中国ビジネス「時流自在」14■中国富裕層の落とし方(7)市場開拓の心得は「6A」、説得力、地元の信頼

Record China    2012年9月24日(月) 9時18分

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今回は、今後の中国市場開拓の心得についてまとめてみたい。これは企業戦略というよりも、中国マーケット営業担当者の「心がけ」として、求められる資質と言ったほうがよいだろう。写真は北京のデパート。

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今回は、今後の中国市場開拓の心得についてまとめてみたい。これは企業戦略というよりも、中国マーケット営業担当者の「心がけ」として、求められる資質と言ったほうがよいだろう。

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山芋掘り商法

「中国ビジネスは3A」という言葉をご存知だろうか? 3Aとは、「焦らず、慌てず、あきらめず」の頭文字をとった90年代に流行った日本人の造語である。その後、さらに「あなどらず、あてにせず、誤らず」が加わって「6A」にもなった。まさに、万里の長城は一日にして成らず、中国ビジネスのスピードは速く臨機応変の柔軟性は必要でも、焦りは禁物である。

 

古くから中国専門商社を経営しているベテラン社長から、「中国ビジネスは芋ほり戦法で臨め」と聞いた記憶もある。焦って山芋を一気に引き抜こうとしても、ほとんど葉と頭の部分しか採れず、中国商売は失敗する。成功するためには、時間をかけて周りからゆっくりと丁寧に奥深くまで掘り進め、それで最後には根こそぎゴッソリと成果を抜き取ることができるという意味である。言い換えれば、早いうちに、平素から、用意周到に根回し準備をして、彼らの環の中の一員となってお互いの信頼と友好関係を深めていれば、いざビジネスとなったときに全面的に協力関係が発揮でき、ビジネスは非常に順調に進むということである。実際に、日本の大手商社は、過去多くの留学研修生の交換など、中国とこのような付き合い方をしているケースが多い。

中国ビジネスのなかでも、特に中国市場に商品を売る、中国消費者に売り込むということはもっとも難しい。個々の商売は人目を引き、最新の流行を追いかける派手なビジネスのように見えるかもしれないが、実際は異なる言語、異なる民族、異なる商習慣の中にどっぷり浸かって、広い大陸で中国商人を相手に手間隙と費用をかけて山芋を掘るような、本当に地味な、地ならし開拓作業の繰り返しなのである。

道理を講ずる

中国人は特に理屈を語るのが好きである。口喧嘩が始まると、相手の言葉には耳を貸さず、マシンガンのように自分の言葉を撃ちまくる人物が多い。多くの日本人は、これで防衛に入り、閉口してしまう。特に話がビジネスの損得にからむ話題となれば、彼らの早口攻撃は留まる所を知らない。

中国ビジネスの勝敗は一義的に会話力、交渉力で決まると言って過言ではない。経営者は、自分の言葉で取引相手を、顧客を、従業員を納得させることができなければ、経営者としての資質も存在の意味も認められない。これは、その場で相手を説き伏せる説得力、同時に現場の問題に即座に対処できる危機管理能力と呼ぶこともできるだろう。

「道理を講ずる」とは、決して難解な哲学理論や屁理屈を語ることではない。誰をも納得させることのできる社会的常識、公道(Common Sense)を分かりやすく、即座に自分の言葉で語ることができる対人会話能力である。彼らの短気で懐疑的な不安や疑問に、強烈な言葉の攻撃に明快に言い返すことができるコミュニケーション能力と言っても良い。これは事業経営や商談交渉だけでなく、店頭での商品説明、インターネット上でのチャット、さらにはトラブル・紛争解決、喧嘩の仲裁に至るまで、中国社会を生き抜いていくために幅広く必要とされる、中国社会「適者生存」のためのサバイバル能力なのである。

地元との信頼関係の構築

北京、上海といった大都市はすでに80年代後半から欧米の大手百貨店、スーパー、レストラン、香港台湾系の大手ショッピングモールが立ち並ぶ飽和状態の激戦区となっている。今後の中国ビジネスの展開は、すでに市場成長著しい内陸地方都市へと向かう趨勢にあり、そこでは、大都市とは異なる「昔ながらの中国式」地元開拓営業が求められる。全国展開を考えるのであれば、北京・上海といった沿海大都市は異なる、内陸地方都市、農村都市の市場開拓モデルを展開する必要がある。

出店方式も、大都市部モデルのような大手量販店内あるいは新しいショッピングモール内への出店だけではなく、地元商店街の老舗、地元商工会(協商会議)とのつきあいが大切になってくる。特にブランド確立を目指すのであれば、やはり各地中央商店街の信用ある老舗商店、地域の商業団体組織との協力関係は不可欠だろう。もし、逆に協力姿勢に欠けることがあれば、物流、インフラ、行政許可、人材募集、宣伝広告などいろいろな面で不都合が生じることも予想される。

そういった中国各地方都市での商業団体、商業管理行政組織との結びつきを強めていけば、必ずそこで各地域のボス、有力なパートナーと出会えるはずである。彼らこそが中国内陸部地方都市の米国式「Sales Rep」、「Distributer」たる存在であり、在庫を持たない有力な地域個人代理商とも言うべき存在になる。

中国の古い言葉に「儒商」、「一諾千金」という言葉がある。

「儒商」と呼ばれる、徳のある大商人がひとつ商売を約束すれば、コネを伝って、それに千の商売が後からついてくる、という意味である。中国では、商売の信用も人徳と深い相関関係にある。値引きや信用販売は、日本のような在庫一掃、価格破壊、薄利多売等という発想ではなく、中国では取引相手との信頼関係、「あの人の面子は傷つけられない」という発想から基本的に生まれるものである。

言い換えれば、自分が「道理を講じ、面子を重んじ」る尊敬される中国「儒商」的なパートナーになることができないかぎり、中国社会への浸透と、内陸部市場への更なる開拓は難しいのである。

実は日本にも、一般には外資企業とも思われていない欧米企業が、化学業界などに多数存在している。日本に根ざして半世紀以上、日本で信頼と名声を得て成功している外資企業の日本での経営手法を、今度は日本企業がアジア・中国展開の参考とするのも、ひとつのソリューシヨンになるのではないかと思われる。

(<時流自在>は筧武雄・チャイナ・インフォメーション21代表によるコラム記事)

<筧武雄氏プロフィール>

一橋大学経済学部卒北京大学留学、横浜銀行北京事務所初代駐在員、同行アジアデスク長、海外経済協力基金(OECF)派遣出向などを経てチャイナ・インフォメーション21を設立。横浜国立大学経済学部非常勤講師、神奈川県産業貿易振興協会国際ビジネスアドバイザーなど多くの役職を経て、現在も横浜市企業経営支援財団グローバルビジネスエキスパートなど、日本企業を支援する中国ビジネスコンサルタントとして活躍中。

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