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<コラム>中国に現存する日本の神社、敗戦後に壊されなかった謎

配信日時:2018年6月26日(火) 19時10分
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中国江蘇省南京市の地下鉄1号線の珠江路駅を降りて西、南京市鼓楼区五台山1号五台山体育中心東側に、南京神社参拝殿(祭神:天照大神)が現存する。写真は筆者提供。
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1937年(昭和12年)7月7日の日中戦争勃発後の12月13日は、南京大虐殺記念日として毎年大々的な政治イベントが開催され、その関係もあるのか揚子江デルタに進出する日系企業は省都にも関わらず極めて少ない。南京市は古くから長江流域・華南の中心地であり、三国時代の呉・東晋、南朝時代の宋・斉・梁・陳、十国時代の南唐やその後の明といった王朝、近年では中華民国政府首都ともなった。現在は江蘇省都である。

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地下鉄1号線の珠江路駅を降りて西、南京市鼓楼区五台山1号五台山体育中心東側に、南京神社参拝殿(祭神:天照大神)が現存する(写真1)。拝殿部は木造で、幣殿と本殿はコンクリートで結合・改装されている。西側石垣には消えかけているが、昭和17年と読める礎石がある(写真2)。設計者は高見一郎、1939年10月6日に日本軍総司令部着手、奉斎会理事会で本営趣意書発布。1941年5月2日護国神社(日本軍人戦没者を祀る)が先に工事着手、南京神社は1941年10月に着手した。護国神社の西隣が南京神社となった。1943年11月鎮座祭、翌1944年竣工(敷地2万9000坪)となった。南京護国神社が主体であったので、社務所は護国神社参道側にある(写真3)。

現在永慶巷から体育賓館大門までの体育館路が南京神社参道であり、この延長の永慶巷出口に一の鳥居はなく、現在は軍関係施設で内に入ることはできない社務所南面から左斜めに参道があり、永慶巷に交わる位置(上海路に近い)に一の鳥居があったようだ(写真4の赤点線が参道を示す)。江蘇体育賓館大門に二の鳥居があったといわれるが、社務所側にもあったのではないかと予想する。鳥居は高さ10メートル、幅6メートルの明神鳥居型であった。社務所側に二の鳥居があったと仮定すると、参殿前の2カ所とあわせ5カ所に鳥居があった事になる。また、参拝殿前の鳥居は戦後もしばらくは存在した。

付近の方に聞くと、南京神社は「大廟」と言い、50メートル離れた社務所は「小廟」と言っているが、小廟は本来南京神社東横にあった護国神社のことである。南京神社拝殿・幣殿・本殿は体育局老干部活動中心として卓球運動員訓練場として使われた。現在は五台山1号建築-1として江蘇省建工集団第七建築公司となり、社務所は五台山1号建築-2(日本神社旧跡)として体育局老同士之家となっている。(写真4)の五台山南京神社は、神社周辺の航空写真を基に現在・過去の写真を重ねたものである。

1945年終戦後、南京神社は国民党「中国抗戦陣亡祈念堂」、護国神社は戦利品陳列館となり、解放後は江蘇省体育局管轄となった。もともと日本神社構想の前に、体育場構想があったので、もとに戻ったとも言える。付属建屋の多くは、その後1982年ごろまでには切除された。

松本康隆「日本の敗戦後における旧南京神社の歩み」に、建築学的見地から南京神社について詳細な記載がある。又、何故に社殿が壊されなかったかの疑問に対し、(1)戦後国民党軍が戦没者慰霊堂として英霊を祀るという機能的類似性、(2)開放後は体育施設として利用可能な建築遺産となった、(3)その後歴史的建築遺産としての価値の3点を示唆している。ただ、(2)(3)の経緯の間に文化大革命という悲惨なる歴史があり、破四旧運動(古い思想・文化・風俗・習慣の打破)で一番先に破壊されるべき日帝の遺産に手をつけなかったのは、当時非常に利用価値が高かった(練習場や集会所として使ったか)と思われる。

同じく山東省シ川神社(シ=さんずいに緇の糸なし)本殿もコンクリート造りであったがため、利用価値が高く残ったと思われる。ただ、利用価値としては少なく宗教的意味合いのみが強い鳥居が、長春神社と瀋陽(奉天)の文官屯神社跡にあるのは、何故か。教育の場(幼稚園や大学構内)として切除が避けられたのか、疑問が多く残る。この暑い初夏の日、南京神社参拝殿前で二礼・二拍手・一礼の儀式に則り参拝をしたが、違和感はなかった。

■筆者プロフィール:工藤 和直
1953年、宮崎市生まれ。2004年1月より中国江蘇省蘇州市で蘇州住電装有限公司董事総経理として新会社を立上げ、2008年からは住友電装株式会社執行役員兼務。蘇州日商倶楽部(商工会)会長として、日中友好にも貢献してきた。

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