<コラム>「セクハラ」問題にも通じる…女性記者だった私が会社を辞め中国に行った理由

配信日時:2018年4月28日(土) 19時30分
セクハラ問題にも…女性記者だった私が会社を辞め中国に行った理由
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中国で働き、中国に関する仕事をしていると必ず聞かれるのが、「なぜ中国に行こうと思ったのですか」という質問だ。写真は財務省庁舎。
中国で働き、中国に関する仕事をしていると必ず聞かれるのが、「なぜ中国に行こうと思ったのですか」という質問だ。私は学生時代に中国に留学したわけではなく、日本での会社員時代も中国と直接関係する仕事をしてはいなかった。だから、12年半にわたる新聞記者生活に区切りをつけ、先の見通しも立たないまま中国に渡ったのは、一言では語り切れない経緯があるのだが、最近論議を呼んでいる「女性記者へのセクハラ」問題も、全く無関係ではない。

テレビ朝日の女性記者による財務省次官のセクハラ告発後、同じく記者職をしていた私の元には数多くのメッセージが来ているし、SNSでも同業者の投稿を数多く見る。ネット上では、女性記者によるハニートラップを疑う声や、「嫌なら担当を替えてもらえばいいのに」という声もたくさんあるが、私たち女性記者にとって、彼女が告発したセクハラは、「女性記者あるある」の一端で、何の意外性もない。そして、どんな理由であれ、取材先とのトラブルが原因で担当を外れると、自社でもトラブルメーカー扱いされがちなため、会社を辞めずにやりたい仕事をしたいなら、「セクハラをうまくかわし、立ち回り、取材先との関係を壊さず、ネタもしっかり取る」という優秀な女性記者の条件に自分を合わせていくしかない(まあ、どこに行ってもセクハラ男性は存在する、という一種の諦めもある)。

世の女性記者がどのような立場に立っているかは、少しずつ報道が出ているのでここでは割愛するが、マスコミに限らず、営業の成果(ネタを取るというのも、仕事としては営業に近い)が個人の評価にダイレクトに影響する職種において、女性は女性であることを常に突き付けられ、意識せざるを得ないということだ。

社会人になりたてのころ、同業の30前後の女性記者が、休職して留学することになった。彼女が選ばれたことに対し、周囲では「上層部にわかめ酒を飲ませた」(わかめ酒を知らない人は調べてください)という噂が飛び交い、「女性というのは、こういう言い方をされるのか」とショックを受けた。

かと思えば、フレッシュなイメージを出すためか、突然新プロジェクトのリーダーに抜擢されることもある。私は外部のあるコンテストの審査員を数年していたが、私以外の審査員はそうそうたる経歴の中高年男性たちで、自分が「女性枠」であることは重々承知していた。現に、会社を辞めて中国に行く際に、審査員を続けられなくなったことを報告すると、「女性の後任者」の紹介を頼まれた。

30代になって、仕事で成果を出した際、同僚男性に「かわいい女性は得だね」と言われ、自分だけでなく、情報提供してくれた取材先まで侮辱されているような、申し訳ない気持ちになるとともに、おそらく自分の若さには関係なく、何歳になってもこういう言われ方をする人はいなくならないのだと悟った。

もちろん、1人の社会人として接してくれる男性もたくさんいるし、「言いたいやつには言わせておけ」「放っておけ」「気にするな」と慰めてくれる人に対し、私自身、「気にしてたら仕方ない」と応じてきた。しかし同時に、自分の「女性」以外の価値については、随分考え、性別に影響されないスキルを獲得したいと渇望してきた。

その後、私はビジネススクールに通い、MBAの学位を取得した。英語と中国語の勉強も始めた。35歳で新聞社を退職して中国に留学した私は以降、日本語教師、中国語と英語のニュース翻訳、中国経済記事の執筆など複数の仕事を経験してきた。そして、これらの職種は、女性という属性が、成果や評価にほとんど影響を及ぼさない点が共通していた。

語学教師の実力は、教え子たちの能力にはっきり反映される。20歳年の離れた、上昇志向の強い学生は、「能力を伸ばしてくれる」という軸で、教師を選ぶ。ニュース翻訳も同じだ。経済ニュースの翻訳も同じだ。どんなに人間が魅力的でも(内面、外見を問わず)、的確に訳せなければ仕事は来ない。成果物を見ればある程度能力を測れるので、営業に行く必要も高くない。

仕事において自分が女性であると意識することの少ない生活は本当に楽で、だからこそ、「新聞記者時代は、女性であるがゆえに生じる問題で、日々すり切れていた」と気づいた。

職務経歴書や履歴書に並ぶ資格一覧を見ると、よく「勉強好きなんですね」と言われるが、実際は、「女性」の前に来る形容詞が欲しかったんだと思う。昨今の「女性活躍推進」ブームで、女性が抜擢されたり、優遇されている職場も増えているだろう。もし身近にそういう例があるなら、その女性自身も多くの場合、悩み、「女性」以外の部分で認められるために努力していることを、知ってほしい。

■筆者プロフィール:浦上 早苗
大卒後、地方新聞社に12年半勤務。国費留学生として中国・大連に留学し、少数民族中心の大学で日本語講師に。並行して、中国語、英語のメディア・ニュース翻訳に従事。日本人役としての映画出演やマナー講師の経験も持つ。
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