「海外における中国人学校開設が急務」 在日本中国大使館・汪婉参事官

人民網日本語版    2018年7月18日(水) 17時0分

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外交官はそのほとんどの時間を海外で暮らしており、彼らの子供たちの就学問題は大きな問題となっている。こうした問題を解決するため、中国在外大使館は「陽光学校」を開設するようになっている。

外交官はそのほとんどの時間を海外で暮らしており、彼らの子供たちの就学問題は大きな問題となっている。こうした問題を解決するため、中国在外大使館は「陽光学校」を開設するようになっている。陽光学校は、外交官の子供たちを対象に中国語や中国文化を学ぶために開設された学校で、子供たちの中国語能力の向上と、帰国後もスムーズに入学や進学ができるようサポートすることを目的としている。このほど人民網駐日本記者は駐日本中国大使館参事官で、程永華大使夫人の汪婉・陽光学校校長を取材し、日本の陽光学校開設までの過程や現状、海外において中国人学校を設置する必要性についてインタビューを行った。人民網が報じた。

アジアで最初の陽光学校が日本で開設されるまでの紆余曲折

2002年、当時在米国大使館の大使を務めていた楊潔篪氏と夫人の楽愛妹参事官は、初めて同大使館に陽光学校を開設した。そして、楽参事官が初代校長を務め、中国在外大使館が陽光学校を開設する先駆けとなった。

程永華氏が駐日本中国大使に就任すると、10年9月には「陽光中国語教室」を開設したが、残念なことにそれから数カ月後の11年3月に東日本大震災が発生し、津波の影響で福島第一原発事故が発生した。大使館の職員の家族は全員帰国し、「陽光教室」も閉鎖せざるを得なくなってしまった。それから約1年半、中国大使館の職員は家族も子供も日本にいないという特殊な状況が続いた。そして、12年10月になってようやく「陽光教室」が再起動し、教師の資格を持つ外交官の家族に教師を担当してもらうことになった。13年1月、楽参事官率いる中国外交部(外務省)と教育部(省)連合業務グループが在日本中国大使館を訪問したことをきっかけに、在日本中国大使館の陽光学校が正式に開校。同校は、中国外交部が海外の大使館に開設した12校目の陽光学校で、アジアでは第1校目となった。

陽光学校の子どもたちと記念撮影する程永華大使と汪婉参事官、楽愛妹参事官(汪婉参事官提供)

「陽光教室」を開設した際も、陽光学校を開校した際も、教師どころか、設備や机、椅子に至るまで何もなく、全てを0から始めなければならなかった。通常の学校と異なり、同校の学生は5歳から17歳までとなっており、1クラスの人数は非常に少ない。例えば、小学2年生は3人、中学3年は1人だけといったようにだ。それでも、小学2年、3年、4年、5年、中学1年、3年の6クラスがある。このようにクラス編成は完全に外交官の子供の状況に基づいて決められる。

汪校長は、先頭に立ち、様々な工夫を凝らし、度重なる困難を解決していった。授業に関する問題を解決する必要があっただけでなく、課外活動を企画したり、保護者たちからの意見に基づいて問題を処理したりといったように、非常に多くの仕事をこなしてきた。

陽光学校の教室の様子(汪婉参事官提供)

8年間の努力を経て在日本中国大使館の陽光学校は軌道に

0からスタートした陽光学校は次第に確かな成長を遂げていった。汪校長は程大使と共に在日本中国大使館における8年間の勤務中、その歩みの全てを見届けてきた。大使館のサポートの下、陽光学校の広くて明るい教室には綺麗な机と椅子が設置され、教育設備も次第に整っていった。汪校長と教師、学生が共に努力した結果、同校では規範化された教育制度が構築され、教育のクオリティも向上し続けている。陽光学校の本校には、定期的に北京の重点学校の優秀な教師が派遣され、授業のスピードも中国国内の学校とほぼ同じとなっている。ここ数年は中国へ帰国した学生がスムーズに入学、進学し、優秀な成績を収めているという朗報もしばしば伝わるようになっているという。こうした変化に汪校長は、「祖国の外交官の子供たちに対する関心に感謝している」と述べた。

陽光学校は、「中国人として、祖国を愛し、中国語と中国文化をしっかり学ばなければならない」という思想を子供たち一人一人の心に植え付けている。学生の愛国主義と伝統文化教育を非常に重視しており、カリキュラムや行事を計画する際も各学期に始業式と国旗掲揚を盛り込み、学生たちに国旗や国歌、国の意義をしっかりと理解できるよう配慮している。

少年先鋒隊の隊員たちの首に赤いスカーフを巻く汪婉校長先生(汪婉参事官提供)

陽光学校は、現地の教育資源と融合させることも重視しており、積極的に対外交流を実施している。例えば、大使館は日本の小中学生を招待し、中国文化を紹介している。また、陽光学校の学生も積極的に日本社会にとけこみ、各種活動に参加している。今年4月、同校の学生19人が第4回「大使杯」中国語朗読コンテストに参加し、日本各地の華僑華人の子供199人と朗読の技を競い合った。そして激戦の結果、陽光学校の学生は金賞1つ、銀賞3つ、銅賞1つを獲得した。また同校は毎年6月1日にバラエティーに富んだ「国際子供の日」行事を企画している。今年は、横浜山手中華学校と共同で運動会を開催したという。

しかし、汪校長によると、「今も課題が山積み。例えば、教師が少なく、新しい教材やテキストを手に入れるのも難しく、時間がかかる。テキストは不足している」という。

陽光学校の教室の壁に設けられた故事成語学習コーナー(汪婉参事官提供)

海外に住む中国人の子供たちの中国語教育の不足は深刻な影響及ぼす

海外に駐在する外交官や中国資本機関の職員たちは、海外に住む中国人の子供たちが十分な教育を受けることができなければ、子供の将来や国の持続可能な発展、ソフトパワーの建設などにも大きな影響が及ぶと懸念している。汪校長は以下の3つの影響を指摘している。

1.中国国内の義務教育と足並みをそろえることができなければ、子供の将来に影響を与える。中国の法律は、義務教育を受ける権利は全ての国民にあるとしているものの、その権利は海外に住む中国人まではまだカバーされていない。現在、海外に住む中国人は3つの方法で子供の教育問題を解決している。1つ目は、子供を中国に残して教育を受けさせる方法。この場合、子供が愛情不足となり、家庭における教育も不足するため、子供の成長や安定した家庭という面で悪影響を及ぼす。2つ目は、子供をローカル学校に入学させてローカル教育を受けさせる方法。3つ目は子供をローカルの中国語学校に入学させる方法。2つ目と3つ目は中国国内の教育と足並みをそろえていないため、子供たちは帰国後、その教育思考やスタイルにすぐに適応することが難しくなる。また、中国語の勉強もしなければならず、本来は賢かった子供が勉強についていけなくなってしまい、学校に行くことすら嫌がるようになってしまう子供さえいるという。

2.国のソフトパワー建設や外交の持続可能な発展と国の海外進出戦略に悪影響を及ぼす。中国の経済が発展し、総合的な国力が向上しているのを背景に、特に国が海外進出戦略を実施するようになって以降、海外で外交から教育、経済、テクノロジー、ニュースなど各分野で活躍する中国人が増え、海外に投資する企業も増えている。つまり、子供の中国語教育という問題を抱えている中国人がますます増加しているということでもある。

3.子供たちに中国の心と中国の魂が不足している。これは次の世代にも影響を及ぼし、国の根本的な部分にも影響が出る。汪校長は、「海外に住む中国人の子供というのは特殊なグループで、子供のころから親と共に海外で生活しているため、視野が広く、経験、知識も豊富で、いろんな人と交流して、言語能力とコミュニケーション能力、適応力なども優れている。これは、国際型人材の育成に絶対必要なこと。しかし、彼らは海外の教育しか受けておらず、外国語を流ちょうに話し、思考パターンや価値観も外国式で、中国の心と中国の魂に欠けている」と指摘する。

陽光学校の教室の一角(汪婉参事官提供)

陽光学校の国旗掲揚式の様子(汪婉参事官提供)

中華文化の根を守るため、海外で中国人学校開設が急務

中国の海外進出戦略が実施され、海外では中国企業の従業員を含む中国人が大幅に増加しており、こうした中国人の子供たちの教育問題をいかに解決し、そして全ての中国人に国民教育を実施することが解決が急がれる課題となっている。統計によると、現在、海外の中国企業は約2万社ちかくに達しており、海外駐在員の数は約80万人、中国人留学生は約140万人、華人・華僑は約4500万人に達している。居住地域に中国が設置した学校がないため、子供を現地の学校、時には台湾地区が開設した学校に通わせなければならないというケースが多く、そのため子供たちは中国の言語・文化教育を受けることができず、価値観や人生観にも影響を及ぼすようになっている。

海外に中国人学校を設置することは、中国人の実際の利益、海外の華人華僑の祖国に対する思いや帰属感などの面で非常に重要な役割を果たす。汪校長によると、程大使は以前、第12期全国政協委員として、「海外に中国人学校を設置することについて」という提案を2度と提出した。汪校長は、「日本の中国語学校は、中国人と華僑・華人の中国語教育の需要を満たすことができず、中国国内の義務教育体制とも足並みをそろえていない。在日華人社会では、海外に中国人学校を開設してほしいという声が日に日に高まっている」と強調する。

海外の中国企業の従業員や華人・華僑は、中国政府が一日でも早く学校を開設し、子供たちが中国語や中国の文化を学べるようになり、次世代の祖国に対する思い、団結力が強化されることを切に願っている。また、中国の国際的地位や総合的な実力が向上を続けるにつれ、中国のソフトパワーを強化し、文化強国建設を推進するための重要な手段として中国国際学校を開設するというのは中国政府にとって重要な戦略となるはずだ。

陽光学校の生徒による手書きの研究レポート(汪婉参事官提供)

陽光学校の生徒たち(汪婉参事官提供)

既存の中国語学校では在日華人の需要満たせず

統計によると、現在、日本に在住する中国人、華僑は合わせて70万人以上に上り、うちに90%が新華僑で5歳から15歳までの義務教育段階の子供たちが3万人以上となっている。在日華人華僑は海外で暮らしているものの、心は祖国にあり、自分の子供が正規の中国語教育を受けることを望んでいる。しかし、日本には現在、中国語学校が5校しかなく、全て華僑団体が設置し、うち3校は台湾地区の華僑団体が運営している。在校生は約2000人で、義務教育を受けるべきの華僑・華人の子供の需要を満たすには程遠い状態だ。またこうした中国語学校の教育の目的は日本社会に溶け込むことだ。そのため、小学校の段階では、授業の70%の内容が中国語で、30%が日本語で行われ、中学校になると、70%が日本語で30%が中国語で行われるように変わる。

汪校長は、「華僑と比べると、日本に生活する中国の外交官や中国企業、機関の職員などの子供たちの中国語教育に対する需要に対応することが急務となっている。中国が『海外進出』戦略を実施するにつれ、日本に進出する企業や機関が増え、現在、日本における中国企業は500社以上、在日駐在員は1000人以上となっている。在日駐在員の任期は少なくとも3年から5年で、長い場合は8年から10年のケースもある。こうした中国人の子供たちの中国語教育は、解決が急務の現実の問題だ」と指摘する。

陽光学校の教室の一角(汪婉参事官提供)

また、「中国駐外大使館における陽光学校の開校は、海外の中国人の子供の中国語教育という問題を積極的に解決する新しい方法と有益な模索だ。在日本中国大使館は、陽光学校の規範を進め、経験を積み、メカニズムを整備し、海外に中国人学校を開設するための基礎を固めている」との見方を示した。(編集KN)

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