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<羅針盤>“万国共通語”音楽の力で世界平和を=AI時代でも褪せないナマ音の魅力―立石信雄オムロン元会長

配信日時:2018年6月3日(日) 5時10分
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音楽は万国共通語であり、この世界に国境はない。 AIやロボットが活躍する世界が到来しても、人間が紡ぐ歌や音楽に置き換わることはできない。生の音(おと)はさらに貴重なものになると考える。

近年AI(人工知能)とロボット技術の世界は目覚ましい進歩を遂げており、AIが将棋や碁の世界で一流プロを凌駕するケースも出ている。今後10〜20年で、今存在するさまざまな仕事が自動化され、人間の仕事の領域が狭まるとも考えられている。

音楽の世界でも、音響技術が急速に進歩し、臨場感のある迫力や艶やかな音色に驚くことが多い。最近ではAIスピーカーなるものまで登場。インターネットに常時接続され、話しかけることでAIの音声アシスタントと対話できるという。

しかし、何ごとも生(なま)の迫力に勝るものはない。ソプラノ、メゾソプラノ、テノール、バリトンなどの朗々とした声や、ピアノ、ヴァイオリン、フルートなどの繊細な音色も、直接劇場で聴いてこそ心に迫り、感動を呼ぶ。音楽は人々の心を豊かにする。老化予防にも効果があるとされ、人々の生きがいを向上させることができる。AIやロボットが活躍する世界が到来しても、人間が紡ぐ歌や音楽に置き換わることはできない。生の音(おと)はさらに貴重なものになると考える。

音楽は万国共通語であり、この世界に国境はない。かつて、ワシントンでの国際会議のあと、時間をつくってナショナル交響楽団を楽しんだ。コンサートホールは、あの桜で有名なポトマック川沿いにある軍艦のように大きなJ・F・ケネディセンターの中にあった。ちなみにこのケネディセンターの名誉会長にはブッシュ、レーガン、カーター、フォード、ニクソン、ジョンソンといった歴代の大統領夫人が名を連ね、多くの財団、企業、個人からの資金で運営されている。その層の厚さにさすがに米国という感を持った。

この時のコンサートはチヤイコフスキーの壮大な「戴冠式」で始まり、同じく「ピアノ協奏曲第一番作品23」「ロココによる主題の変奏曲」ラベルの「ラプソディー」と続いた。指揮者はロストロポピッヂであった。ソルジェニーツィンを擁護したことで旧ソ連から追放され米国に亡命、今でも人権主義者としても有名である。ときに繊細にタクトを振り、ときにはのけぞらんばかりに両手を振り回すジェスチャーに何か祖国への何か祖国への熱き想いを訴えているように感じた。

曲が終わると、たび重なるカーテンコールごとにその曲での主役を演じた団員の人たちに自ら握手を求める心配りや感性の豊かさ、その指揮者への畏敬と敬慕の入り混じった団員のまなざし等、その醸し出す雰囲気に私自身熱いものを禁じ得なかった。

 

またピアノはキューバ生まれのアメリカ人、チェリストはブラジル人、バイオリニストはアルゼンチン人、団員の申に日本、中国、韓国の人たちの名前もある。これこそ国境超えて創り出すハーモニーなのだ。

世界で地域紛争が多発し、その犠牲者の悲しいニュースが絶えない昨今、世界各国の音楽家が、シンフォニー21C(センチュリー)「世界の平和」を奏でる日が一日も早く来てほしいものである。

AIやロボットが主役で人間が脇役になる世界は人間の尊厳を否定することになりかねない。人間のみが持つ感性を生かして音楽、舞踊、演劇、美術や文学など芸術を自らつくり楽しむことが必要ではないでしょうか。

<羅針盤篇27>

立石信雄(たていし・しのぶお)

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC=企業市民協議会)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。公益財団法人日本オペラ振興会常務理事。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄
1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。SAM「The Taylor Key Award」受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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