<コラム>これでよいのか? 日本の地理教育―何を意図して教えているのか分からない

如月隼人    2018年12月1日(土) 21時10分

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日本の学校では、中国の地名をカタカナで覚えさせるのですね。日本人生徒が、中国の地名をカナ書きで覚えて、中国人に通じるのか。前に1回、試したことがあります。写真は成都双流国際空港。

皆さんは「試験を受けるのに何の準備もできていない。どうしよう」というタイプの夢を見ることがあるでしょうか。私はあります。それも結構、頻度が高い。嫌なものですねえ。

でも私は、人とは学ぶことが大好きな存在と信じています。新たな知識や方法を知ること、身に着けることが大好きな存在と思っています。でなければ、テレビの情報番組、はたまた探偵小説なんかの人気が続いていることが説明できない。嫌なのは、学びの結果を試されること、それが自分の運命を大きく左右しかねないことなのですね。といっても、社会人になれば学生時代の試験どころじゃない試練が待ち構えているわけですが。

国にとって、教育はとても大切な事業です。なにしろ、国民を「作る」仕事ですから。日本の場合、だいたい小学校から高校までは、政府文部省が教育の指針をしっかり作っている。政府が教育に干渉しすぎるとの批判が出ることがありますが、関与すること自体は当然のことと言えるでしょう。

ただ、その方針について「なんじゃ、こりゃあ!?」と言いたいことも出てくる。私がこのところずっと気にしているのは世界地理の教育、さらに具体的に言えば「中国地理」です。

中国の地名をカタカナで覚えさせるのですね。日本人生徒が、中国の地名をカナ書きで覚えて、中国人に通じるのか。前に1回、試したことがあります。中国語を知らない日本人に、中学や高校の地理に出てくる中国の地名を読んでもらった。それを中国人に聞いて、どの地名か分かるかどうかを調べた。

実験を行ったのは、当時働いていた編集室でです。本名はあえて伏せますが、日本人の同僚のO越さんに、カナ書きの中国地名を読んでいただいた。地名当てに参加していただいたのは、中国人のお嬢さん3人ほど。日本語も達者なので、日本人の発音の癖もよくご存じで、日本語を知らない中国人よりも正答率は高くなると考えました。

それでも、正答率は低かった。たしか、3割ぐらい。日本ではどうして、中国人に通じない中国語地名を教えているのか。お嬢さんがたは、O越さんの発音を聞いて思案顔。ひとりが思いついた地名を挙げると、残りのふたりも「そうよね、そうよね」と相づち。

当たれば、全員がけらけらと大笑い。はずれてもキャーキャーと大はしゃぎ。ということで十二分に楽しめたわけではありますが、考えてしまいましたね。日本人が学校で覚えさせられる中国語地名を判別することは、中国人にとって「正解のなかなか出せないクイズ」みたいなもの。これ、教育方針としておかしくないのか。

この稿を書くに当たり、高校生用の地図帳を確認したのですが、多少の改善はあるようです。例えば四川省の成都。O越さんに読み上げていただいた時代には「チョンツー」と書いていた。今は「チョントゥー」です。ちなみに中国語のローマ字表記では「Chengdu」です。

いろいろ工夫したとしても、カナ書きはしょせん、無理が大きすぎるのですよ。中国語の発音は日本語よりも圧倒的に多いのですから。中国人にほとんど通じない中国の地名を、日本の子どもは学ぶよう強要されているわけです。どう考えても変だなあ。私は、中国語地名は漢字表記の日本語読みで教えるのが妥当だと思っています。少なくとも、漢字で書けば通じるわけですからね。中国で使われている簡体字(略字体)は日本語の新字体より省略の度合いが大きい場合が多いのですが、それでも通じやすい。

もちろん、カナ書きも教えておけば「日本語とは違う発音」と生徒に実感させる効用はある。でも、あくまでも補助にすべきと考えています。

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