<直言!日本と世界の未来>日本と日本企業に求められる「反保護主義」の役割―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2018年7月1日(日) 5時0分

拡大

「米国第一主義」を掲げるトランプ米政権は保護主義的な傾向が強い政策を次々に発動している。こうした中で、日本と日本企業には反保護主義の旗手としての役割が求められている。   

米国第一主義」を掲げるトランプ米政権は保護主義的な傾向が強い政策を次々に発動している。こうした中で、日本と日本企業には反保護主義の旗手としての役割が求められていると思う。 

 

トランプ米大統領が仕掛けた関税引き上げなど保護主義的な政策は世界的な貿易摩擦を誘発し、世界景気にマイナスの影響を及ぼしている。6月中旬に、中国からの輸入品500億ドルに25%の追加関税を賦課すると公表したのに続いて、18日には2000億ドルの輸入品に10%の制裁関税を課すことの検討を指示。中国政府はこれに対抗、米国製自動車や農産物などに同規模の報復関税を課すと発表した。欧州連合(EU)、カナダ、メキシコなども報復措置を表明しており、世界の貿易数量の減少が懸念される。

保護主義が蔓延すれば、やがて世界経済は行き詰まり、日本も打撃を受ける。

グローバル化が進展している世界では、消費者は相互貿易を通じて繁栄を享受している。企業はサプライチェーン(供給網)でつながっており、米国が「一国至上主義」に基づいて保護主義的な政策を推し進めれば、世界経済の発展を阻害する。トランプ大統領の保護主義的な政策に対し、米国内の製造業や農業関係者、消費者からも、反対の声が上がっている。

こうした中、資源に乏しい貿易投資立国・日本の政府と日本企業は率先して「グローバリズム」の灯を高く掲げるべきであろう。

日本企業は、投資家をはじめ企業を取り巻くあらゆるステークホルダー(利害関係者)が、企業を正しく評価し、資本市場をはじめ、労働市場、消費者市場が有効に機能するよう、自らの企業使命の明確化とその達成のためのコーポレートーガバナンス(企業統治)原則を策定・公開し、世界市場にアピールしていくことが重要である。

 

企業が心掛けるべきは、企業は自らの使命を再確認し、今後の事業の中核となるコアコンピタンスを再確立するとともに、それに向けて分権化、分社化、M&A(企業の合併・買収)などあらゆる戦略・手法を駆使して自らの企業構造の再構築を推進することである。

 

さらに経営の意志決定システムの効率化とスピード化である。今や半年で急激に状況が変わると言われる時代にあって、企業は即断即決、臨機応変に変化に対応することが求められる。そのためには経営の意志決定システムの効率化とスピード化を図ることである。その対応策としては執行役員の分離や取締役会、監査役会の強化と経営からの独立性の確立が求められる。

国際市場の中で、企業として自らの企業使命とその実現のためのコーポレートーガバナンス原則を明確化し、経営トップから社員まで共有化するとともに、その情報を市場や社会にアピールし、ヒトーモノーカネ・技術・情報などあらゆる資源調達とその効率的な運用を促透し、経営のパフォーマンスを向上していくこと、それが今後の企業改革のポイントであると言えよう。

トランプ氏は歴代大統領としては異端で、日本を含め各国が翻弄されているが、米国には自由主義と民主主義のよき伝統がある。やがて本来の姿を取り戻すことが期待される。日本と日本企業には冷静かつ地道な対応が望まれる。

<直言篇54>

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携