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<直言!日本と世界の未来>東京医科大の点数操作、男女共同参画社会づくりに逆行する―立石信雄オムロン元会長

配信日時:2018年8月12日(日) 6時0分
東京医科大の点数操作、男女共同参画社会づくりに逆行する
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東京医科大が女性の合格を抑制するための点数操作をしていたことが発覚した。女性は出産や子育てで離職する割合が高いので、合格者を増やすと系列病院の運営にも支障が出るというのが点数操作の動機だという。
東京医科大が女性の合格を抑制するための点数操作をしていたことが発覚した。女性は出産や子育てで離職する割合が高いので、合格者を増やすと系列病院の運営にも支障が出るというのが点数操作の動機だという。女性が働きやすい制度や環境をつくるのが根本策なのに、女性医師の数を抑えることに躍起になるのは本末転倒ではないだろうか。医師をめざして猛勉強中の女性たちが、時代錯誤の「女性差別」にひるまないことを祈りたい。

企業において女性の活躍を促進する取り組みは、1986年施行の男女雇用機会均等法以降、法律や制度面での環境整備が進んできた。近年はより実質的な男女間の雇用機会の平等を目指して、いわゆるポジティブ・アクションの取り組みが推進されている。厚生労働省に女性の活躍推進協議会が設置され、活躍の場を拡大するための提言書をまとめたり、全国の企業を対象に女性の活躍状況の診断を行うなど、企業の主体的な取り組みのサポートが行われてきた。企業も積極的に取り組み大きな成果が出ている。

男女雇用機会均等法が成立してから30年以上が経過し、この間の女性の社会進出は目覚ましい。 厚生労働省の「男女雇用機会均等法成立30年を迎えての働く女性に関するデータ」によると、25〜44歳の女性の就業率は、1985年の56%から2015年には71%にまで上昇した。女性の産業別雇用者数を見ると、1985年には「サービス業」(464万人)が最多だったが、2015年は「医療、福祉」(578万人)が最も多くなっている。医療・福祉分野は女性に依存していると言っても過言でなく、女性医師を抑制するのは現実的ではないと思う。

課題はなお多い。一般労働者の所定内給与額の男女間格差(男性=100とした場合の女性の所定内給与額)は、1985年の59.6から2015年には72.2と改善しているが、なお格差は大きい。

女性の年齢層別人口に対する労働力人口の割合をグラフにすると、20代前半と40代後半をピークとして30歳前後を谷とする、いわゆるM字型カーブを描くことが知られている。これは20代後半から女性が結婚や出産、子育てなどの時期を迎えるに当たり、仕事を離れる人が出てくるためだ。

また、いわゆる共働きの夫婦の場合、実際には妻の側に負担が偏っているのが実態だ。内閣府が行った若年層の意識調査では、大半が夫婦で家事を半分ずつ分担することを理想と回答しているものの、実際は家事を自分で半分以上やっている夫の割合は少数だ。

このように、家庭での男女の家事や育児負担の状況を見ると、女性の活躍をさらに推進するためには、企業の制度を改善するに当たっても、社員の家庭での責任に配慮した取り組みの充実が必要である。欧米では女性の職場進出や家族形態の変化、少子高齢化等を背景に、「ファミリー・フレンドリー」という考え方が普及している。

グローバリゼーションやIT(情報技術)革命など、企業を取り巻く環境が大きく変化している中で、従来の男性に偏った価値観のみならず、男性も女性もバランスよく交じり合った多様な価値観の中から、創造性豊かな商品やサービスが生み出されることに期待したい。

この女性受験生差別問題、文部科学省前局長が東京医科大に便宜を図る見返りに、息子を不正合格させたとされる汚職事件の捜査の過程で浮かび上がったようだが、東京医科大だけの問題なのかどうか。経済協力開発機構(OECD)の2015年のデータをみると、医師に占める女性の割合は、日本は20.4%で、加盟国28か国で最低だった。加盟国平均の半分以下にとどまっている。欧州では6割以上の国も多い。男女共同参画社会の実現に逆行するような動きは抑止したいものである。
<直言篇59>

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄
1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。SAM「The Taylor Key Award」受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。
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