<直言!日本と世界の未来>「民間経済外交」展開を!トランプ氏に理解求めたい=懸念される日米貿易協議―立石信雄オムロン元会長

配信日時:2018年8月5日(日) 5時0分
トランプ氏の30年前の認識懸念=日米貿易協議―立石オムロン元会長
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日本と米国政府の閣僚級貿易協議の初会合が9日からワシントンで開かれる。日本が避けたかった2国間交渉の形となり、厳しい交渉になろう。1980年代の日米経済協議を思い起こさざるを得ない。
日本と米国政府の閣僚級貿易協議の初会合が9日からワシントンで開かれる。日本が避けたかった2国間交渉の形となり、厳しい交渉になろう。1980年代の日米経済協議を思い起こさざるを得ない。

今回の協議で米側は自由貿易協定(FTA)の2国間交渉入りを要求するといわれ、輸入牛肉の関税引き下げなど国内農業への影響を懸念する日本は守勢に立たされる。トランプ氏が検討する自動車関税上げも日本にとっては難題。関税上げが実現すれば、日本メーカーへの打撃は甚大だ。

トヨタ自動車は年間約4600億円の負担増になるとの見通しを明らかにした。米国販売で日本からの輸出に頼る傾向が大きいスバルやマツダは、さらに経営への悪影響が大きいという。日系メーカーの日本から米国への輸出は17年に170万台、日本以外からの輸出も154万台にのぼる。大和総研は、部品メーカーを含めた負担額は関税が25%なら年間2.2兆円と試算する。

米側は11月の中間選挙前に目に見える成果を迫る。日本は2019年夏に参院選を控え、農業団体の反発が確実な農産品の関税下げは受け入れにくい。茂木敏充経済財政・再生相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表による貿易協議から目を離せない。

1980年代に、日本の大幅貿易黒字を背景とした経済摩擦問題が厳しかった頃のことである。輸入促進のため、政府も税での優遇制度を設け、ジェトロ(日本貿易振興機構)も対日輸入・投資促進の手助けをしていた。経団連など経済団体でも輸入促進ミツションを数多く送り出し、民間企業でも多くのパートナーと共同研究開発プロジェクトを推進した。

当時、私は各国財界人による国際会議に度々出席、日本産業界の対米黒字削減努力を説明して理解を求めた。残念なことは、会合に出席している外国人経営者のほとんどがこれらの日本の努力を知らない。あるいは知ろうとしないで、対日貿易収支の赤字の大きさだけで感情的になっていることであった。また、対米のみならず、先進諸国向けの日本の製造業の輸出が先進諸国の経済や、産業構造の中に組み込まれてしまっている事実を理解していないことであった。

米国企業の商標の下に米国で販売される消費者向け商品、米国の製造業者が自社製品の一部として使用する部品および機器、米国の製造業者が生産のために使用する製造設備と、在日米国企業からの輸出など米国産業にとって不可欠な製品の輸出が多い。米国の経営者はこういう事実の認識に乏しかったようだ。

当時、パーセプションギャップ(認識の違い)や事実誤認がもとで“日本たたき”が行われた。「不動産王」として米経済界で活躍していたトランプ氏は当時「日本の大幅黒字」を非難し、「是正を求める」新聞意見広告を出したこともある。今「アメリカ第一」を掲げるトランプ大統領は対外貿易赤字の元凶として中国をやり玉に挙げるだけでなく、日本にも疑いの目を向けている。2017年の米国の対日貿易赤字は688億ドル。対中赤字の3752億ドルの5分の1規模だが、米政権は日本の自動車貿易の非関税障壁などや農業産品の高関税に不満を抱いているとされる。今もトランプ氏とその支持者たちはその“残影”にこだわっているのではなかろうか。

対日外経済摩擦は燃え盛り、東芝機械のココム違反事件など日本バッシングが激化。電撃的プラザ合意による「円の実質大幅切り上げ」のほか、対日制裁色の強い包括通商法、日米構造協議など次々に「対日要求」が突き付けられた。

日本の大幅黒字批判が燃え盛っていた当時、経済界代表団は経済摩擦解消に向けた経済交流などのため欧州、米国、韓国、中国、豪州と文字通り東奔西走した。輸入促進のため、政府も税での優遇制度を設け、ジェトロ(日本貿易振興機構)も対日輸入・投資促進の手助けをしていた。経団連など経済団体でも輸入促進ミツションを数多く送り出し、民間企業でも多くのパートナーと共同研究開発プロジェクトを推進した。

当時、私は各国財界人による国際会議に度々出席、日本産業界の対米黒字削減努力を説明して理解を求めた。残念なことは、会合に出席している外国人経営者のほとんどがこれらの日本の努力を知らない。あるいは知ろうとしないで、対日貿易収支の赤字の大きさだけで感情的になっていることであった。また、対米のみならず、先進諸国向けの日本の製造業の輸出が先進諸国の経済や、産業構造の中に組み込まれてしまっている事実を理解していないことであった。それでも日本を代表する大企業トップ・幹部が顔を揃え、摩擦緩和に効果があったと思う。現在、経団連を中心に民間外交を積極的に展開することを検討しているようだが、大賛成である。
<直言篇58>

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄
1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。SAM「The Taylor Key Award」受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。
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