてみたようだ。以下は劉さんの作文。

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大学で日本語を勉強して、間もなく3年。一番忘れられないことは何かと聞かれたら、やはりあの先生の教えに違いないのです。あれは大学生活の2年目のことでした。新学期に日本語作文という授業が始まりました。この授業は日本人の先生に担当していただくということでした。私は不安でした。今まで、このような経験は一回もありませんでした。

始業を告げるベルが鳴るが早いか、母親のような女性が教室に入って来ました。その身なりと仕種を一目見て、日本を代表する伝統的な大和撫子のように見えました。眼差しがあんまり温かくて優しいので、まるで春風がそよそよと、私の心の奥に吹き込んでくるようでした。このわずか数秒間で、私はもう目の前の先生を好きになってしまいました。

早速、先生が自己紹介を始めました。驚いたことに、先生の名字は野原といいました。子どもの頃から、私はずっと「クレヨンしんちゃん」を見てきました。主人公の名前は野原新之助。野原一家の日常生活を眺めて楽しむことが少年時代から生活の欠かせない一部になっていたので、野原という名字も心に刻みついていました。野原という人が私の先生になることなど、夢にも思わなかったのです。そう考えると、目の前の先生への親近感はさらに増しました。

初回の授業とあって、先生は私達に作文を書かせませんでした。代わりに、ひとりずつと親切に話し合いました。私の番になると、名字のことを皮切りに、先生に「クレヨンしんちゃん」に関して色々と紹介しました。話が弾んで、最後に先生はこう言いました。「よくご存知ですね、しんちゃんのこと」。

「ご存知」という言葉はどういう意味だったでしょうか。私は非常に気になりました。その夜、辞書できちんと調べると、それは尊敬語の一つで、「知っている」と同じ意味だとわかりました。意味はわかりましたが、また新たな疑問が生じました。1年生の時、敬語に関して少々学んでいました。たしか、尊敬語は目下の人が目上の人に使うはずです。教科書にもそう書いてあります。では、先生が使い方を間違えたのでしょうか。先生は教師で、私は学生。両者の差は明らかです。普通なら生徒である私が先生に尊敬語を使うべきなのに、まったく逆の使い方を先生がするなんて……。考えれば考えるほどわからなくなった私は、とうとう先生を訪ねました。

私は先生のオフィスに行って、目上の人が目下の人に敬語を使う必要が本当にあるのか聞いてみました。先生は事情を聞き、ニコニコと笑って敬語の役割や使い方を熱心に教えてくれました。20分後には、今まで私を困らせていた疑問はすっかり解決していました。先生の話によると、敬語の役割は大体三つ。まず、敬意を表す働きです。先生が自分の敬意を生徒に示したとすれば、それは先生が生徒に心をよせる最高の証明だったのです。残りの働きは相手との距離を置くことと、場を改めること。授業中には敬語を使うからこそ、雰囲気がもっと良好になるわけです。

それからというもの、私の敬語の理解は新たな境地に入りました。今、野原先生はもう帰国してしまいました。しかし、先生の残してくれた教えは一日たりとも忘れたことがありません。こうして、たとえ相手が自分より目下でも、私は自ずから、敬語を交えて話せるようになったのでした。最後に、大好きな中島みゆきの「竹の歌」の一節に思いを託し、この場を借りて先生に御礼申し上げたいと思います。「私が伝えて残せるものは 心に根を張る あの先生の教え」。(編集/北田

※本文は、第十三回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「日本人に伝えたい中国の新しい魅力」(段躍中編、日本僑報社、2017年)より、劉通さん(上海杉達学院)の作品「心に根を張るあの先生の教え」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。

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