<コラム>日本人の中国料理に対する誤解、「中華にはうるさい」と豪語する会社役員がリクエストしたのは…

配信日時:2018年2月20日(火) 20時40分
<コラム>日本人の中国料理に対する誤解
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日本の中華料理は、福建、広東、台湾から日本に渡ってきた人の料理がベースで、それを日本人の舌に合うように発展してきたものなので、中国に行っても必ずしも食べられるとは限りません。写真は筆者提供。
以前、中国駐在の日本人に聞いた話ですが、その人の会社の役員が初めて中国出張するにあたり、「自分は中華料理にはうるさい」と言われたのだとか。現地で受け入れる立場だったその人は、何を食べたいと言われるのかと戦々恐々としていたところ、その役員のリクエストは「天津飯」。ご存知の方も多いと思いますが、天津飯は日本で生まれた中華料理です。有名なレストランの予約をキャンセルし、現地の日本人が行く和食屋さんにお願いをして、特別に作ってもらったそうです。その役員は「さすがに本場は違う」と、喜んでいたそうです。

日本の中華料理は、福建、広東、台湾から日本に渡ってきた人の料理がベースで、それを日本人の舌に合うように発展させてきたものなので、中国に行っても必ずしも食べられるとは限りません。同じ名前でも違う料理だったり、日本での名前と違っていたりすることもあります。

中国料理の名前の多くは、材料や調理法から名付けられています。「青椒肉絲(チンジャオロース)」は、ピーマン(青椒)と、豚肉の細切り(肉絲)を炒めたもの。中国では「肉」は豚肉を指します。「回鍋肉(ホイコーロー)」は、一旦鍋で茹でて取り出した豚肉を、その後に野菜を炒めている鍋に戻す(回は、「戻す」「戻る」という意味)、ということです。日本のあるメーカーの回鍋肉用の合わせ調味料の箱に書かれている作り方は、まず野菜を炒めて、それを一旦取り出してから豚バラ肉を炒めて、その鍋に野菜を戻すとなっていますが、それでは「回鍋肉」にはなりません。また、日本での回鍋肉は、キャベツを使うことが定番ですが、そもそもの回鍋肉にはキャベツは入っていません。

一方、「担担麺」は材料や調理法ではなく、この料理を担いで売って歩いていたことから付けられた名前です。そんな売り方をしていたことから、本来はスープのない調味料や薬味と麺を和えたもので、大きめのご飯茶碗ぐらいの量の間食的な料理です。日本では「担々鍋」とか「担々うどん」とか、ピリ辛の胡麻風味のスープを「担々」と表記することがありますが、かなり飛躍した感じです。

「麻婆茄子」という名前の料理は中国には基本的にはなく、「魚香茄子」という料理がほぼ同じものです。さらに、日本では北京ダックは皮だけを食べるという印象がありますが、北京では肉まで食べますし、残りの肉と野菜の炒め物や、骨でとったスープもコースとして出てきます。これは個人的な憶測ですが、日本の北京ダックは、香港経由で日本に伝えられ、その際に広東料理の子ブタの丸焼きの、皮の部分だけを供する食べ方の影響を受けたのではないかと思っています。

また、横浜中華街あたりに「北京料理」「上海料理」「四川料理」「広東料理」という地区の料理の看板をあげている店があり、どの店に行っても「北京ダック」「小籠包」「麻婆豆腐」が当たり前のように出てきます。「北京ダック」は北京料理、「小籠包」は上海の近郊の名物、「麻婆豆腐」は四川料理です。これを日本に置き換えると、「北海道料理」の看板の店で、きりたんぽや、たこ焼き、ゴーヤチャンプルーが名物メニューだと出てくるようなものです。

中国では基本的にその看板の地区の料理しか出てきません。せっかく中国に来たんだから、本場のものをいろいろ食べたいと思っても、1軒のレストランだけでそれを叶えるのは難しいでしょう。

日本で刀削麺の店名に「西安」がつく店が多いですが、刀削麺は西安(陝西省)の料理ではなく、山西省の料理です。なので、西安に行っても、刀削麺の店はなかなか見つからないかも知れません。

飲み物についても、紹興酒は全国区ではないので、置いていないレストランも少なくありません。日本風の濃い茶色のウーロン茶については、ペットボトルでは見かけますが、レストランではもっと緑茶に近いものが出てきます。最近は物流がよくなったので、青島ビールが全土で飲めるようになりましたが、ちょっと前まではその地区毎の地ビールがメインでした。ちなみに地ビールの味の方が、その土地の料理と合っていたりします。

出張であれば、現地側の人に食事に連れて行ってもらえると思いますが、一人で食事をしなければならない時は、ちょっと困ります。現地人がササっと済ませるような店なら一人で食事をすることができますが、メニュー的にも言葉的にも外国人には敷居が高いでしょう。一般的なレストランでは定食がないため、一品料理を頼むことになります。ひとつの料理の量は、みんなで取り分けることを想定しているので、とても一人では食べきれません。

写真は家庭料理ですが、中国東北部の料理が並んだところです。東北部は中国の中でも一皿の量が多いことで有名です。しかも、それなりのクラスのレストランだと、チャーハンだけを頼むということができず、前菜、メイン、主食といった構成でないと注文することができないことも多いです。

中国で一人で食事をすることになった場合、ホテルでは一人分で注文できるコースがあることが多いので、ちょっと割高ですがそういうところで食べるか、吉野家、味千ラーメンをはじめとする、非中国料理の店か、どの都市にもケンタッキーフライドチキンやマクドナルドはあるので、そういうお店がセイフティーネットになります。最近は、ショッピングモールなどに、一人でも入れる、それなりのレベルのレストランができ始めているようなので、出張先の人に教えてもらうといいでしょう。

■筆者プロフィール:田中 周
1963年大阪府生まれ。メーカーの宣伝関係部署に勤務し、20年近く中華圏に対する広告、イベント、展示会等の施策を担当。出張した都市は30都市以上。中国人との付き合い方をご紹介。
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