<コラム>漂着した日本人のカメラ、台湾の小学校教師の尽力で持ち主の元へ=実によい教育と感心した

如月隼人    2018年4月4日(水) 20時10分

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やはり、「インターネットを良く使うのも人、悪く使うのも人」ということのようです。資料写真。

日本人女性が沖縄県石垣島でダイビング中に海に流してしまったカメラが、台湾東部の宜蘭県蘇澳で見つかりました。3月27日に、現地の岳明国民小(小学校)の児童が、全校の授業の一貫として行っていた海岸の清掃中に見つけたそうです。

▼小学校教師が、中国語と日本語で落とし主を探す

受け持ちクラスの児童が見つけたという先生が、その日のうちにフェイスブックを通じで持ち主探しを始めました。李先生という方だそうです。一連の経緯を調べて、「この先生、実によい教育をしている」と感心しました。そのことについて書いてみます。

李先生はフェイスブックに中国語と日本語で持ち主探しへの協力を訴えました。日本訳は友人にしてもらったそうです。日本人から見て、多少はぎこちない部分もある日本語ですが、それは些細なことです。李先生の誠意が実によく伝わってきます。訳文も李先生の誠意をきちんと反映しています。

▼実に自然な教育効果が認められる呼び掛け文

その文面で感心した部分があります。カメラは防水ケースに入っていたそうで、外側にびっしりと貝殻がこびりついていましたが、内部に水は入っていなかったらしく、電源も「生きていた」といいます。

李先生によると、記録されている写真を見ることがよいかどうか、議論したとのこと。この部分は中国語を直訳すると「他人のカメラの写真を見ることは、道徳的でない面がある」、日本語では「本当はよくないと思いますが」と紹介しています。

躊躇(ちゅうちょ)はしたが、皆で話し合った結果、持ち主を探すためにはやむをえないとの結論になったとのことです。画像を確認した結果、日本の石垣島で2015年に失われたカメラの可能性が高いと判断できました。

続く部分でも、写真をごく一部だけ公開するが、「プライバシーを考えた」「写真を公開するのは、持ち主を探し出したいと思ったから」と、改めて落とし主のプライバシーに配慮しました。

▼児童が学んだことは多かったはず

海を漂流したカメラを見つけたことに、児童らは興奮したでしょう。そして、落とし主を探そうということで、関心はさらに高まったでしょう。改めて李先生の投稿文を見た児童も多かったはずです。

李先生はそんな児童らに改めて、「他人の情報を盗み見することは、本当はよくないことだよ」とはっきりと教えたわけです。

それから、李先生の行動が素早かったことにも感心しました。昼の海岸清掃で見つかったカメラについて、その日の夜に投稿しています。しかも日本語訳をつけてですから、出来る限り急いだと想像できます。

李先生は、児童に対して「困っている人がいたら、できるだけ助けてあげよう」「善は急げだ。早ければ早いほどよい」と教えたわけです。

▼落とし主、驚きのスピード発見

28日深夜には上智大学の学生である、椿原世梨奈さんが海に流してしまった自分のカメラと気づき、李先生に連絡したそうです。椿原さんは6月に訪台して、李先生からカメラを受け取るとのこと。

椿原さんは自分のフェイスブックに「まさかこんなことが起こるなんて思ってもみませんでしたし、今でも不思議な気持ちです…」「カメラを発見してくださった生徒さん、カメラを持ち主に返したいと投稿してくださった李先生、拡散してくださった皆様など、たくさんの方々に感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました」などと日本語と英語で書き込みました。

椿原さん、そして李先生と児童らが喜ぶ笑顔が目に見えるようです。李先生は児童らに「人助けは気持ちのよいものだ」ということも教えたことになります。

考えてみれば、カメラの持ち主探しで、李先生は「賭け」に出たとも言えます。持ち主が見つからなかったら、児童ががっかりして「無駄だった」と思ってしまうかもしれないからです。でも、李先生は立派に成功させました。

昨今、インターネットを利用した悪意の情報、偽情報があふれているとして問題になっています。暗い気持ちにもなってしまいますが、この「漂流カメラの落とし主発見」の話題では、本当にほのぼのとした気持ちになりました。やはり、「インターネットを悪く使うのも人、良く使うのも人」ということなのですね。

■筆者プロフィール:如月隼人

日本では数学とその他の科学分野を勉強したが、何を考えたか北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。

■筆者プロフィール:如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大学教養学部基礎科学科卒。日本では数学とその他の科学分野を勉強し、その後は北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。中国については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結局は得」が信条。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。

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