<コラム>日本100%、中国5%=中国の建築ゴミ利用の現状と問題点

内藤 康行    2018年4月8日(日) 15時0分

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経済成長に伴い都市化建設、都市内の村鎮改造、違法建築の取り壊し、旧市街地改造等建設工事が急速に進み、資源と環境保護の矛盾が浮かび上がっている。写真は中国の建築現場。

経済成長に伴い都市化建設、都市内の村鎮改造、違法建築の取り壊し、旧市街地改造等建設工事が急速に進み、資源と環境保護の矛盾が浮かび上がっている。建築業は自然資源を消費する業界で、大規模都市建設は建築材料の需要は膨大である。住宅建設部の資料によれば、中国では年間新規建築面積は20億平方メートル、セメントと鋼材は世界の約4割を中国の建築で消費されているという。この膨大な建築工事に背景には、毎年数億トンの建築ゴミが発生し、その数量はすでに都市ゴミ総量の30〜40%に達している。

▼中国の建築ゴミの現状と諸問題

建築ゴミとは、新設、改築、拡張と取壊し活動で発生する残土、コンクリートやレンガ廃材等廃棄物の総称である。異なる発生源により、建築ゴミは施工建築ゴミと取壊し建築ゴミに分類されている。施工建築ゴミは住宅、商業施設建築とその他行政インフラ施設の新設、改築、拡張建築活動で発生する廃棄物である、一方取壊し建築ゴミは建築物とその他行政インフラ施設の取壊し活動で発生する廃棄物である。この中で無汚染の無機物(粘土、石材、コンクリート材、レンガ廃材)は90%以上を占める。無機材料は耐酸、耐アルカリ、耐水性、化学性質が安定していると同時に、安定した物理特性を持つ。このため建築ゴミ特性に合わせ処理を経て良質な再生建材となる。廃品(金属、竹木材、包装材料、材木、プラスチック、ガラス等)は廃棄物分別後再生資源として利用される。建築ゴミは都市ゴミ中、最もクリーンなゴミに属し、合理的な利用を実施すれば二次汚染は回避できるものである。

現在、行政側は建築ゴミ統計総量を公表していないが、建造物取壊し移転面積や新設面積等から予測すると、年間建築ゴミ排出総量は15億トン以上に達する。500〜600トン/万平方メートル基準で試算すると、2020年の建築ゴミ量は驚愕的な数値になりそうだ。しかし絶対多数の建築ゴミは如何なる処理もされておらず、施工業者により郊外や農村部に投棄埋め立されている。清掃運搬と単純な野積み(合法とは言い難い投棄に近い)の過程中で粉塵や砂・灰等の飛散等の環境汚染は深刻度を増し周辺住民生活の脅威となっている。これまで、中国の国民は建築ゴミに対して関心がなく、建築ゴミが量から質に変化した時、深刻で緊迫した問題であることを初めて認識する。

中国の建築ゴミの4大特徴は、(1)大量、(2)種類が複雑(レンガ類が多い)、(3)現処理方法が単純、大多数が野積か埋め立、(4)分別不備である。これらはすべて建築ゴミとして充分な再生利用をできなくしている。

住宅建設部が公布した最新計画では、2020年新設住宅は300億平方メートル、これに伴って発生する建築ゴミは少なくとも50億トンに達すると予測している。これからの10年、中国では毎年平均15億トン以上の建築ゴミが発生し、2030年には73億トンに達するとの予測もある。こうした事情もある中で建築込循環再利用を専業とする企業は数十社しかない。先進国の資源化率平均90%以上と比べると、中国の資源化率はわずか5%程度だ。

ちなみに日本の建築ゴミ事情を見ると、日本の建築ゴミは「発生」、「分類」、「処理」フローが厳密管理され徹底している。過去数十年、不断なく建築ゴミ資源化利用関連法規と制度を公布・構築している。1988年東京の建築ゴミ再利用率が56%に達して以降、国内各地域の建築ゴミ再利用率はすでに100%を実現している。

■筆者プロフィール:内藤康行

1950年生まれ。横浜在住。中学生時代、図書館で「西遊記」を読後、中国に興味を持ち、台湾で中国語を学ぶ。以来40年近く中国との関わりを持ち現在に至る。中国の環境全般とそれに関わるビジネスを専門とするコンサルタント、中国環境事情リサーチャーとして情報を発信している。

■筆者プロフィール:内藤 康行

1950年生まれ。横浜在住。中学生時代、図書館で「西遊記」を読後、中国に興味を持ち、台湾で中国語を学ぶ。以来40年近く中国との関わりを持ち現在に至る。中国の環境全般と環境(水、大気、土壌)に関わるビジネスを専門とするコンサルタント、中国環境事情リサーチャーとして情報を発信している。著書に「中国水ビジネス市場における水ビジネスメジャーの現状」(用水と廃水2016・9)、「中国水ビジネス産業の現状と今後の方向性」(用水と廃水2016・3)、「中国の農村汚染の現状と対策」(CWR定期レポ)など。

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