<コラム>日本企業が投資したがほぼ廃墟に、トラウマ級の中国の遊園地に潜入

関上武司    2018年8月13日(月) 17時50分

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広東省珠海市の珍珠楽園は1985年に開園した遊園地で、日本ゴルフ振興株式会社が投資を行い、隣接する珠海国際ゴルフ場とセットで開発された。写真は珍珠楽園。筆者提供。

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広東省珠海市の珍珠楽園は1985年に開園した遊園地で、日本ゴルフ振興株式会社が投資を行い、隣接する珠海国際ゴルフ場とセットで開発された。1988年の時点では、最新式の遊具を揃え、珠海市の「十大景点」のひとつとして評価されていた。しかし中国の経済発展に伴って、珠海市だけでも1997年に「円明新園」、1999年に「夢幻水城」といったテーマパークが開園し、レジャー施設の競争が激しくなり、同園の経営状況は悪化。2004年に日本ゴルフ振興株式会社も倒産し、新設備への投資や遊具のメンテナンスが困難になり、2010年ころから老朽化した遊具の撤去が開始される。

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筆者が2016年にマカオから珠海に入境したゲートでは「横琴長隆海洋王国」のCMが放映されていた。こちらはさすがに莫大な資金が投資されたのか、集客力が高いテーマパークだと感じたが、系列テーマパークの「広州長隆歓楽世界」へ行く予定につき、どうしても訪問できなかったのが悔やまれた。城軌珠海站のバス停から10路のバスで珍珠楽園まで向かったのだが、バスの運転手から「そんなところへ遊びに行く人間は誰もいないぞ」と忠告される。

珍珠楽園の入場ゲートは建物の老朽化がひどく、チケット売り場のビニールの天幕は破れていたりして廃墟遊園地のような雰囲気を醸し出していた。従業員からほとんどの遊具が稼働していないと説明されるが、60元(約1020円)払わされたことにもかなり驚かされた。入場ゲートをくぐると香川県のニューレオマワールドのオリジナルキャラクターのペディー・バードとポーリー・バードが出迎えるが、実は旧レオマワールドも日本ゴルフ振興株式会社が開園しているので、パクリキャラというわけではないようだ。

園内をぐるりと1周するメーンストリートは清掃が行き届いているようだが、冬の平日の午後でも来園者が筆者以外に見当たらず、バスの運転手は事実を述べていたと実感させられた。まともな遊園地ならば敷地内のメーンストリート沿いで従業員の洗濯物を干すようなことはないだろう。東京ディズニーリゾートでは独自の世界観を演出する目的で敷地内に畑が設けられているのだが、珍珠楽園では園内各所で多品種の野菜を栽培する畑があり、食料用と推察される鶏が10羽以上も駆け回り、ゴミ箱やイス、竹竿を使って中華ソーセージがぶら下がっていた。ここまで従業員が自給自足に励む遊園地は筆者もまだ見たことはない。

妖怪屋というお化け屋敷の入口のみ効果音が流れていたが、館内の電源が落ちているのか必要最低限の照明すら作動せず、手持ちのライトがなければ暗すぎて歩くことすら危険だ。ほとんどの遊具が撤去される、もしくはメンテナンスをしないで放置された状態なのだが、唯一稼働していた世界一周がコンセプトのアトラクションの小世界に入ってみると、電気が通っていたことに感動を覚えた。ツタンカーメンの棺に照明があてられていたものの、世界の有名建造物のレプリカは一部、倒壊している。園内中心部にある珍珠劇場はかつてアシカショーでも開催していたと推察される構造だったが、観客席には雑草が生い茂り、ステージも廃墟化しており、イベントを開催することは絶望的な状況だ。

入口付近の従業員に質問してみると、数年前から遊具の撤去や運行が停止され、今後も期待できないものの別の施設の収益によって、同園はなんとか維持されているとのこと。珍珠楽園は廃墟マニアなら大喜びしそうな物件だが、普通の遊園地だと期待して親子で訪問するとトラウマになりかねない。経済発展著しい広東省では多くのテーマパークが開園しているが、老朽化した娯楽施設が閉鎖されているケースも存在する。日本でもバブル期に開園した多くのテーマパークが閉園していることもあり、レジャー産業の経営の難しさを思い知らされる。

■筆者プロフィール:関上武司

1977年の愛知県生まれ。愛知大学経営学部卒。中国で留学や駐在員としての勤務経験あり。日本や中国のB級スポットを紹介するブログ・軟体レポートの管理人。中国遊園地の取材で中国の全省、全自治区、全直轄市へ訪問。会社員の傍ら、「中国遊園地大図鑑」シリーズを執筆し、メールマガジンのロードサイダーズ・ウィークリーにて「ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行」を連載中。このほかイベントも開催している。

■筆者プロフィール:関上武司

1977年の愛知県生まれ。愛知大学経営学部卒。中国で留学や駐在員としての勤務経験あり。日本や中国のB級スポットを紹介するブログ・軟体レポートの管理人。中国遊園地の取材で中国の全省、全自治区、全直轄市へ訪問。会社員の傍ら、「中国遊園地大図鑑」シリーズを執筆し、メールマガジンのロードサイダーズ・ウィークリーにて「ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行」を連載中。このほかイベントも開催している。

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