被害者という米国こそグローバル化の最大の受益者

人民網日本語版    2018年4月12日(木) 17時40分

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このところ米国は中米間の貿易不均衡を理由として、中国に対する貿易戦争をしかけている。トランプ大統領は「米国は被害者」と声高に叫び、世界貿易機関(WTO)のルールは米国に不利であり、WTOは中国に荷担し、米国に対して平等でないなどと批判している。

このところ米国は中米間の貿易不均衡を理由として、中国に対する貿易制限を発動している。トランプ大統領は「米国は被害者」と述べ、世界貿易機関(WTO)のルールは米国に不利であり、WTOは中国に荷担し、米国に対して平等でないなどと批判している。「北京日報」が伝えた。(文:李計広・対外経済貿易大学国際経済研究院教授)

米国の貿易赤字問題については、国内・海外の学術界で多くの研究がなされており、比較的一致した結論は、「貿易赤字には4つの原因がある」というものだ。米ドルが国際的な準備通貨であるという特殊性、米国の高消費・低貯蓄モデル、グローバルバリューチェーンの分業、米国のハイテク技術の対中輸出規制の4点だ。よって中米貿易の不均衡の責任は中国にあるのではなく、米国自身にある。いわゆる赤字とは、トランプ大統領が対中貿易摩擦を引き起こすための口実に過ぎず、「WTOが中国に荷担している」との見方にはいささかも根拠がないといえる。

WTOの推進の下、経済グローバル化が深いレベルで発展を遂げ、中国も米国も大きな利益を得てきた。米国の利益が中国よりも多いことは確実で、それは主にルールをめぐる利益と経済貿易をめぐる利益の2点に表れている。

ルールをめぐる利益ということでは、ルールの制定者が最大の受益者になることが多い。第二次世界大戦以降、米国は多国間貿易体制の主導者であり、米国に有利な多くの経済貿易ルールが実施されるよう後押ししてきた。現在のWTOルールはウルグアイ・ラウンドで締結されたものであり、その交渉の過程で、米国は、「サービス貿易に関する一般協定」(GATS)や「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS協定)などの米国の優位性に合致したルールを多国間貿易システムに組み込み、発展途上国に有利になる各種ルールをなおざりにしてきた。中国はWTOの新メンバーであり、WTOルールを受け入れる者だ。中国はWTO加盟交渉において、権利と義務の均衡が取れた全体的な原則について合意した。中国はWTO加盟後、WTOルールの交渉に積極的に参加したが、ルール制定をめぐる米国の主導権に挑戦を挑んだことはない。つまりルールをめぐる利益ということでは、米国が今なお主導的な立場にある。

経済貿易をめぐる利益ということでは、米国はルールに基づいて多くの目に見えない利益を得てきた。WTOの後押しを受けて、経済グローバル化が急速に発展し、米国はグローバル化から力を得て多国籍企業が主導するグローバルバリューチェーンを構築し、自らはチェーンの上層部分や高付加価値部分におさまった。貨物貿易では、米国の赤字全体のうち対中国が50%を占めるが、付加価値の統計ではこの数字は16%に低下する。また中国の輸出をめぐる付加価値の一部は米国の投資によって得られたもので、トランプ大統領が米国の貨物貿易赤字を過剰に言い立てていることは明らかだ。サービス貿易では、米国は一貫して黒字であり、優位性が拡大を続けており、2006年から16年の間には、中国のサービス貿易の赤字の最大の原因となった国は米国であり、赤字額は10年間で34.7倍増加した。あらためて投資をみると、米国は対外投資大国であり、外資導入大国でもある。経済グローバル化を背景として、米国の資本は世界に広がり、世界中で「羊毛刈り」(強い者が弱い者の利益を奪い取る)を行い、純債務国となり、国際投資では一貫してプラスとなり純収益を上げ、その規模は6兆ドル(1ドルは約107.0円)にも達していた。これと同時に、米国は中国でも大量の直接投資を行い、年平均収益率は20%を超え、こうした資本の投資家の多くは中米貿易を組織する者であり、主な利益獲得者でもあった。よって米国こそ経済グローバル化の最大の受益者だと、少しも誇張を交えずに言うことができる。

「WTOが中国に荷担論」には、目下の米国国内の経済グローバル化に対する評価基準の変化が反映されている。資本という観点からの評価では、米国の産業資本と金融資本は今なお最大の利益獲得者だ。中国も資本による利益を得てはいるが、規模も利益率も米国に遙かに及ばない。労働力という観点からの評価では、米国の産業労働者が産業移転によって大量の失業者を出したため被害者であり、中国の労働力が農業から工業への転換プロセスで、収入が上がり、生活が改善されたので受益者ということになる。何もかもがうまくいくということはない。経済グローバル化やWTOが米国にとって不利で不平等だというより、米国内の利益の分配調整メカニズムに問題が出たというべきだ。

合意できれば採用すれば、合意できないなら手を引くというのが、米国人のいつものやり方だ。今や、WTOの枠組内で中国に対して早急に制裁を加えるという目的を達成できないとわかった米国は、当初の約束を乱暴に捨て去り、一国主義と保護貿易主義を臆面もなく打ち出してきた。こうした意義からいって、中米貿易戦争の本質は一国主義と他国主義との戦いであり、保護貿易主義と自由貿易との戦いだ。中国は真理と正義の側に立ち、国の核心的利益に脅威となる厳しい課題に直面し、世界共通の利益に危害を及ぼす逆行的な動きに向き合い、「最後まで戦い抜く」しかない。

▽米国が発動した中米貿易摩擦を振り返る

2017年8月18日

米国は中国に対し正式に「通商法301条」に基づく調査を発動

米国のライトハウザー通商代表は、「中国に対し『301条調査』を正式に発動する」と宣言し、中国政府の技術移転、知的財産権、革新(イノベーション)など各分野での実践、政策、やり方が不合理かどうか、差別的でないかどうか、米国商業界に負担や制限をもたらしていないかどうかを調査するとした。

2007年8月24日

中国商務部「必要な措置を執って米『301条調査』に対応する」

米国が中国に対して発動した「301条調査」について、中国商務部は中国の立場を表明するとともに、「中国はこうした一国主義、保護貿易主義のやり方に対し強い不満を表明する。必要なあらゆる措置を執って、中国と中国企業の合法的な利益を断固守り抜く」と述べた。

2018年2月27日

米商務省が中国製アルミホイルにダンピング・補助金の最終決定

米商務省は最終決定を発表し、中国から輸入されたアルミホイル製品にダンピング行為および補助金行為が存在したと認定した。

2018年2月28日

中国商務部が中国製アルミホイルに対する米国のダブル判定にコメント「最終決定に強い不満」

商務部貿易救済調査局の王賀軍局長は、「調査の過程と結果から考えて、米国は引き続きWTOルールを無視して、中国のアルミホイル輸出企業の利益に深刻な損失を与えており、中国はこれに対し強い不満を表明する。米国の誤ったやり方に対し、中国は必要な措置を取って自国の合法的な権利を守る」と述べた。

2018年3月8日

米国が輸入鉄鋼・アルミ製品に高額の関税を課すと発表

米国のトランプ大統領は輸入鉄鋼・アルミ製品に対し高額の関税を課すとした大統領令に調印した。米国はこれから輸入された鉄鋼製品には25%の関税を、アルミ製品には10%の関税を課すとしている。

2018年3月15日

米国は中国製アルミホイルに対する「反ダンピング・反補助金」の関税徴収を決定

米国国際貿易委員会(ITC)は、米国は今後、中国から輸入されたアルミ箔製品に対して反ダンピング関税および反補助金関税(ダブル関税)を課すとの最終決定を下した。

2018年3月19日

中国外交部が米国による鉄鋼・アルミ製品への輸入制限決定にコメント「下手な鉄砲は建設的でない」

外交部の報道官は米国が輸入鉄鋼・アルミ製品に制限措置を執ると決定したことについて、「当面の情勢において、隣国に災いを押しつけ、下手な鉄砲を数多く撃つのは、決して問題解決の有益で有効な方法ではなく、少しも建設的ではない」と述べた。

2018年3月22日

トランプ大統領が中国製品に対する大規模な関税徴収の覚書に調印

米国のトランプ大統領は「301条調査」の結果に基づき、中国から輸入された製品に大規模に関税を課すとともに、中国企業の対米投資や米国での合併買収(M&A)を制限するとした大統領覚書に調印した。トランプ氏はホワイトハウスでの調印に先だちメディアに向けて、関税徴収の対象製品の規模は600億ドルに達する見込みであると述べた。

2018年4月2日

中国は「米通商拡大法232条」にらみ課税製品リストを発表

中国は米国製の7分野128品目の製品に対する関税譲許義務を呈しするとした。2017年の統計を踏まえると、対象製品は米国の対中輸出の約30億ドル分にあたる。

2018年4月3日

米国は追加関税の対象となる中国製品リストを発表

米通商代表部は「301条調査」の結果を踏まえ、追加関税の対象となった中国製品リストを発表し、対象製品は中国の対米輸出の約500億ドル分にあたり、情報・通信技術、宇宙航空、ロボット、医薬、機械などの産業の製品が中心だった。

2018年4月4日

中国商務部はただちに声明を発表「中国は断固反対」

商務部の報道官は、「米国が中国の厳正な働きかけを無視し、少しも事実となる根拠がない中で、追加関税の方針を明らかにしたのは、典型的な一国主義で保護貿易主義のやり方だ。中国は強く非難し、断固反対する」と述べた。

外交部「圧力や恫喝で中国を無理矢理屈服させようとしてもうまくいかない」

米通商代表部が中国に対し「301条調査」に基づく追加関税の対象製品リストを発表したことについて、外交部の報道官は、「圧力や恫喝によって中国を無理矢理屈服させようとするやり方は、これまでも成功したことはないし、今でもうまくいくはずがない」と述べた。

中国は米国製品14分類106品目に25%の追加関税

米国が国際的義務に違反して中国に対して醸成した緊急事態に対し、中国は自国の合法的な権利を守るため、米国産の大豆をはじめとする農産品、自動車、化学工業製品、航空機などの輸入製品に対し追加関税措置を執り、税率を25%とする。対象製品は2017年の中国の米国からの輸入額のうち約500億ドル分を占める。(編集KS)

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