武田薬品が6兆8千億円でアイルランドのシャイアー買収、消化しきれるか?―中国メディア

人民網日本語版    2018年5月21日(月) 18時10分

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製薬業界で日本最大手の武田薬品工業はこのほど、総額460億ポンドで、アイルランドの製薬大手・シャイアーを買収することで合意したと発表した。日本企業のM&Aとしては過去最高額で、製薬業界ではここ10年で3番目に大きな規模の買収となった。資料写真。

製薬業界で日本最大手の武田薬品工業はこのほど、総額460億ポンド(約6兆8000億円)で、アイルランドの製薬大手・シャイアーを買収することで合意したと発表した。日本企業のM&Aとしては過去最高額で、製薬業界ではここ10年で3番目に大きな規模の買収となった。経済日報が伝えた。

近年、多くの製薬会社がシャイアーとのM&Aを試みてきた。例えば、2014年、米国のバイオ医薬大手アッヴィが約540億ドルで買収することで合意し、本社の英国移転を計画したが、企業税回避目的と見なした米政府の税制変更で破談となった。アッヴィがシャイアーの買収失敗から4年たち、今度は武田薬品が買収に乗り出し、5度の買収額引き上げを経て、ようやく買収の合意に至った。

武田薬品はなぜこれほどの大金をはたいてまで買収にこだわったのかという点については、製薬会社のM&Aにおいてしばしば動機となるいくつかの目的があるが、今回の買収においても、そうした要素を見てとることができる。まず、買収によるイノベーション能力の向上。シャイアーの主要業務は活動過多や眼球乾燥症、出血性疾患、ファブリー病、ゴーシェ病など希少疾患に関する医薬品の開発・製造となっており、そのバイオ医薬品の研究・開発能力は世界でトップクラス。希少疾患は世界の医薬品産業で最も成長のポテンシャルが高い分野の一つとみられている。シャイアーを買収することで、武田薬品が世界の希少疾患用薬品の市場で大きな影響力を手にするようになるのは明らかだ。次に、「パテントクリフ」の回避。パテントクリフとは、新薬に関する特許が切れたあと、後発医薬品(ジェネリック)の進出によって売上が激減することを指す。医薬品業界では、新薬の特許権存続期間は20年ほどだ。特許権存続期間中、特許を持つ企業はそれを使って巨額の利益を確保することができる。しかし、特許が切れると、他の製薬会社が一斉に後発医薬品を発売し、その企業の売り上げや利益は激減することになる。統計によると、売れ筋の薬の場合、特許が切れると、その売り上げはほとんどの場合、特許期間中の70%にまで激減する。武田薬品は今まさにこの問題に直面している。近年、武田薬品が開発した薬品の特許が次々と期限切れになっており、「パテントクリフ」の危機が高まっている。また、研究開発チェーンにおいてポテンシャルの高い後続新薬品も少なく、業績の成長を牽引する力がなく、業績を右肩上がりにするために、武田薬品は買収という策に出たとみられている。

しかし、今回の買収により前途が開けたという訳では決してない。なぜなら医薬品業界の買収につきもののリスクが今回の買収にも明らかに存在しているからだ。市場も今回の買収に対してはネガティブな反応を見せ、最近、武田薬品の株価が右肩下がりになっている。

一番大きな問題は資金の問題だ。08年、武田薬品は、米国バイオ医薬品会社・Millenniumを買収し、買収戦略により自社商品の世界市場におけるカバー率拡大を試み始めた。そして、11年以降、武田薬品は毎年1、2件のペースでM&Aを実施しているものの、その額はいずれも20億ドル(約2000億円)以下で、資金規模はそれほど大きくなかった。しかし、今回の買収に必要な資金は約6兆8000億円と巨額で、武田薬品にとっては大きな負担となる。あるアナリストは、「武田薬品の17年第4四半期(10−12月)時の現金・現金等価物はわずか43億ドルで、200億ドル以上の現金を支払うために、多額の資金を借りなければならない」と分析している。米格付け会社S&Pグローバル・レーティングは、武田薬品が債務削減の対策を講じないのであれば、シャイアー買収による財務負担は、買収により得られる良い影響を上回ることになるだろうと予想している。

2つ目の課題は2つの企業、特に研究開発の力をいかに統合するかだ。海外メディアの報道によると、今回の買収により武田薬品の執行チームは、「2つの企業の研究開発チームを統合し、世界的に影響力を持つ研究開発連合に発展させたい」としている。武田薬品の研究開発責任者・アンディ・プランプ氏は、「研究開発の面の統合の準備はできている。今回の買収が大きな変革の機会だと信じていないのなら、当社は買収には乗り出さない。シャイアー買収は当社にとって戦略的意義があると信じている」との見方を示している。

3つ目の課題は、買収相手がもたらすリスクだ。例えば、内部管理がうまくいかなかったり、商品の売れ行きが思うほど伸びなかったりすることだ。これまでの日本の製薬会社が実施した海外企業の買収を見ると、成功例はほとんどなく、失敗したケースの方が印象深い。例えば、08年、製薬会社・第一三共が46億ドルでインドの製薬会社・ランバクシー・ラボラトリーズを買収し、インドで過去最大の上場企業の海外企業による買収劇となった。しかし、買収完了後、インドにあるランバクシー・ラボラトリーズの複数の工場で品質管理の問題が立て続けに明るみになり、米国の食品医薬品局(FDA)は同社の薬品の輸入を禁止し、株価は大暴落となった。最終的に、その買収に失敗した第一三共はインドの製薬会社・ファーマシューティカル・インダストリーズにランバクシー株を売却している。(提供/人民網日本語版・編集/KN)

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