<羅針盤>ワールドカップ・サッカーで考えたこと―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2018年7月22日(日) 5時0分

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サッカーのワールドカップ・ロシア大会が、フランスの優勝で幕を閉じた。大会中主な試合をテレビ観戦したが、どれも面白く様々なことを想起した。

サッカーのワールドカップ・ロシア大会が、フランスの優勝で幕を閉じた。大会中主な試合をテレビ観戦したが、どれも面白く様々なことを想起した。

予選リーグでランキング最下位の日本代表が強敵コロンビアを撃破し、決勝トーナメントに進んだ健闘に拍手喝采した。日本はポーランドに0対1で負けていながら、警告・退場数によるフェアプレーポイントの差でリーグを通過することに賭けて、最後の約10分間、消極的なボール回しを行った。一部に批判もあるようだが、今回の戦術は、ベスト16入りという大目標を達成に向けた戦術としてルール違反ではなく、許容範囲だと思う。

前回優勝のドイツが1次リーグで敗退し、メッシのアルゼンチンも、ロナルドのポルトガルも決勝トーナメント1回戦で、ネイマールのブラジルも準々決勝で敗退。クロアチア対フランスの決勝は専門家の間で予想外だったようだ。

人口約420万人の小国クロアチアは準決勝で母国イングランドを撃破した。クロアチアは1991年に旧ユーゴからの独立を宣言して内戦に突入。今大会の最優秀選手に選ばれたMFモドリッチは当時、祖父を殺され、自宅も失ったとされる。悲劇を乗り越え、見事復活したクロアチアチームに拍手を送りたい。

フランスの優勝はパリなどでテロが相次いだ悲しい記憶を吹き飛ばす明るい話題として称えたい。今回の仏代表で特筆すべきは移民や2世らの活躍だと思う。19歳のエースFWエムバペは父親がカメルーン出身。準決勝のベルギー戦で決勝ゴールを決めたDFウンティティは22歳で同じカメルーン生まれだ。フランスに多く居住するアフリカ系移民の若者にとっては「努力すれば夢は実現する」との大きな励ましになったと考える。同時に移民や難民問題で揺れる欧州や世界にとって、出身や人種を超えた「団結」の尊さを示す好例となるのではなかろうか。

世界を追う日本は体力的なハンディはあるものの、若い世代を中心にグローバルな潮流にも柔軟に対応し、地道な努力を続ければ頂点への道はいずれ開けると感じた。新たに就任する森保一監督の統率力と戦略にも期待したい。これはサッカーの世界だけに限らないだろう。

<羅針盤篇29>

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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