<コラム>中国人が出場していないW杯に熱くなる理由、日中こどもスポーツ交流のススメ

北村愛子    2018年6月30日(土) 1時20分

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先日、久しぶりに上海に行ってきました。上海滞在中、町中で盛り上がっていたのがサッカーワールドカップ。写真はサッカーワールドカップロシア大会のポルトガル対スペイン。

先日、久しぶりに上海に行ってきました。といっても1年半ぶりでしたので大きな変化は感じませんでしたが、日本は連日の雨だったのに上海では連日の30度越え。梅雨のない上海で毎日、気持ちよく過ごすことができました。

さて、上海滞在中、町中で盛り上がっていたのがサッカーワールドカップ。テレビをつければ世界杯(中国語でワールドカップという意味)特集番組、街中のレストランでは世界杯にちなんだプロモーション。日本と1時間の時差である中国ではロシアで開催されているワールドカップの試合がちょうど夜8時くらいからスタートするので、スポーツバーと言わず、どこのレストランでも食事をしながら生中継を見ることができました。

なかでも注目を浴びたグループBの初戦ポルトガル対スペイン。中国でも人気の高いクリスティアーノ・ロナウド擁するポルトガルと最近、ヴィッセル神戸への超大型移籍で話題となったアンドレス・イニエスタ擁するスペインの強豪同士の試合。中国では深夜2時にスタートしたにも関わらず、多くの方が観戦したようで、翌朝の昼食時には賭け事好きな中国人がいくら勝った、いくら負けた、の話で大盛り上がりでした。

中国では自国が出場していないにも関わらずなぜこんなにもサッカー熱が高いのかといえば、中国のプロスポーツには、お家芸である卓球NBAで活躍した姚明で有名なバスケットボールがありますが、日本のプロ野球のように娯楽として観戦を楽しむスポーツが少ないことがあげられます。

また、現在の国家主席である習近平が大のサッカーファンで、2017年の全人代では国策として中国サッカーを強化し、教育現場での普及や選手育成を推進すると発表したことは皆さんご存知だと思います。

こうした政府公認の後ろ盾もあり、中国のプロサッカーリーグには多くの著名外国人選手が流入し、子ども向けサッカークラブも増え、中国サッカー全体を盛り上げているのです。

また、上海や広州の沿岸部に住むママたちは幼少期のスポーツが心身の健康のみならず、脳の発育にも良いと聞き、勉強だけでなくこうしたスポーツにも興味をもち、放課後や週末に郊外で開催していサッカークラブに子どもを入れ始めていると聞きました。

上海に住む日本人の友人ママいわく、彼女の子どもが通う週末のサッカークラブには以前は日本人か欧米人しかいなかったのが、最近では中国人の子どもが多く参加しているというのです。

ちょうど、上海出張に出かける前に、中国人の友人から香港の小学生と日本の小学生の野球交流を実施したいと相談を受けました。香港では野球の人気が高く、日本でも少年野球が活発なので、スポーツを通じたスポーツツーリズムを進めていきたいのだと言っていました。

確かにスポーツ交流には言語は必要なく、スポーツマンシップのもと、お互いを尊敬しあう気持ちが生まれます。また、スポーツの世界の精神論(日本ではいろいろと騒がれていますが)、つまり挨拶に始まり、時間を守る、先輩後輩の上下関係やボール磨きやグラウンドなどの清掃等々、スポーツ以外にも人間関係や礼儀を学ぶこともできます。中国の子どもたちは甘やかされて育ち、我慢ができない子どもたちが多いのでスポーツは我慢を覚えるのにちょうど良い場とも言えます。もちろん、チーム競技ならば将来社会に出て、人と一緒に仕事をする上で重要なチームワークも自然と学ぶことができます。

元日本代表監督・岡田武史氏が中国のサッカーチームで1年間チームの指揮をとった時、「中国人選手が練習時間に遅れてきたり、練習中に携帯をいじったりとサッカーに真剣に向き合っていない」という話を帰国後にしていたことを覚えています。

中国人の友人いわく、それは日本と中国の指導者レベルが異なる事。そして何より子どもたちを取り巻く環境が異なるからだと言っていました。

つまり日本では幼稚園から入れるスポーツ少年団があり、小学生になると本格的にスポーツに家族で向き合い、毎週末のように朝から晩まで開催される練習や練習試合に親も一緒になってついていく。中学、高校でも部活でスポーツに励むことができるが、中国では勉強第一で、そもそもほとんどの学校にクラブ活動はなく、勉強がおろそかになればすぐにスポーツを辞めさせてしまう。というのです。

確かに外的な環境は大切だと思います。しかし青年期に入ってスポーツを続ける環境がなくとも、幼少期にスポーツを通じて学んだ精神は一生子どもの心に良い影響を残すのでないかと思うのです。

夏休みや冬休みなどの長期休暇を利用し、中国から日本のサッカーや野球、バスケットボールなどのスポーツ少年団との合宿を通した交流は単なる日本旅行以上に中国人の親子に目に見えない学びと大きな収穫を与えてくれるかもしれません。また、国際交流の機会が少ない地方の子どもたちにとってこうした機会は貴重な体験となりますし、商業的にも中国人チームが滞在することで一定の経済効果も見込めます。

また、小学生交流の良いところは、ところどころで保護者も入った交流が可能なところです。以前から話しているように、子どもだけでなく親を巻き込んで生身の交流をすることで、お互いの国への愛着が強まります。

つまり、幼少期の親子交流こそ、長期的な視野では対日、対中への好感度を高める効果的な方法であり、今後の日中関係を構築していくうえで重要なポイントになるのです。インバウンドにおける子どもスポーツツーリズム。今後、日中こども交流会でも積極的に支援していきたいと思っています。

■筆者プロフィール:北村愛子

1976年静岡県西伊豆生まれ。大学時代に1年間交換留学で上海、その後仕事で3年半、上海に滞在。日本帰国後、中国人社長の秘書兼広報として約10年勤務。2016年4月に友人の中国人向けお買い物アプリの立ち上げに参画し、現在に至る。

■筆者プロフィール:北村愛子

1976年静岡県西伊豆生まれ。大学時代に1年間交換留学で上海、その後仕事で3年半、上海に滞在。日本帰国後、中国人社長の秘書兼広報として約10年勤務。2016年4月に友人の中国人向けお買い物アプリの立ち上げに参画し、現在に至る。

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