<コラム・巨象を探る>中国リスクが日本企業の経営を圧迫=自動車、家電が深刻―それでも打開策探る 

八牧浩行    2012年11月22日(木) 7時2分

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沖縄県尖閣諸島の国有化をきっかけに勃発した中国の反日デモから2カ月余。中国の景気減速もあって、不買運動に見舞われた自動車や家電を中心に日本企業の多くが深刻な影響を受けている。写真は北京市内の日本車販売店。

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沖縄県尖閣諸島の国有化をきっかけに勃発した中国の反日デモから2カ月余。中国の景気減速もあって、不買運動に見舞われた自動車や家電を中心に日本企業の多くが深刻な影響を受けている。

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日本からの2012年10月の中国向け自動車輸出は前年同月に比べ82%減。実に5分の1以下の水準だ。日本製品の不買運動が広がった影響がモロに出た。全産業における対中国輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支も全産業で4065億円の赤字となった。

 

トヨタ自動車は、10月の中国での新車販売台数が前年同月比44%減の4万5600台に激減。販売の低迷を受け、同社は10月に天津工場での生産を一部休止するなど現地生産を半減した。

2012年のトヨタ自動車、日産自動車、ホンダ3社の中国での販売計画は前年比19%増の275万台。トヨタと日産がともに100万台、ホンダが75万台の販売を見込んでいた。これに対し、トヨタと日産は各20万台程度、ホンダは10万台強、合計で50万台以上も下方修正した。このほか、マツダが3割減、三菱自動車が4割減へ、販売見通しを引き下げた。

中国経済減速と尖閣諸島問題が影を落とし、日本経済には逆風が吹いている。パナソニックの来年13年3月期業績予想は純損益が7650億円もの赤字と2年連続の巨額赤字に陥るほか、シャープも4500億円の赤字予想を発表。電機大手の9月中間決算では、8社のうち6社が1年前より売上高を減らし、純損益では4社が赤字となった。これまでの欧州向けの低迷に加え、中国向けの伸びも鈍化、薄型テレビから自動車部品、工業用ロボットまで幅広い品目で輸出が落ち込んだ。

▽業績下方修正が相次ぐ

もともと今年前半からの、中国経済の急激な成長鈍化が重くのしかかっている。コベルコ建機は主力の油圧ショベルの4割を中国で売ってきたが、12年は中国での販売が3割ほど落ち込むと予測。日立建機は13年3月期の中国売上高見込みを45%減の744億円と、7月時点から半減となる水準に引き下げた。ファナックは中国で工作機械の減産が広がり、同期は三期ぶりに最終減益になる見込みだ。キヤノンは12年12月期の純利益見通しを下方修正し、一眼レフなどレンズ交換式カメラの販売計画を40万台引き下げた。このうち4分の1が中国の不買運動の影響という。

 海運業界も、13年3月期の業績予想を軒並み下方修正した。中国などからの輸出の積み荷が鈍り、運賃も下がると見込んだ。大企業に比べ堅調だった新興企業の業績に陰りが出始めた。

新興企業への影響も深刻だ。ジャスダックと東証マザーズの2市場に上場する企業の2012年度上半期の連結経常利益の合計額は前年同期比5%増にとどまった。増益率は5%増と前年同期の21%から大きく落ち込んだ。中国の景気減速や国内景気低迷を背景に、製造業、非製造業ともに業績の伸びが鈍化している。

中国リスクの影響が日本の各地域にじわじわと広がっているが、特に深刻なのが、自動車産業が集まっている東海地域。中国経済の減速で輸出が不振なのに加え、日中関係の悪化で、日本車の買い控えが深刻だ。

 

銀行系シンクタンクは、このまま中国向け輸出が減れば、12年秋以降の半年間で日本の名目GDP成長率を0.4〜0.5%下げる懸念があると予測する。

7〜9月期のGDPは、中国を中心とした輸出減退が響き、前期(4〜6月期)比0.9%減、年率換算で3.5%減だった。マイナス成長は3四半期ぶりで、10〜12月期も引き続きマイナスとなる可能性が高い。

▽「大きな消費市場」へ打開の道探る

今後の日本企業の業績を左右するのは、中国との関係改善が進むかどうかだ。尖閣諸島問題の深刻化が具体的に響き始め、経営者らは不安を隠さない。しかし、「日本の消費が伸び悩む中、中国に活路を求めるしかない」と語る経営者も多い。日産自動車のカルロス・ゴーン社長は「中国の集客力は徐々に回復しつつある。日中間には多くの共通の利益があり、関係は改善する。むしろ、生産能力は不足気味で計画は多少遅れているほどで、中国での現行計画に修正はない」と意欲的だ

 13億の人口を擁し隣り合う世界第二の経済国家・中国は消費マーケットとしてはまだまだ有望。政治的なリスクを抱えながらも、日本の製造業各社は打開の道を探っている。

<「コラム・巨象を探る」その19>

<「コラム・巨象を探る」はジャーナリスト八牧浩行(Record China社長・主筆)によるコラム記事>

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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