日本の民泊新法が短期賃貸市場に与えるヒントは?―中国メディア

人民網日本語版    2018年7月10日(火) 6時40分

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日本で6月15日、住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行され、長らくグレーゾーンに置かれていた民泊事業がついに公的に認められることになった。だが新法は施行の2週間前、日本に非常に大きな反響をもたらしていた。資料写真。

日本で6月15日、住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行され、長らくグレーゾーンに置かれていた民泊事業がついに公的に認められることになった。だが新法は施行の2週間前、日本に非常に大きな反響をもたらしていた。経済参考報が伝えた。(文:李海強・文化観光産業のベテランアナリスト)

6月1日、日本の観光庁が発表した通達により、民泊・短期賃貸の事業者は都道府県知事などに届け出て届出番号を取得していない物件の宿泊予約を早急に取り消さなければならなくなった。通達が出てまもなく、日本最大の民泊事業者エアビーアンドビーの物件数は6万2000件から1万3800件になり、約80%減少した。同社は予約を取り消した顧客に対する1000万ドル(約11億730万円)規模の補償制度を創設し、取り消しで発生した費用を補填するとした。また、日本各地で民泊・短期賃貸事業を展開するサイト・途家網は、届出が済んだ物件をサイトに表示し、届出をしていない物件をサイトから消去する作業を6月13日までに終える予定とした。

規範がバラバラの短期賃貸市場に限らず、ますます増加する訪日外国人観光客に宿泊の選択肢をより多く提供することも民泊新法の重要な狙いだ。観光庁がまとめたデータによると、2017年に日本を訪れた外国人観光客は2869万人に上り、5年続けて過去最高を更新した。日本政府は20年には4000万人を誘致するとしており、17年に比べて40%前後の増加を見込む。日本で開催される19年のラグビーワールドカップ、20年の東京五輪が徐々に近づき、民泊が合法化され、勢いよく発展していることは、こうしたイベントの開催時期のホテル不足問題に対処する上でプラスになる。

▽民泊営業エリア緩和、地域ごとに対応異なる

新法の規定によると、日本の不動産所有者は空き物件を部屋単位、または建物単位で宿泊者に貸し出すことができ、宿泊に貸し出せる日数は年に180日まで。先に都道府県知事などへの届出を行わなければならず、地方自治体は各地の状況に基づいてその他のルールを設定することができる。

観光庁と共同通信社の試算によると、6月1日までに日本の各レベル行政区域の3分の1以上が、民泊の営業エリアや営業時間について独自のルールを設けた。東京都新宿区は月曜日正午から金曜日正午までは民泊事業は行えないとし、京都市は住居専用地域での営業は1月中旬から3月中旬までに限定し、さらに管理者が800メートル以内に常駐していなければならないとした。岡山県倉敷市の美観地区は、環境と周辺の歴史的・文化的建造物を保護するため、年間を通じて民泊の経営を禁止した。

注目されるのは、民泊新法を厳格に徹底的に実施するため、違法な民泊経営を行った不動産所有者または民泊事業者は違法行為が発覚すれば営業停止処分と100万円の罰金が科されるようになったことだ。これまでの3万円以下から約33倍上昇した。京都市や大阪市は民泊専門の作業チームを発足させ、違法な経営を行った施設を閉鎖し、所有者に合法的な経営について教えるなどの方法で新法が着実に実施されるようにしている。

▽長期賃貸市場にも影響、新法で民泊事業の禁止のハードル上がる

民泊新法は営業エリアを拡大し、物件の面積について特別な要求をしないといった規定を通じて短期賃貸物件の申請のハードルを引き下げた。民泊事業者は所在地の都道府県庁で登録し認可番号を取得しなければならないが、新法によって生じた最大の問題は民泊利用に適切とされる物件のタイプが定まっていないことだ。エアビーアンドビーの短期賃貸物件に対し、建物のオーナーと長期賃貸利用者が常に恨めしく思うのは、すぐ隣の部屋が自分の許可なしにホテルの部屋のように貸し出されていることだ。新法にはこうした問題を解決する具体的な条項はないが、日本の国土交通省はコミュニティーでの民泊営業を禁止する不動産オーナー協会に対し一連の指導原則を制定するよう求めた。

だが新法は半年程前に制定されたばかりで、協会の多くは指導原則についてあまりよく理解していない。これまでの法律では、協会は書面での通告なしに、コミュニティーでの民泊事業を禁止できた。だが新法施行後は、新たな条項を協会のルールや制度に加えるとともに、会員の4分の3以上の賛成を得られなければ法的効力をもてなくなった。現在のような民泊事業が盛んに行われる状況で、短期賃貸事業や民泊事業が市場規模のより大きなマンションコミュニティーに進出するのを阻止することはかなり困難だといえる。

また、長期賃貸市場で経営を行う事業者は民泊の方が収益が大きいことに気づき、将来はより多くの物件の管理プラットフォームが民泊事業の仲間入りを果たすとみられる。たとえば20万戸以上の物件を有する日本の大手不動産賃貸物件仲介企業のアパマンショップは、今年3月に民泊の登録管理プラットフォームに登録した。実際、政府も民泊の短期経営を奨励して、日本のますます拡大する空き室・空きビル問題を解決しようとしている。こうした物件は借りる人が徐々に減って、長い間空室になっているケースが多い。

▽エアビーアンドビーは民泊新法を歓迎、未来の成長チャンスもたらす

短期賃貸大手エアビーアンドビーは世界に500万件の物件を擁し、営業を展開する国での民泊関連法の制定は同社と密接な関わりをもっている。アジア・太平洋地域の2大重点市場の1つである日本も例外ではない。データによると、16年に同社のプラットフォームで泊まる部屋を予約した観光客は370万人に達し、訪日外国人観光客の約15%を占めた。届出が済んでいない違法物件の予約キャンセルの通知を受け取ってすぐにキャンセルを実施したこと、1000万ドルの補償制度を創設したこと、オーナーに届出を呼びかける通知を送り、専用サイトを開設して届出から許可までバックアップしていることなどなど、こうした努力は同社が不動産のシェアリング事業を合法化した民泊新法を歓迎する姿勢の現れであり、また日本市場をどれほど重視しているかを物語るものだ。

より重要なことは、民泊新法によって短期賃貸・民泊産業が法律のグレーゾーンを抜けだし、ホテルと対等の合法的な立場で公平な競争を展開できるようになったことだ。同社はニューヨーク、パリ、バルセロナ、サンフランシスコなどの都市で現地の政府やホテル業界団体と激しくやり合った後、こうした法令のもたらす未来の成長のチャンスの方により注目するようになった。ここから明らかなことは、これから日本政府や各地方自治体のルールに厳格に基づいて民泊を運営すれば、同社がホテル業界から違法ではないか、脱税しているのではないかといった疑いをかけられていた問題が一挙に解決できる。

日本市場に対する信頼感の高まりを踏まえ、同社は新法の施行に先立って東京、大阪、京都で選りすぐりの物件「エアビーアンドビープラス」を打ち出した。また、日本の多くのエリアでプラットフォームを通じてオーナーの問い合わせに応じ、オーナーの所有物件の届出をサポートする、物件の写りのいい写真をアップする、営業をバックアップするなどしている。激しい競争環境に直面して、6月13日には日本のサプライヤー36社と提携して「エアビーアンドビーパートナーズ計画」も打ち出した。

日本の民泊新法実施が民泊・短期賃貸産業に新たな発展チャンスをもたらすことは間違いなく、この市場の規範化について他国にサンプルを提供することにもなる。ハードルは下がった。だがさまざまな制限やルールが多く、今のところ民泊の届出には期待したほどの積極性がみられない。マンションなどの住居地域で短期賃貸を営業すると発生する騒音、ごみ、セキュリティーの問題は住民からしばしば苦情が出される問題であり、短期間での解決は難しいとみられる。(提供/人民網日本語版・編集/KS)

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