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<コラム>梅の花は、時空を越える宇宙的存在感がある

配信日時:2018年2月24日(土) 17時30分
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時は西暦5世紀中国南北朝時代、江南の文士「陸凱:りくがい」が長安の友人「范曄:はんよう」に一枝の梅を贈り、【范曄に贈る詩】を添えた。写真は筆者提供。
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時は西暦5世紀中国南北朝時代、江南の文士「陸凱:りくがい」が長安の友人「范曄:はんよう」に一枝の梅を贈り、こんな詩を添えた。

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【范曄に贈る詩】

折花逢駅使:ひと枝折って駅使に託します

寄與隴頭人:北の隴頭(ろうとう)のふもとのあなたに

江南無所有:江南(揚子江より南部の地域)は何もない

聊贈一枝春:せめてまだ寒い長安に、春でも贈ろう

という意味である。陸凱は「梅」を「春」に置き換えて詠った。范曄(はんよう)は政治家であり「後漢書」の編集者でもあった。戦国時代の武将「武田信玄」もまたこの詩を意識して「吟断江南梅一枝」の漢詩を残している。

6世紀には漢詩の中に多くの梅が詠われている。9世紀、唐の時代になるとさらに多くの梅が出てくる。花と言えば「梅」であった。日本列島に中国原産の梅がいつ来たのはよく分からない。平安時代、時の右大臣「菅原道真」は京での政変(西暦901年)で左遷され、遠く九州の大宰にいた。その時に詠ったのが、「東風吹かば 匂いおこせよ梅の花 あるじなしとて 春なわすれそ」である。これは、陸凱の詩を意識した詩であろうと思われる。中国と日本、この二つの詩に共通するのが、「距離の長さ」ではないだろうか。地理的な長さと時代の長さ、そして人と人の長さである。梅には時空を越える力があるのかも知れないと思うばかりである(写真1)。

陸凱から600年を経た北宋時代、「王安石」(西暦1021〜1086年、北宋の政治家・文学者)は同じく宇宙的な空間で「梅の花」を詠っている。

墻角数枝梅:垣根の角に数枝の梅が見える

凌寒独自開:寒気を衝いて、どの花よりも早くひとり咲く

遥知不是雪:遥かに離れても、それは雪でないと分かる

為有暗香来:どこからともなく漂う香りがあるからだ

冬の夜に咲く白梅は、雪なのか花なのかと惑わせる。ただ梅の香りがするか否かで、白梅と分かるのである。暗い宇宙空間に物体の存在を決定付けるのは、「香り」という嗅覚である。王安石のすばらしさは、白梅と自分を重ねている点である。政治家として晩年失脚し南京に隠棲した。その時の詩であった。誰よりも先に自ら咲こうとする姿は“自分そのもの”であった。そして暗香こそ「君子の徳」、言われずともそこに存在感を示す“自分そのもの”の姿を映したものである。王安石は、東海の国で自らと同じく左遷された「菅原道真」を知っていたのであろうか。春三月、福岡太宰府天満宮「心字池」を渡る三つの赤い橋、この橋は過去・現在・未来の三世一念の相を現したものである。その向こうにある神殿前に咲く「道真の白梅」が、西の中国大陸に「飛び梅」となったのではなかろうか(写真2)。

5世紀の「陸凱」、9世紀の「菅原道真」、11世紀の「王安石」、三者はいずれも国も時代も場所も異なる別々の人間であるが、梅と言う花によって一つに結ばれた。梅花は時空を越える宇宙的存在になると言っても過言でない。「飛び梅」とよく言ったものだ。

■筆者プロフィール:工藤 和直
1953年、宮崎市生まれ。2004年1月より中国江蘇省蘇州市で蘇州住電装有限公司董事総経理として新会社を立上げ、2008年からは住友電装株式会社執行役員兼務。蘇州日商倶楽部(商工会)会長として、日中友好にも貢献してきた。

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