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<日本人が見た中国>「すいません」でお願いごとを詫びる日本人、「ありがとう」でお願いごとを通す中国人

配信日時:2012年5月8日(火) 14時8分
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中国に11年ほど住んでいる私は、たまに日本に帰ると日本人の礼儀正しさやサービス、良心的なホスピタリティーに関心させられる。資料写真。
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※中国に渡って10年超。現在、「中国で最も有名な日本人俳優」と称される矢野浩二氏による特別提供のコラム。

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私は中国に11年ほど住んでいる。たまに日本に帰ると、日本人の礼儀正しさやサービス、良心的なホスピタリティーに関心させられる。

日本人がついつい口癖のように言ってしまう「すいません」や「面倒をおかけして申し訳ない」。これらの言葉は、仕事や留学で日本にいる中国人が最も溶け込めない部分ではないだろうか?日本人の「すいません」はただ「すいません」だけの意味とは違う。時には「ありがとう」という謝意が加わる。しかし、一般的な中国人から見れば、頻繁に「すいません」と言われると逆に「遠慮し過ぎだよ」「他人行儀だな」「なんとなく距離を感じる」といった受け止め方をする。

私も北京に来た頃はよくお辞儀をしていたし、「すいません、すいません」を連呼していた。さすがに最近は腰から曲げるようなお辞儀はしなくなったかもしれないが、自覚があるわけではないので、軽い会釈程度はしているかもしれない。

ある晩、近くのコンビニで買い物をした帰り、マンション入り口の警備員がいつものようにドアを開けてくれた。私はつい軽い気持ちで「シエシエ(ありがとね)」と言った。すると、警備員はいきなりわたしの行く先を遮り、「あんた、何階に行くんだ?」と問い詰めた。この態度の急変は何を意味しているか、分かるだろうか?警備員が私のためにドアを開けてくれたことに対し、私が黙っていれば何もなかったはずなのだ。しかし、顔なじみの住人ならば言わないはずの「ありがとう」を言ったがために、その警備員は私を“よその者”と認識したのだ。かぶっていた帽子をとって会釈をしたら通してくれた。

日本人的な発想からすれば理解しがたい部分ではあると思うが、「ありがとう」と言わなくてもよいシチュエーションというものが、中国には歴然として存在している。言うほどのものでもない「ありがとう」。もちろん、必要な「ありがとう」もある。

例えば、飛行機内で食事をとる時、前方の人が座席シートを後ろに下げる。狭くなって食事しづらい。前の人にシートを少し戻してもらいたい。この場合、日本人はおそらく「すいません、シートを少し戻してもらえますか?」となるだろう。こちら側の願いを相手に聞いてもらっている、という気持ちから「すいません」という言葉が出る発想は理解できるし、日本的な低姿勢はけっして悪い事ではない。しかし、中国ではこのようになる。「シートを少し戻してください、ありがとう!」つまり、「聞き入れてもらえることを前提にしたお願い+それに対する感謝」となる。

中国人は人にお願いをするとき、相手が受け入れるか受け入れないかに関わらず、まず先に「ありがとう」という。欧米圏でも例えば、「お待たせしてすいません」を「Thank you for waiting」と言うことがあるが、どこか似ているかもしれない。先に「ありがとう」と言われれば、相手は受け入れざるを得ないという暗黙の了解だ。少し強引に見えるが、これに関しては中国式の方が痛快で気持ちよさを感じる。人にお願いするわけであるから、むしろ率直に「ありがとう」でよいように思う。

日本で長年の習慣として身についた言葉、そして条件反射のように常に口にしていた「すいません」は、今ではほとんど「ありがとう」に代えて使う機会が多くなった私だが、「ありがとう」の中に「すいません」の意味を込めて使うようにしている。

●矢野浩二(やの・こうじ)

バーテンダー、俳優の運転手兼付き人を経てTVドラマのエキストラに。2000年、中国ドラマ「永遠の恋人(原題:永恒恋人)」に出演し、翌年に渡中。中国現地のドラマや映画に多数出演するほか、トップ人気のバラエティー番組「天天向上」レギュラーを務める。現在、中国で最も有名な日本人俳優。2011年、中国共産党機関紙・人民日報傘下の「環球時報」主催「2010 Awards of the year」で最優秀外国人俳優賞を日本人として初受賞。中国での活動10年となる同年10月、自叙伝「大陸俳優 中国に愛された男」(ヨシモトブックス)を出版。

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