「日本語を勉強する中国人は激減する」説の真偽は?広東省の現状を探る

Record China    2012年11月26日(月) 13時2分

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2012年9月、日本政府が尖閣諸島を国有化して日中関係が冷え込むと、現地の日系企業が「脱中国化」を進めていると一部で言われている。それに伴って日本語学習者も減ると言われているが…?写真は広州市にある日本語教育機構「致日語」。

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2012年11月23日、中国で広州モーターショーが開催されている。先般から日中関係が冷え込む中、日本のメーカーもこれを機に中国市場のシェア回復を目指している。中国南部、香港にも隣接する広東省広州市は、北京と上海に次いで中国第三の都市。トヨタホンダ日産など日系企業の大本営である。

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9月、日本政府が尖閣諸島を国有化すると、反日感情が中国全土に広がった。現地での人件費の上昇も背景に、これを引き金として日系企業の「脱中国化」が進んでいるとも一部で言われている。

教育現場にもその余波が懸念されている。日系企業の撤退が進めば就職機会が減るため、日本語学習者が減少すると考えられるからだ。広州の日本語教育機構「致日語」の担当者・上井致さんの分析では、広州の日本語学習者は三つに分けられる。

1)日系企業、あるいは日系企業と取引のある現地企業の職員。彼らは、日系企業の脱中国化は短期的には不可能だと考えている。仮に東南アジアなどへ移転するにしても、現地事情や業務をよく知るローカル職員が必ず必要になるからだ。

2)アニメなど日本カルチャーの愛好者。彼らは尖閣問題などの政治・外交問題より、個人の趣味が優先である。また、広東省では80年代から香港のTV番組が受信でき、日本文化との接触は長きにわたって日常だった。80〜90年代生まれの若者は、日本のアニメを見て育ったといっても過言でないほどだ。そう簡単に反日世論に扇動されはしない。

3)日本語を専攻する大学生。こちらも当面は減ることはない。なぜなら、現在の教育制度では、大学の各学科は志望者の多寡に関わらず必ず定員を満たすことになっている。一方、受験生の目標はとにかく大学に入学すること。希望の学科に入学がかなわない場合、学校側の提示する学科に入学することになる。この制度が変わらない限り、日本語を勉強する学生が減ることはまずないだろう。

それでも昔と比べると、「広州でも日本語を勉強する若者は減っているのは事実」と、広州外国語大学日本語学部の元教師は指摘する。2002年ごろ、中国各地で大学数が急速に増えた。これが日系企業の進出期と重なって、日本語学習者も急速に増えた。その状況は2005年から少しずつ落ち着き、2007年、米国のサブプライムローン問題を発端とした世界的な金融危機により、更なる落ち着きを見せた。広州のある大学では、日本語を専攻する学生は2005年ごろに600人前後だったのが、2009年になると120人程度になった。つまり、日本語ブームは日中関係悪化以前からその兆しを見せていたのだ。

中国の経済学者も「日系企業の脱中国傾向は、今回の事件がきっかけではない」と考える。多くの企業は、2015年末までの締結を目標とする中国とASEAN(東南アジア諸国連合)間の自由貿易協定(FTA)を見据えている。輸入関税が抑えられるようになると、広大な中国国内の輸送コストよりも、東南アジアで生産した製品を中国に輸送するほうが安くなるという現象も起こるからだ。

それでも、中国は日本にとって最大の貿易相手国。日本の対中輸出は輸出総額の20%に上る。約2万社の日本企業が中国に投資しており、海外市場からの主要な収益源ともなっている。地球上には13億人規模という巨大市場はここしかない。日本も中国も、この現実をよく理解しているはず。経済関係が相互に依存する限り、中国で日本語を勉強する人が激減することはないだろう。(取材/RR・編集/愛玉)

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