2012年8月1日、米サフォーク大学歴史学科の薛涌（シュエ・ヨン）助教授は、なぜ米国に高速鉄道が存在しないのかについて、中国新聞週刊にコラムを掲載した。

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高速鉄道は現在、日本やフランス、ドイツ、イタリアなどの先進国だけでなく、中国などの発展途上国でも凄まじい勢いで発展を続けている。しかし、米国は19世紀後期に世界最大の鉄道網を西部へと拡張したことによって大きな発展を遂げたにもかかわらず、いまだに本格的な高速鉄道は存在していない。

米国に高速鉄道がない理由は、“かなり例外的な国情”によって決定されたものである。20世紀初頭、米国は依然として世界の鉄道王国だった。しかし、やがてモータリゼーションの波が訪れ、航空機が発展し、鉄道は旅客輸送分野から締め出される形になってしまった。

当時、蜘蛛の巣のように張り巡らされていた鉄道網は、今では自転車専用道路やランニングコースに変更されるなど、多くの路線網が廃棄されてしまっている。また、現在の各地の鉄道網は、通勤路線として敷設されているものがほとんどで、多くは赤字路線となっている。

一方で、鉄道による貨物輸送は非常に発展している。効率が高いだけでなく、コスト面でも他の国よりも優れており、しかもこれらの貨物路線はすべて民間企業の運営で、政府の援助に依存していない。その原因には、米国が世界最大の原材料と農産品生産国の1つであることが挙げられる。鉱物や農産品の輸送は、ある鉱区から特定の港湾までなど、地域が集中しているだけでなく、固定されているケースが多く、しかも貨物量が巨大になるため、鉄道でなければ有効的に輸送できないためだ。

今日、世間一般に「高速鉄道は米国にふさわしくない」と言われるのには、それだけの理由がある。まず最初に、鉄道による顧客輸送には、密集した人口や安定的に移動する顧客量が必要だが、米国は国土が大きく人口密度が低いため、人口が分散した各地区を少数の路線で結びつけることが難しい。特に、自動車社会になって以降、政府の投資は高速道路中心に行われ、さらにガソリン価格が安かったことによって、「短距離は自動車、遠距離は飛行機」という移動モデルが形成され、鉄道が発展する余地が非常に小さくなってしまった。また、鉄道の敷設には巨額の先行投資が伴うため、各州政府での予算承認がされにくかったことも一因に挙げられる。

しかしここに来て、ガソリン価格の高騰やエネルギー問題、環境問題意識の高まりなどによって、高速鉄道建設の声が日々高まってきている。7月18日には、カリフォルニア州のジェリー・ブラウン知事が高速鉄道法案に署名した。また、シカゴではインディアナ州やオハイオ州など米国内陸部各州を結ぶ高速鉄道センターの建設が計画されており、このほかにもテキサス州やフロリダ州、ニューヨーク州などで高速鉄道の敷設が検討され始めている。（翻訳・編集/HA）