次期冬季五輪開催地の中国、急増するスキー場と国民の「安全リスク」

配信日時:2018年3月6日(火) 20時10分
次期冬季五輪開催地の中国、急増するスキー場と国民の「安全リスク」
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平昌オリンピックも終わり、次期冬季五輪開催地・中国に注目が集まるなか、スキーヤーの事故が増えている。そこにはスキー場の安全対策、無茶をする初心者など、いくつもの問題がある。写真は北京南山スキー場で研修を受けるスキーインストラクター。
平昌オリンピックも終わり、次期冬季五輪開催地・中国に注目が集まるなか、スキーヤーの事故が増えている。そこにはスキー場の安全対策、無茶をする初心者など、いくつもの問題がある。

2017年1月14日、河北省張家口市崇礼県の万龍スキー場。北京から来た大学生の胡楊さん(仮名)は冬休みを満喫していた。崇礼で滑るのはシーズン4度目。6歳からスキーを始めた彼は、専門のレッスンこそ受けたことはないが、天性のセンスがあり、腕前もなかなかのものだ。

午後3時半、彼は「銀龍コース」のスタート地点に立った。全長2050メートル、斜度18度の上級者コースだが、4、5回滑ったことがある。毎回かなりドキドキするものの、滑り切っていた。今回もこのコースに挑戦して、一日を締めくくろうと思っていた。

だが、滑り始めて数秒で違和感を覚えた。スキー板がガタついている。かなりのスピードが出ているサインだ。少し焦ったが、ブレーキはかけなかった。もう数十メートル行けば傾斜が緩くなるので、スピードは自然に落ちるだろうと思ったのだ。「大丈夫、怖くない」。自分にそう言い聞かせた―やがて、全身が宙を舞った。

【年々上昇する死傷者数、危険と隣り合わせの実態】
「体の向きを変えてブレーキをかけるつもりだったのに、斜面を転がりだしたんです」。胡楊さんは当時を思い起こしてこう話す。何回転したのかわからない。空と地面が交互に目の前に現れる。ようやく止まり、起き上がろうとしたが、腕と足、そして腰さえも動かなくなっていた。

事故の一部始終を目撃した後続のスキーヤーがすぐに電話で救助を求め、胡さんは駆けつけたスキー場の係員によって担架に乗せられ、スノーモービルで救急車の待つ麓へ搬送された。

病院での検査の結果、全身の8カ所を骨折し、腰椎に重篤な損傷があった。医者からは、一歩間違えば半身不随になりかねなかったと告げられた。この転倒事故から2日後の1月16日、同じく万龍スキー場で北京大学大学院の女子学生が旗門ターンの練習中に木の茂みに衝突して死亡、さらにその2日後、崇礼の太舞スキー場で、10歳の男児がコース端から飛び出し崖下に転落した。翌月10日には、山東省臨沂市の茶山スキー場で、9歳の女児がベルトコンベア式リフト上で転倒、髪と腕がベルトに巻き込まれた。女児は肋骨が折れて内臓に刺さり、後日死亡した。

こうした事故が立て続けに起きていることには衝撃を受けるが、スキー事故の死傷者について、中国国内には政府公認の統計データがまだない。瀋陽工業大学が国内70カ所のスキー場に対して独自におこなった調査では、スキーによる死傷者数は年々上昇傾向にあり、2008年から2011年の間にスキーが原因の重傷者は72人から156人(年平均10%増加)に、死者は5人から26人に増加している。

【スキー場建設ラッシュが事故の温床に】
事故率が年々上昇している背景には、国内スキー産業のめざましい発展がある。1996年には中国全体でスキー場はわずか9カ所、スキーヤーも1000人足らずだったが、『中国スキー産業白書』によると、2016年にはスキー場が646カ所に達し、前年よりも78カ所増加、伸び率13.73%となり、利用者数も前年の延べ1250万人から同1510万人に増加、20.8%の伸びを記録した。

この傾向は今後も続くと誰もが信じている。1980年代末に国が打ち出した「北氷南展、北雪南移(北部で盛んな氷上・雪上スポーツを南部でも振興する)」という発展方針に始まり、「ウインタースポーツ人口を3億人に」が提唱される現在、2022年の冬季五輪開催も追い風となり、東北・華北地域に集中していたスキー場は全国津々浦々に展開している。

それ自体は必ずしも悪いことではないが、「スキーが儲かる」となると、人は欲にかられて理性を無くしがちだ。いまや多くの投資家が科学的な計画や基本的な検証もないまま、後先考えずブームに便乗してスキー場を建設しているが、完成後、気候条件により造雪できないことに気づくケースもある。また、スキー場建設のために山岳地の地形を大きく変えたり、竹林を大規模に伐採したりした結果、地域の微気候が変化してしまい、人工造雪ができず、積雪が維持できないケースもある。

科学的な計画が欠如した無分別な投資は、潜在的な危険もはらんでいる。ここ数年、小規模スキー場がバタバタと着工しているが、コストを下げるため、お粗末な設備ですませたり、用地選定や整備、安全性確保などの面で条件にそぐわなかったり、コースの傾斜が適切でなく、狭すぎるうえにメンテナンスも不十分、といった問題がいたるところで見られる。
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