<在日中国人のブログ>対北朝鮮で日本は「蚊帳の外」?いや、むしろ日本を見習うべき

配信日時:2018年5月28日(月) 20時30分
対北朝鮮で日本は「蚊帳の外」?いや、むしろ日本を見習うべき
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北朝鮮問題に関して「蚊帳の外」と批判された日本だが、筆者も含めて、北朝鮮の交渉術の裏を読み、ペースを握られずに目的を達成できたのは日本だけと思い始めている。写真は北朝鮮。
この2、3年、世界で一番注目を集めている80後(80年代生まれ)は、北東アジアの大物政治家である金正恩氏だろう。ミサイルを次々と打ち上げ、アメリカのトランプ大統領と海を隔てて舌戦を繰り広げ、トランプ氏から「Rocketman」と呼ばれた。

ところが、今年は一変し、国際外交の風雲児となった。そのニコニコした笑顔とボリュームのある姿が中国に現れただけでなく、朝鮮半島の南北軍事境界線の板門店にも姿を見せた。

板門店での南北首脳の握手は世界中のメディアが伝え、日本は朝からテレビ中継していた。世界でどのくらい人がこの模様を目にしたのか?どれだけの人が今後の展開に期待したのか?韓国文在寅大統領は朝鮮半島問題の解決に向けて、どんなメッセージを発信したのか、さまざまな考えが頭をよぎったが、報道は「感動、涙、祝い」がメーンだった。

テレビでは感動に涙する韓国の記者の姿も映り、南北首脳会談は始終感動の雰囲気に包まれていたが、筆者は感動を覚えることはなかった。北朝鮮の庶民が恐怖と飢餓のない環境の下で過ごせるよう、良い方向に向かうことを期待した。

板門店の勢いそのままに6月の米朝首脳会談で核やミサイル問題解決で前進するかと思われたが、金正恩氏にとって駐韓米軍は目の上のこぶで、米韓軍事演習に不満を漏らし、トランプ大統領は米中首脳会談の中止を発表した。

北朝鮮問題に関して「蚊帳の外」と批判された日本だが、筆者も含めて、北朝鮮の交渉術の裏を読み、ペースを握られずに目的を達成できたのは日本だけと思い始めている。

2002年、当時の小泉首相の訪朝とさまざまな交渉を経て、5人の拉致被害者が日本に帰還した。当時帰還したのは地村夫妻と蓮池夫妻、曽我ひとみさんの5人だった。

地村夫妻と蓮池夫妻はいずれも北朝鮮の工作員に縛られ船で北朝鮮まで拉致され、曽我さんは19歳の年に母親と一緒に拉致されたが、北朝鮮に到着したのは曽我さんだけだった。帰還した5人は北朝鮮での境遇は良い方だといわれている。地村夫妻と蓮池夫妻は旦那さんが朝鮮労働党に勤め、曽我さんはアメリカ人兵士と結婚したため、いずれも特別な待遇があったという。5人は北朝鮮に仕事があり家族も住んでいたため、当初は一時帰国で北朝鮮に戻る予定だったが、最終的には日本に残ることとなった。

日本が一時帰国の拉致被害者を送り返さなかったことに北朝鮮側は激怒し、マスコミなど通じて日本を批判したが、日本側は冷静に対朝交渉を重ね、同時に国際社会に訴え続けた。拉致被害者5人の帰還から2年後、交渉の末に拉致被害者の家族は日本に帰国した。

当時、日本政府が5人の拉致被害者を日本に留めたことに対し、「あまりに冒険的」と反対する声もあり、家族を心配し北朝鮮に戻りたいと語る拉致被害者もいたが、日本政府は応じなかった。筆者も当時のニュースを見て、「5人は家族と会えなくなるのかな…24年前に拉致され日本の家族と離れ離れになったのと同じように、またも悲劇が起こるのか」と悲しんだことを良く覚えている。

しかし今思い返してみると、日本政府の当時の决断は英断だったと思う。日本は北朝鮮のやり方を研究したことで北朝鮮の思惑を読むことができ、受け身になることなく北朝鮮のペースを乱すことに成功したのだと考える。

時間はかかったが、上述の5人の拉致被害者とその家族は日本に帰ることができ、政府とふるさとの協力のもとで新しい生活を始めることができた。

北朝鮮側は5人の帰還で拉致問題に終止符を打ちたいとの思惑があったのだろうが、日本はそれに応じず、拉致問題は未解決として、北朝鮮に対し曽我さんの母親の行方や、他の拉致被害者の帰国を求め続けている。

北朝鮮との付き合い方において、冷静に判断し、約束を破ってでも自国民を恐怖から守る勇気のある日本のやり方、韓国にとっても参考になるのではないだろうか。

■筆者プロフィール:雪田
中国北京市生まれ、名古屋在住。北京航空航天大学卒、宇宙開発の研究院で修士号を取得。1990年代に来日し、IT業会社に勤務。現在は語学塾を経営する傍ら、市民グループなどで中国関係の講座をしたり、フリーライターとして日本のことを中国の雑誌などで紹介している。
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