<コラム>韓国にもある漢字の熟語、「貧益貧、富益富」の意味わかりますか?

木口 政樹    2018年2月28日(水) 19時0分

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漢字文化圏の韓国には、漢字の熟語がたくさんある。たとえば「類類相従」は「類は友をよぶ」という意味である。それでは「貧益貧、富益富」という漢字熟語はどうだろうか。写真は韓国・江南。

漢字文化圏の韓国には、漢字の熟語がたくさんある。たとえば「類類相従」。これはどういう意味かおわかりだろうか。韓国語の発音で「ユーユーサンジョン」。しばしながめているとなんとなくおわかりかもしれない。そう、「類は友をよぶ」という意味である。

それでは「貧益貧、富益富」という漢字熟語はどうだろうか。韓国語の発音では「ビンイクビン・ブイクブ」となる。これはいくらながめてもわからないかもしれない。答えは、貧しいものはさらに貧しくなり、富めるものはさらに富めるようになるという意味である。日本語では見たことのない慣用句だと思う。

たとえば有り金をはたいて競馬の馬券を買う。当たり馬が来ないで、馬券は紙切れとなりすべてをすってしまう。あるいは借金をしてどこかのマンションを買う。それまではずっと上がりっぱなしのマンションの値段だったのだが、突然サブプライムローンみたいな経済危機が来て価格は暴落。買ったときの半分とか30%なんていう値段で手放さざるをえなくなり、借金して買ったものだから借金がまた増える。ある者は株に手を出して大損してしまう。金のない者たちの陥る落とし穴だ。かくして貧はさらに貧を呼び、奈落の果てにおちてしまう結果となる。これがビンイクビンすなわち「貧益貧」の意味である。

富める者はこういうことはしない。株にしても余裕を持って買うし、時間的な余裕があるから、深い読みもできる。株価がさがってきてもじっとがまんしているだけの底力があるため、こらえて結局はプラスに転じてから売る。したがって損はしない。マンションもそうだ。余裕の金で買い、経済動向をよくみてから売るため、決して損はしない。かくして富はさらなる富をよび、金がさらに金を生む結果となる。金があれば袖の下を使うこともできる。そのためにいくらか金を失っても元はとれるし、袖の下以上の利益を上げることができるのが常だから、金がさらなる金を生むことになるわけだ。これがブイクブつまり「富益富」の意味である。

こういうことを言い表した慣用句だが、言いえて妙である。社会の断面を一言でえぐり出したフレーズである。こういうエスプリの効いたエピグラム(寸鉄)は、韓国語独特のものかもしれない。

おそらく1988年のパルパルオリンピック(ソウルオリンピック)のころの高度経済成長期にできた言葉ではないかと思う。普通は、大金持ちたちを非難して使う慣用句である。韓国でいちばん土地とマンションの値段の高いカンナム(江南)地域にマンションを買い、10年ぐらい待って2倍、3倍にして売り大きな利益を上げる。わたしら庶民にはそういう芸当はできない。先立つものがないからだ。

1坪7000万ウォン、最近のレートでは700万円もするようでは、20坪で1億4000万円にもなるわけで、とうてい庶民が手を出せる値段ではない。日本の新宿あたりに匹敵するのではないだろうか。あるいはそれを超えるか。こんなのを自由に買えるならそれに越したことはないが、一介の市民であるわれわれは、コツコツと汗水垂らして稼いでいくしかないし、それが「人並み」について行くいちばんの近道ではないだろうか。ビンイクビン・ブイクブでなく、その中間あたりを渡り歩いて行くのがいちばんの道かも。

■筆者プロフィール:木口政樹

イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。三星(サムスン)人力開発院日本語科教授を経て白石大学校教授(2002年〜現在)。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。

■筆者プロフィール:木口 政樹

イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大学校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓国』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。

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