<コラム>中国海軍、J-15戦闘機パイロットを初めて直接募集

洲良はるき    2018年10月4日(木) 23時10分

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中国人民解放軍海軍が公式にパイロット候補生を募集すると発表した。中国海軍のパイロットの募集は2019年から、大きく拡大される。写真はJ-15の離陸。

中国人民解放軍海軍が公式にパイロット候補生を募集すると発表した。中国海軍のパイロットの募集は2019年から、大きく拡大される。

4つのグループが継続して23省、直轄市、自治区に渡って全国的にパイロット士官候補生をテストし、選び出すという。(中国は23省5自治区4直轄市2特別行政区からなる)。中国中央軍事委員会公認で人民解放軍が出資している英字軍事ウェブサイト「チャイナ・ミリタリー」(2018年9月18日付)が報じている。

中国人民解放軍海軍パイロット候補生募集業務事務室によれば、これらのリクルートでもっとも重要なのは、空母艦上機パイロットとなる士官候補生の選抜であるという。

公開されている『2019年度海軍パイロット候補生募集要項(概要)』によれば、家族があり、該当地区での学籍に登録されており、戸籍があり、関連する基準に適合したものが新兵募集に申し込むことができる。中国共産党の方針を支持していることも条件となる。中国海軍が求めているパイロット候補生は、16歳から19歳までの男子だ。

パイロット候補生になれば、授業料免除で大学の学部過程を受講することができ、生活必需品と給料が支給され、4年後には一流大学の学士の学位を取得することができる。海軍パイロット・リクルート業務事務室広報によれば、「パイロット候補生のうちの一部は、空母艦上機パイロットとして、体系的な最高の訓練受ける」としている。

中国軍はアメリカ軍と伝統やしきたりなど、多くの面で違っている。しかしパイロットがエリートであるということを強調し、他にも興味を引きそうな内容を提示して若者をその気にさせようとするのは、はからずもアメリカと同じだ。

中国海軍が、瀋陽J-15(殲-15)フライングシャーク艦上戦闘機パイロットを直接に公募するのは今回がはじめてとなる。現在のJ-15艦上戦闘機のパイロットは、空軍から引き抜かれたり、海軍の他の航空機で訓練していたパイロットだった。

中国の空母・遼寧では24機のJ-15戦闘機以外に、早期警戒ヘリコプターなど、多くのヘリコプターが運用されている。まだ試験段階の、中国2隻目(国産1隻目)002型空母は、遼寧よりやや多くのJ-15戦闘機を搭載することができるとみられている。

伝えられるところによれば、中国はすでに3隻目の空母の建造をはじめているとされる。情報源によって多少の時期の違いはあるとはいえ、複数のメディアが、中国は2030年くらいまでに、空母4隻体制になるのではないかと見込んでいる。

「チャイナ・ミリタリー」によると、将来中国の空母4隻体制を見越して、中国海軍は400人のパイロットを必要とするという。

サウスチャイナ・モーニング・ポスト(2018年9月19日付)では、2016年の終わりまでで、25人のパイロットがJ-15艦上戦闘機を操縦する資格をもち、他に12人が訓練中だったとしている。

今年5月には、夜間にJ-15が遼寧に着艦する映像が中国海軍によって公開されている。統計では空母艦載機において、約80パーセントの事故が着艦の過程でおこっている。特に夜間着陸は、非常に高い操縦技量を必要とし、空母運用においてもっとも危険な行為として広く知られている。空母への夜間着陸が行えるのは、パイロットの中のエリートチームだけだ。中国国営通信社の中国新聞網では、パイロットの王亮氏の発言として、艦載機が夜間に発着艦するのは、真っ暗な中で字を書くようなもので、うまくできるようになるには徹底的に熟知するしかないとしている。

J-15艦上戦闘機の先任パイロット盧朝輝大佐は、次のように話している。「夜間着陸を可能にするため、多くの困難を乗り越えなければならなかった」「最初は空母の甲板にどのように照明を配置し、どれくらいの明るさにするべきかもわからなかった」

空母遼寧が就役したのは2012年9月、中国のパイロットが始めて空母への着艦を行ったのは、2012年11月のことだった。

中国2隻目(国産1隻目)の空母は、来年には就役すると見込まれている。中国海軍は空母艦上機のパイロットを緊急に必要としている。

チャイナデイリーによれば、中国海軍パイロットの裴英杰少佐が次のように言ったという。「晴れた日、空を飛ぶ。悪天候の日も空を飛ぶ。昼も夜も訓練していて、ほとんど家族のことを顧みる時間がない」「これもすべて、経験と能力で、我々と潜在的な敵との間に違いがあることがはっきりとわかっているからだ。訓練するしかない。1分も無駄にできない」。

2018年8月に公開されたアメリカ国防総省による『中国の軍事力に関する年次報告書』では、「遼寧はアメリカの空母より大幅に劣る。しかし、空母・遼寧は海上の部隊に航空機による上空援護を提供し、パイロット、甲板乗務員、戦術を向上するのに使用されている」となっていた。

■筆者プロフィール:洲良はるき

大阪在住のアマチュア軍事研究家。翻訳家やライターとして活動する一方で、ブログやツイッターで英語・中国語の軍事関係の報道や論文・レポートなどの紹介と解説をしている。月刊『軍事研究』に最新型ステルス爆撃機「B-21レイダー」の記事を投稿。これまで主に取り扱ってきたのは最新軍用航空機関連。

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