イエメン難民はなぜ韓国・済州島へ押し寄せた?

Record China    2018年7月26日(木) 6時40分

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25日、韓国最南端に位置するリゾート観光地・済州島が「難民問題」で揺れている。写真は済州島。

2018年7月25日、韓国最南端に位置するリゾート観光地・済州島が「難民問題」で揺れている。

韓国メディア・YTNによると、中東・イエメンでは、内戦が激化して海外に脱出する人が増加しており、その一部が済州島に入国している。済州島には今年、イエメンからの「難民」が550人以上も入国した。難民らは、韓国政府が観光を活性化させる目的で2002年に導入した「ノービザ制度(テロ支援国を除く180カ国の外国人はビザなしで30日間滞在できる)」を利用している。

韓国はこれまで、難民とは無縁の国だった。1993年から2013年6月までに難民申請した人は5500人に過ぎない。ところが、2013年7月にアジアで初めて「難民法」が施行されたことを機に、世界に「アジアの他の国に比べて難民に寛容だ」との認識が広まった結果、今年は1万8000人が難民申請をした。また、SNSに「済州島は難民にとって暮らしやすい場所」などの書き込みがあったことも、済州島に難民が急増するきっかけの1つとなった。

しかし済州島には現在、難民に対応する職員が1人しかいない。韓国政府はアジアの中では先進的に難民法を運営してきたものの、実際はいかなる支援も行っていなかった。そのため、済州島に来た難民の多くが、ボランティアの支援を受けたり、野宿をしたりしながら韓国政府による難民認定を希望している。こうした状況を受け、韓国国民の間では、難民に対する拒否感や差別意識が強まっている。特に雇用競争の激化や外国人による犯罪増加を懸念する声が多い。大統領府のホームページには「ノービザ制度廃止」を求める請願が掲載され、多くの賛同を得ている。

これに対し、韓国政府は新たな流入を防ぐため今年6月にノービザ入国の対象からイエメンを除外し、本土への渡航も禁止した。一方ですでに済州島にいるイエメン人には就業を認める特例措置をとるどっちつかずの対応を見せている。

国民の不安とは裏腹に、済州島や専門家からは同制度の廃止に否定的な声が上がっている。韓国のニューシスや東亜日報によると、済州島は国際自由都市を目指すために存続させたい立場を示した。済州島関係者は今月20日、「済州島で難民申請した外国人の数は、ノービザ制度のない他の地域の5%の水準に過ぎない」と発表。他の地域でも難民申請者が毎年増加しているため、同制度を「難民申請者増加の直接的な理由とみることは難しい」ということだ。

江原大のハン・ゴンス教授は、「ノービザ制度の廃止は一時的な解決策に過ぎない。世界における韓国の認知度の高さや地位を考えると、今後も難民は別の方法を見つけて入国してくるだろう」と述べた。

また、ソウル新聞によると、韓国政府の積極的な対応を求める声も多い。済州平和人権研究所「ワット」のシン・ガンヒョプ所長は「ここまで大規模な難民の流入も、本土への渡航禁止措置も初めて。そのため混乱に陥っている」とし、「政府は問題を済州市に任せるのではなく、人道的な解決に積極的になるべき」と主張した。

公益法センター「アピール」のチョン・スヨン弁護士は「難民を法律支援しているため、国民から批判的な声を聞くことも多い」とした上で、「そうした視線の背景には、私たちがイスラム国家や難民をよく知らないために生じる恐怖心がある」と指摘した。

その他、韓国の大学教授の一部も「韓国はこれまで、国際的な地位に見合わず難民問題に消極的な態度を見せてきた。韓国は朝鮮戦争の時に外国から支援を受けた上、国連の難民条約にも加入しているため、政府が粘り強く国民を説得しなければならない」などと主張している。(翻訳・編集/堂本

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