<在日中国人のブログ>日本人におススメ!WeChatは中国の社会を知る近道

黄 文葦    2018年7月30日(月) 9時50分

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日本人も使う人が目立つようになったWeChatは、中国の代表的なSNSの1つだ。中国でビジネスを展開するなら、日本企業はWeChatを上手く利用したほうが良いだろう。写真はWeChatのスマホアプリ。

日本人もWeChat(微信、ウィーチャット)を使う人が目立つようになった。WeChatは、テンセント(騰訊)が2011年にリリースした、文字や音声、写真、動画を使用できる無料メッセージアプリで、中国の代表的なSNSの1つである。

テンセントの馬化騰・最高経営責任者は今年3月、WeChatの月間アクティブユーザー数が世界全体で10億人の大台を突破したと発表した。WeChatはすでに、世界でも最大規模の人気アプリだ。スマートフォン・PCともに利用可能で、中国人の大部分はWeChatでメッセージを送り合っている。

先日、私は中国で新たな販路開拓を検討しているファッションブランド事業者向けのセミナーに参加した。そこで、セミナーの講師は「現在中国では、もう名刺交換をしません。WeChatを交換します」と述べ、参加者にWeChatを勧めた。

確かに、中国でビジネスを展開するなら、日本企業はWeChatを上手く利用したほうが良いだろう。WeChatは便利な連絡手段である上、訪日インバウンド客向けにPRもでき、重要な役割を果たせると期待できる。

なぜなら、WeChatが中国人の日常に浸透しているからだ。鉄道・飛行機の予約、タクシーの手配、ネットショッピングなど、WeChatの電子マネーが多くの場面で活躍している。

WeChatのモーメンツ(Moments)はタイムラインと似ていて、人々が自身の日常をつぶやいたり、ビジネスを宣伝する人も少なくない。中国人にとってWeChatは仕事で欠かせない存在だ。さらに、WeChatでグループを作れば離れた場所から会議ができ、こうしたコミュニティーは人と人のやり取りを活発化させる。

ただし、WeChatがいくら便利・多機能とはいえ、大きな弱点もある。それは、モーメンツの内容をシェアできないので、友達以外の人が見られないことである。例えば、WeChatでつながっていない2人が、共通の友達のモーメンツにそれぞれコメントしても、互いのコメントが見られない。自分のモーメンツについて見られる範囲を制限することはできるが、友達以外の人に「公開」することはできない。

つまり、モーメンツには厚い壁がある。それぞれのコミュニティーの中で、人びとは日常の些細なことを、繋がっている人だけと共有しているのだ。モーメンツには検閲もあると言われており、反政府的な発言が削除されたこともあるという。ツイッターフェイスブックのような自由・開放的な空間は持てないのだ。

実は、中国ではWeChatよりもオープンなSNSがある。WeChatよりも歴史があり、中国版ツイターと言われているWeibo(微博・ウェイボー)だ。登録すれば、すべてのユーザーのつぶやきを見ることができ、他人も自分のつぶやきを見ることができる。しかし、数年前からWeiboの言論の自由が度を超え、把握されにくくなったと言われている。

私の知り合いの学者は「WeChatは絶対に使わない」と語っている。その理由は、「WeChatを使ったらいつでもチャットできるので、便利すぎる。そして、時間を無駄にするおそれがある」ことという。

この学者のような考え方をもつ人もいると思うが、「みんな使っている。使わないとおかしい」という周囲に流されてしまう人も少なくないはずだ。WeChatは中国社会の縮図だと言える。つまり、親族・親友・仕事仲間のコミュニティーに頼って暮らしの情報を得て、便宜を図る。コミュニティーの中で生き、コミュニティーの価値観に染められ、この世のつらいことや楽しいことを経験する。

また、WeChatは中国の巧みな政権運営の縮図だとも言える。人々にWeChatを使わせ、ビジネス・生活の便利さを与える。しかし、言論の空間は制限する。もちろん、中国でビジネスを展開しようとしている日本人にはWeChatを勧めたい。中国市場を目指すなら、中国人と組んでビジネスをするなら、WeChatは欠かせない存在だと断言できる。WeChatを使うことは中国社会を認識する近道であるだろう。

■筆者プロフィール:黄 文葦

在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。

■筆者プロフィール:黄 文葦

在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。

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