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SF、ミステリー、推理、武侠、ネット玄幻小説といった中国の小説が今、西洋で人気となっており、各種売れ筋ランキングの首位に立っている。
SF、ミステリー、推理、武侠、ネット玄幻小説といった中国の小説が今、西洋で人気となっており、各種売れ筋ランキングの首位に立っている。著名な学者である中国社会科学院の研究員・張暁明氏は、「外国人が中国の小説に夢中になるという現象は、純文学において起きているだけでなく、通俗文学でもトレンドとなっている。インターネットの登場により、情報伝達の方法だけでなく、創作スタイルも変化した。インターネット上で成長した創作者は、グローバル化した市場に対する適応力が高い」との見方を示す。北京晨報が報じた。
インターネットが作者と世界中の読者を直接つなぐ時代
「風声」、「射雕」、「三体」、「盤龍」など、多くの中国の小説が今、欧米の図書売れ筋ランキングにランク入りしている。インターネット上では、中国ネット小説の翻訳や連載がトレンドとなり、関連サイトが次々に開設されて、多くの若者の間で人気となっている。また翻訳や中国作品の掲載、中国の小説を模倣した作品などが、新たなトレンドとなっている。
張氏によると、「インターネットによる発信と、伝統的な発信の仕方は全く違う。以前は、本一冊でも、作者、出版社、書店などの一連の複雑なプロセスを経てやっと日の目を見、その後、出版権のやり取りや翻訳などを経て、外国の読者の手元に届いていた。その過程は非常に長く、ある本が注目されても、それが外国語で出版される時には、多くの人はその本をすでに忘れているということが多かった」という。
一方、ネットによる発信はそれとは異なり、そのプロセスを大幅に短縮することができる。張氏によると、「特にネット小説は、融通が利き、一章書き上げれば、すぐにそれを投稿することができ、中国語と外国語の同時投稿も問題なくできる。そして、読者と随時コミュニケーションを取ることもできるため、毎回読者の『チェック』を受けることができる。不評だった場合はすぐに調整することができる。技術的問題は何もない。そのようなスタイルは、読者のニーズにうまく合わせることができる。それが、中国の読者のニーズであっても、外国の読者のニーズであってもだ」と説明する。
グローバル化が進む現代におけるコンテンツ創作
武侠、玄幻、仙侠といった中国の要素に満ちた小説が、外国人の間でも人気となっている原因について張氏は、「実際には、テーマが一番重要なのではない。一番重要なのは、創作方法、作者の視野、観念、好みなどだ。世界中の若者の好みに大きな違いはなく、特にインターネット時代の今、情報が世界中に伝わり、コミュニケーションも非常に便利であるため、地域や文化の差がかなり縮まっている」との見方を示す。
ある出来事の情報を、北京の若者とニューヨークの若者がほぼ同時に見ることができ、距離が問題ではなくなったため、観念の差も縮まっている。張氏は、「中国人も米国・英国製作のドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』が好き。欧米の若者も中国の玄幻の小説が好き。中国人も海外の歴史が好きで、外国人も中国の歴史が好きだ。インターネット時代に成長してきた今の若者は上の世代の人々とは異なり、皆好みの本などが非常に似通っている。若者の多くはテレビをあまり見ず、ゲームをしたり、映画を見たりして育った。中国の若者が好きなものは、外国の若者も好きで、その逆のことも当然ありえる」との見方を示す。
観念や好みが同じであるという現象は、読む本の内容だけでなく、創作自体にも影響を与えている。張氏は、「若い創作者は、自身もインターネット上で成長しているため、読者と好みや趣味が同じで、その作品は読者の心をつかみやすい」と分析する。
技術力の向上で言語の壁が解消
中国では、若者が海外の映画や米国のドラマを見たりできるようにと、翻訳チームや字幕チームが活躍しているが、実際には海外にも翻訳チームが存在する。そして、たくさんの優れた人気翻訳者やボランティア発信者もおり、中国の小説が英語やフランス語など多くの言語に翻訳され、翻訳されるまで待つことができないという人は、自分で中国語を勉強して小説を読んでいる。
これまでは、文学の海外発信において「翻訳」が最大の「難関」の一つだった。特に、大量の伝統的な要素を含んでいる文学作品を正確に翻訳して原作のニュアンスを伝えるというのが難しい点だった。しかし、今は、翻訳が以前より簡単なことになっている。張氏は、「翻訳ソフトのレベルが向上しており、その精度も高くなっている。翻訳ソフトを使うだけで、本を読むことができることもある。また、大衆文学やネット文学は通俗文学で、内容は浅く、軽いため、翻訳の精度がそれほど高くなくても、雰囲気を楽しむことができればそれでいい」との見方を示す。
ある外国のネットユーザーも、「たくさん勉強しないと読んでも意味が分からない名作と比べると、大衆小説やネット小説のほうが理解しやすく、中国文化の魅力的な部分を名作と同じように感じることができる」と書き込んでいる。 (編集KN)