<コラム>日本風の施設はもはや「廃屋」=中国のゴーストタウン風の撮影所

関上武司    2018年10月6日(土) 22時20分

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中国の遼寧省瀋陽市郊外にある関東影視城は、20世紀初頭の街並みを再現した撮影所兼娯楽施設になっている。写真は筆者提供。

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中国の遼寧省瀋陽市郊外にある関東影視城は、20世紀初頭の街並みを再現した撮影所兼娯楽施設になっている。2008年に開業し、時代劇の撮影も行われている。中国のテレビのチャンネル数は非常に多く、ほぼ各省に影視城が設置され、蘭州新区西部影視城の記事で説明したように壮大なスケールの撮影所もあれば残念ながら廃墟になった物件も存在する。関東影視城の敷地面積は28万平方メートル、入場料金68元(約1100円)という価格設定は中国の影視城としては一般的と言える。

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昔の城壁と楼閣を再現した立派な入口周辺には、観光客目当てで屋台が軽食を販売していた。日曜日の昼間の集客率はそれほど高くはなかったが、閑散としているわけでもない。入場ゲート周辺や敷地内にはカラフルなアニメキャラクターやランタンが設置され、夏休みの夜間にはランタンフェスティバルでも開催するものと推測された。イベント目的で華やかにデコレートしているのは同影視城の経営努力と認めるのだが、メンテナンス不足で屋根から草が伸び放題という建物も多く見られる。

柵の中に並べてある旧日本軍の軍用車両は抗日ドラマの撮影に使用するのだろう。日本建築をイメージした櫻花會館に足を踏み入れると、豊臣秀吉を彷彿とさせる武将の絵があり、床は畳が敷いてあるように見える筵(むしろ)が並べてあったが、この建物を一言で表現すると廃屋。敷地内の関帝廟は来場者目当てで線香を販売していたが、日曜日にも関わらず飲食店は営業していなかったので、経営的に大丈夫なのかと不安になってきた。

中国の遊園地でもお化け屋敷(中国語では鬼屋)は当たり前のように営業しているが、関東影視城では墓穴を掘る骸骨や首つり死体のオブジェが屋外に多数設置されたエリアがあり、筆者はまだ訪問していないのだが、タイ各地に存在する屋外に地獄世界を再現した寺院を彷彿とさせる。このエリアは建物の状態も特に悪く、魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)する文字通りのゴーストタウンだ。人によっては入場料金を払ってどうしてこのようなボロボロの建物を見なければならないのか?と怒りたくなるかもしれないが、筆者のような珍スポット好きにとっては嬉しい誤算だ。廃墟マニアなら興奮しながら撮影している可能性大である。

敷地内のスタッフのおばちゃんにどうしてここまでメンテナンスがされていないのか質問したところ、あえてボロい状態にしていると回答される。関東影視城は中国の数ある撮影所のなかでも特殊な方向性の営業方針の模様。なんとなく釈然としないものを感じながら筆者は関東影視城から瀋陽市中心部まで戻ろうとするのだが、公共交通機関のアクセスはかなり悪い状態なので、訪問の際には瀋陽市内からタクシーをチャーターした方が無難だ。

■筆者プロフィール:関上武司

1977年の愛知県生まれ。愛知大学経営学部卒。中国で留学や駐在員としての勤務経験あり。日本や中国のB級スポットを紹介するブログ・軟体レポートの管理人。中国遊園地の取材で中国の全省、全自治区、全直轄市へ訪問。会社員の傍ら、「中国遊園地大図鑑」シリーズを執筆し、メールマガジンのロードサイダーズ・ウィークリーにて「ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行」を連載中。このほかイベントも開催している。

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