絵文字は日本最大の輸出商品、美術館の永久収蔵品にも―中国メディア

人民網日本語版    2018年8月25日(土) 1時20分

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言語・文字の専門家ビビアン・エバンズ氏は新刊「ザ・絵文字・コード」の中で、絵文字は現代の人々の社交生活や言語習慣にどのような影響を与えたかを論じている。

デジタル化時代の今、携帯電話でショートメッセージを送るときに黄色い表情マークを利用する人が大勢いる。このマークは「絵文字」とも呼ばれる。米テレビネットワークCNNがこのほど伝えたところによると、言語・文字の専門家ビビアン・エバンズ氏は新刊「ザ・絵文字・コード」の中で、絵文字は現代の人々の社交生活や言語習慣にどのような影響を与えたかを論じている。解放日報が伝えた。

エバンズ氏によると、絵文字が日本の最も優れたグッドデザインの一つであることは間違いない。世界のオンラインユーザーの約90%が絵文字をよく利用し、1日当たり60億件の絵文字記号が送信される。絵文字は今や日本最大の輸出商品だといっても大げさではない。人々は絵文字を一種のアートととらえている。2016年には米ニューヨーク近代美術館(MoMA)が絵文字を永久収蔵品に選び、そのうち176種類は1999年に誕生した第1弾バージョンの絵文字だ。

90年末、東京のソフトウェア技術者の栗田穣崇氏がやがて世界に旋風を巻き起こすことになる表情マークを創作した。当時、携帯電話の画面が小さかったので、栗田氏は簡単なマークを設計して文字の代わりにし、ショートメッセージのやりとりをより生き生きしたものにしようと考えた。「絵文字」とは絵で意味を表現する文字ということで、最初は文字の意味を含んだ画像だった。今では黄色い表情マークは有名になり、ピカソやポロックの「世界的名画」とともにMOMAに収蔵されている。

■言語の一種か?

英語でも日本語でもスワヒリ語でも、言語として成立するには2つの要素が必要だ。語彙と文法だ。このように考えると絵文字は非常に独特なものだといえる。視覚的に感情を伝えるマークによって意味を伝えることができるが、言語の一種とみなすのは難しい。第一に、語彙の問題がある。絵文字を言語とみなそうとしても、英語に比べて語彙量が少なすぎる。毎年新しい絵文字が誕生するものの、現在利用できるものは2000種類に満たない。一方、英語を母語とする人の語彙量は幼稚園に入る頃には5000語に達し、中学生で1万2000語になる。

語彙量の少なさは克服することが難しい問題だ。絵文字を利用して抽象的な思考を表現するのは難しく、ウインク、笑顔、ポーズなどのマークで簡単な意味を伝えることはできるが、「排外主義」、「フェミニズム」、「倫理」、「反伝統主義」といった概念は一体どうやって伝えればよいのか。

次に、文法の問題だ。文法を通じて、さまざまな語彙を組み合わせ、まとまったセンテンスを作り上げるのは、実に複雑なプロセスだ。だが絵文字利用に文法の問題は存在しない。

もちろん絵文字の熱狂的愛好者の絵文字を尊ぶ気持ちを否定するわけではない。デザイナーのケン・ヘイルさんは絵文字で名作文学「不思議の国のアリス」を翻訳したことがある。ヘイルさんは、「絵文字は一種の言語で、自分の翻訳プロセスは『暗号化意味論』だといえる」との見方を示した。

■デジタル化時代の表現方法

絵文字が言語の一種ではないとするなら、どのように定義すればよいだろうか。絵文字は若い人がやりとりの中でよく利用するちょっとしたお遊びに過ぎず、人間を文字のわからない暗い時代に引き戻すという人がいる。こうした人々はデジタル化時代の通信方式に生じた変化を真に理解しているとはいえないし、絵文字の新しい通信ツールとしての影響力を非常に低く評価する。

普段、私たちは言語を日常のコミュニケーションに欠かせない媒介と考えるが、より多くの情報を表現・伝達するのは手振り、顔の表情、身体言語、語調といった非言語コミュニケーションで、言語よりも豊富な内容を伝えることもある。たとえばよく利用される絵文字のウィンクや笑顔は非常に重要な非言語コミュニケーションで、前後の文章が何を伝えたいかの理解を助ける。

ますます密接になる社交生活の中で、デジタル化された通信手段が人と人とのコミュニケーションに重要なチャンネルを提供するようになった。また一方で、デジタル化通信の方式とコンテンツでは、対面式の交流のように豊かに、直接的に情報を伝えることは難しい。デジタル化されたマークとテキストはそれ自体が豊富とはいえず、人類の言語に特有の繊細な表現が消滅する可能性があった。文字の登場はこうした問題をうまく補い、デジタル化された通信では、手振り、身体言語、語調に近い役割を果たすようになった。

友人から送られたショートメッセージを考えてみるとよい。「つまずいて、食器棚に頭をぶつけた」と送られてきたとき、その友人が気の毒がってほしいのか、笑い飛ばしてほしいのかがわからない。メッセージの最後に「悲しい」マークがあれば、非言語コミュニケーションによって友人が痛がっていることが伝わる。「涙目の笑顔」のマークがあれば、友人が自嘲気味であることがわかる。

デジタル化時代の今、絵文字は人と人との新たなコミュニケーションに適応する中で生まれたものだ。直接的で単調なテキストの最後にあって、感情を細やかに伝えるとともに、自分をよりよく表現するのを助けてくれる。(提供/人民網日本語版・編集/KS)

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