中国ビジネス「時流自在」16■これからの中国展開(2)危機管理現地マニュアル化を〜検討すべき具体策

Record China    2012年10月23日(火) 7時32分

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中国政府の日本に対する経済対抗措置は長期にわたって継続する可能性がある。少なくともこの機会に中国ビジネスに関連する日系企業は、危機管理と安全対策について考え、現地マニュアル化などの対応を図っておくべきだろう。写真は北京市内を走る日本車。

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11月の中国共産党大会での新指導部成立後も尖閣問題が長引けば、中国政府の日本に対する経済対抗措置が長期にわたって継続する可能性がある。

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少なくともこの機会に中国ビジネスに関連する日系企業は、危機管理と安全対策について考え、現地マニュアル化などの対応を図っておくべきだろう。

1、平時の心得

平素から現地事情に慣れない日本人駐在員、出張者が中国社会の内部で無防備に露出することは極力回避すべきである。

(1)現地「大衆レストラン」やクラブ等、中国人しか行かない店の利用(日本人同士でのパーティー、会食、単独行)はやめる。やむを得ない場合は外資系ホテルのレストラン個室を利用する。

(2)現地駐在員の携帯電話はライフラインとして常時携帯する。非常時の連絡には、文字化けしない英語もしくはローマ字文の日本語で携帯メールを利用する。

(3)外出時は開放気分で派手な服装や持ち物をひかえる。宴会等で泥酔しない。

(4)日方主催の現地イベント、パーティーは必ず現地公安当局の事前許可を得る。

(5)地方に長期出張・駐在員、研修生、留学生がいる場合は、定期的に連絡を入れさせる。

(6)抗日記念日には日本の国旗を掲げたり、イベントを開催しない。

(7)「中国は人件費が安い」など差別的ともとれる言葉を安易に発しない。

(8)携帯電話、中国身分証明とパスポートコピーは常時身に付け自己の安全を確保する。

2、非常時に備える

 万一に備え、親しい中国人スタッフと非常時の連絡体制、帰国後の留守番体制など、緊急避難対応について社内ルール(危機管理対策マニュアル)を決めておく。参考として、SARS騒動の際は24時間常時接続のブロードバンド・インターネットサービスを利用した国際会議システム、中継カメラシステムが広く活用されたこともあった。

(1)中国企業とのビジネス紛争、トラブルの現場に日本人はできるだけ顔を出さず、対処方針を決めたら、紛争の現場では中国人どうしで解決してもらう。

(2)銀行から一定の現金を払い戻して手元に置いておく。

(3)「cn」のアドレス、URLは使わず、「jp」を使う。

(4)外から開けられない隠れ部屋を準備し、万一に備え外部への脱出路を確保しておく。

3、危険が目前に迫った場合(非常脱出時)

(1)日本本社、家族と定期的に連絡を入れる(skype、携帯メール等)。

(2)日本、香港、シンガポールから情報をとる。

(3)信頼できる身近な中国人から「噂」情報を集める。

(4)国際空港に近い日系ホテルに移動する。

(5)日本大使館、領事館、日系航空会社、日系ホテルの情報に注意する。

(6)運転手と相談し、空港までの安全移動を確保する

 この機会に、駐在員は帯同家族と非常時の連絡方法を話し合っておく。

 非常事態が予想される場合には、不要不急の出張者や駐在員帯同家族を安全なうちに早めに一時帰国させ、自分も空港近くの日系ホテルに転居するぐらいの万全の対策をルール化しておいたほうが良い。

4、今後のシナリオ

1989年6月に発生した天安門事件の際は、政府による武力鎮圧に対して世界各国が中国に経済制裁を加える中で、最初に制裁解除してODAを再開したのは日本だった。そのあと90年代にかけて未曾有の中国進出ブームが到来した。しかし、今回は中国側にしてみれば領土問題という国家主権のメンツに関わる問題であること、その論拠が日中近代史の歴史認識、反日愛国教育という非常に根深い問題であると捉えていること、そして日本側にとってみても、SARS騒動以来の毒餃子事件、反日デモなど嫌中感が幅広く定着してしまっている状況で、双方とも関係回復、修復はすぐには困難と思われる。大胆な打開策が出ない限り、短くても数年、長ければ習近平政権の続く限りは継続を覚悟すべきだろう。

日本の大企業は円高とアメリカ経済の回復基調を背景として、当面は北米シフトで不況をしのぐことも可能と思われるが、日中間の経済交流は当面の間「我慢比べ」以外の方法は無いだろう。しかも彼らは国家主権のメンツと、歴史認識問題を論拠としているため、最後まで弱音を見せず頑張ることだろう。そうなると、90年代後半のアジア金融危機や07年リーマンショック時のような、日系企業の中国撤退ブームも始まるかもしれない。現状が来年以降も継続するようであれば、忍耐強い日本企業であっても、中国ビジネスの戦略を見直すターニングポイントの時期が到来したと考え始めるだろう。

中国経済にとって最大のリスクは、日本はじめ海外からの直接投資が引き上げ始めることである。そうなると雇用だけでなく、輸出、税収、生産財需要、不動産投資、株価、技術革新など経済活動が多方面で停滞、後退し、最悪の場合、中国経済のハードランディングに結びつく危険性もある。問題が長引き、国内の企業倒産や失業が増えれば、さらに政治の右傾化もしくは反政府運動に進展する危険も予想される。

具体的考えられる今後の対策としては、

(1)これまで中国ビジネスが必ずしも順調でなかった企業は、この機会に一斉に撤退を始める可能性がある。

(2)さらに人件費の安い中国の内陸部に移転して国内市場販売を続ける。ただし、この方法は他に選択肢の無い、差別化のできる製品でなければ生き残れないだろう。

(3)それも難しいようであれば、中国内の欧米外資企業または大手国産企業を相手としたOEM事業展開を図る。

(4)フィリピン、インドネシア、ベトナム、タイ、カンボジア・ラオス、ミャンマー等に生産拠点を移転し、シンガポール、香港経由で中国市場向けに輸出する。

(5)対ドル円高と米国市場景気回復を背景として、北米シフトを図る。

(<時流自在>は筧武雄・チャイナ・インフォメーション21代表によるコラム記事)

<筧武雄氏プロフィール>

一橋大学経済学部卒北京大学留学、横浜銀行北京事務所初代駐在員、同行アジアデスク長、海外経済協力基金(OECF)派遣出向などを経てチャイナ・インフォメーション21を設立。横浜国立大学経済学部非常勤講師、神奈川県産業貿易振興協会国際ビジネスアドバイザーなど多くの役職を経て、現在も横浜市企業経営支援財団グローバルビジネスエキスパートなど、日本企業を支援する中国ビジネスコンサルタントとして活躍中。

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