<コラム>文政権の問題点とは?苦言を述べてみる

木口 政樹    2019年6月4日(火) 21時20分

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いま韓国は、ドナウ川事故の報道一色だ。犠牲になられた方に哀悼の意を表しつつ、今回は文政権についての苦言を述べてみる。写真は北朝鮮。

いま韓国は、ドナウ川事故の報道一色だ。犠牲になられた方に哀悼の意を表しつつ、今回は文政権についての苦言を述べてみる。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領のことを個人的に好きだ嫌いだとはいいたくない。しかし日本に対する言動や北朝鮮に対するやり方をみているとどうしてもこんなんでいいのかと思いたくもなる。

朝鮮日報に文在寅氏の本質的な問題点があぶり出されたわかりやすい文章があった。文章は、朝鮮日報の顧問をしている金大中というジャーナリストが書いたもの。(前の大統領の金大中ではない。)

より簡潔にするため必須でないところは省いて筆者なりにまとめたものをここに書いてみたい。

ひたすら北朝鮮との「平和」にすべてをつぎ込んでいる文在寅(ムン・ジェイン)大統領に聞きたいことがある。大統領は何を根拠に、北朝鮮が韓国を侵犯しないという確信を持っているのだろうか?北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長からどのような保障や言質をもらって韓国を武装解除し、国民に「平和」という幻想を植え付けているのか?文大統領はそうした疑問を抱く国民に一度も答えたことがない。

大統領がこれまで見せたのは金正恩委員長との数回の対話や、太平洋を行き来しながら熱心に米国大統領に会って「報道官役」をしたぐらいのことだけ。国民が知りたいのは、そうした表面上の対話ではなく北朝鮮が本当に韓国を侵犯したり吸収したりしないという実質的な保障だ。

そういう安全保障を国民に信じさせるには少なくとも次の二つが必要だ。一つは文大統領とその政権がやること。平和は、感覚や印象だけでは保障できないし保障されない。確実な情報がなければならず状況判断が健全でなければならない。重要なのは、平和を保障する背景としての安全保障能力だ。文在寅政権はそのような信頼を与えることができていない。

もう一つは、金正恩委員長の役割だ。金正恩委員長が「韓国との平和」に言及したことは一度もない。肉声で韓国との共存・共栄を誓ったことがない。韓国国民の多くの懸念をぬぐい去るには、少なくとも北朝鮮の最高指導者の公の約束や言質が必要で、それが常識だ。今朝鮮半島では、南側の大統領による「一方通行の平和」だけが喧伝されている。率直なことを言えば、金正恩委員長が韓国との平和を肉声で内外に宣言すれば、韓国は彼らが核を保有していても経済支援・協力に乗り出すことも可能だ。それでも文大統領は、信頼の根拠を示すどころかそのような疑問や不安を「反平和」だと罵倒している。

大統領は今年4月1日の大統領府首席秘書官・補佐官会議で、「韓米同盟共助にすき間を空けさせ韓半島の平和の流れを元に戻そうという試みがある。南・北・米の対話努力を快く思わず、確執と対決の過去に戻そうとするのは、国益と韓半島の将来にとって決して助けにならない」と述べた。

韓米共助のすき間を空けさせようとしているのは、対北朝鮮制裁解除および対北朝鮮支援をめぐり水面下で論争を繰り広げている文在寅政権であり、あえて言うならトランプ大統領だ。南・北・米の対話努力を快く思わないというのも、韓国国民の一般的な感情とは言えない。

戦争に備える国防は本来「1%のゲーム」だ。国防とは1%という戦争の可能性に備えた投資である。それでも1%の可能性に投資するのは、戦争が国民の生命と財産を奪い国家の存続を危うくするものだからだ。一国の指導者にとって、国民の生命と財産を守ることは、ほかの何にも優先する最重要課題だ。大統領は漠然とした信念のために、国民の生命と財産を担保にして賭けをしてはならない。ところが、現政権は万が一に関する備えがまったくない。文在寅政権は平和に向かって進むと言いながら武装解除をしているありさまだ。

過去の権威主義政権では言葉尻に「戦争」をちらつかせた。国民を恐怖で縛り付け、統治するために戦争を利用した。左派政権では言葉尻に「平和」をちらつかせる。国民を恐怖と緊張感から解き放ち気を緩めさせる。平和が国民にとって吸引力となるのは当然だ。国民が平和を好んでも、指導者は戦争に備えなければならない。それが指導者の使命であり宿命なのだ。

金正恩委員長はこのほど、韓国国民の目を引く発言を二つした。一つは、最高人民会議の施政演説だ。「私はどのような課題と難関が前方をふさいでも、国家と人民の根本的な利益と問題でチリほどの譲歩も妥協もしないだろう」という発言。もう一つは、先日のミサイル発射現場での「強力な力によってのみ、真の平和と安全が保障され、担保されるという哲理を肝に銘じよ」という発言だ。

金正恩委員長のこの発言は、韓国大統領の口から出なければならなかった。対決に備えずに自ら武装解除しながら「平和」ばかり喧伝し、反対意見を「反平和」とひとくくりにして切り捨てることに熱心な文大統領こそ、この名言(?)を手本にすべきだからだ。(ここまで朝鮮日報顧問・金大中氏の引用)

すばらしい文章だ。そういえば、金正恩委員長が肉声で「韓国との平和」に言及したことは一度もないということに気づかされた。また、文政権が、安全保障に対する疑問や不安をいうとすぐに「反平和」だと罵倒しているのも事実だ。

もっとも、文政権に対する批判意見は野党の自由韓国党が出すことが多いけれど、自由韓国党がものを言うときに、不必要なことまであれこれとくっつけて言ってしまうために、国民からの信頼を得られていないのもまた事実だ。急所をぐさっと突くようなやり方で文政権をたたいていけばいいものを、あまりにもトンデモ発言をしてしまうために、せっかくの意見も台無しになってしまっている。この点、非常に残念でならない。自由韓国党は使い物にならない。与党を窮地に追い込むなど、まったくお手上げの状態だ。朝鮮日報などのマスコミの今回のような文章を噛みしめるのが、せめてもの慰めなのかも。

■筆者プロフィール:木口 政樹

イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大学校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓国』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。

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