<コラム>ちょっと昔の中国の話=北京で暮らして中国語よりも英語が上達した

配信日時:2018年2月18日(日) 15時20分
ちょっと昔の中国の話=北京で暮らして中国語よりも英語が上達した
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1980年代後半から90年代にかけての話です。私は中国語を学ぶために北京語言学院(現:北京語言大学)に留学しました。ところが、最初に上達したのは英会話でした。写真は北京語言大学。
今回も、私が中国に留学していた1980年代後半から90年代にかけての話です。私がまず最初に入ったのは、北京語言学院(現:北京語言大学)です。

▼世界中から留学生が集まる北京語言学院
この学校の主な目的は、外国人留学生の中国語教育と自国学生を語学教師などとして育成することでした。留学生の方がずっと多くて、自国学生の2倍程度の2000人ぐらいかそれ以上と聞いた記憶があります。現在では学校の規模も大幅に拡大し、中国人学生の方がずっと多いそうですが。

中国と国交のある世界中の国から来た学生がいました。日本人がここで学ぶ際の問題点のひとつは、留学生の人数が多いので必然的に日本人もとても多くなり、「日本人村」ができてしまうことでした。何かと便利だったり、初めての外国生活でも精神面の負担が減るというメリットはありますが、日常会話が日本語中心になり中国語を使う機会が減ってしまうのです。

ただ、北京語言学院には留学生が多いことによる長所もありました。例えばクラス分けが細かいことです。自分に最も適したレベルのクラスに入れるチャンスは大きくなります。留学生数が合計で50人ほどしかいない別の大学で中国語を勉強した知人は「クラスが2つしかない。上級のクラスは難しくてついていけない。下級のクラスは初心者向けすぎる」とこぼしていました。

それから、北京語言学院でとりわけ面白かったのが、さまざまな国からの留学生と交流できることです。私の場合、ざっと思い出すだけでも、エジプト、シエラレオネ、ルワンダ、アルジェリア、カナダ、イタリア、ドイツ、モンゴル、ユーゴスラビア、北朝鮮、タイ、パキスタン、トルコ、キプロスなど、日本に住んでいたのではあまり会う機会のなさそうな国の人とも会話をして、特にはパーティーをするなどの交流をすることができました。

▼異なる国から来た留学生とのコミュニケーション、まずは英語で会話
中国の新学年は9月に始まります。ということで、長期留学生の場合、8月の末ぐらいに新入生が到着し始めます。たいていの学生は中国語初心者です。まったくゼロからのスタートという学生も珍しくない。でも、宿舎(寮)での生活なのでいろいろな国から来た留学生とのコミュニケーションが必要です。

ということで、留学当初は英語を使っての会話が主流になりました。私は英会話をきちんと学んだことがありませんでした。今でもありません。でも、さまざまな国の人とは会話したい。めったにないチャンスですからね。そこで、無理やりに英語を使うことにしました。

ブロークンもいいところ。それでも「通じればよし」ということにしました。パーティーの際に初めて会ったイタリア人に、10秒もしないうちに「お前は日本人だろう」と言われたことがあります。「LとRの区別がない」と言われました。あちゃあ。まあ、そういうことは気にしないことにしました。

なにしろ、私に「アイ・エコノミー・トゥー・スタディ・チャイナ・ケイム」といったモンゴル人もいた。「私は経済を勉強するために中国に来ました」ということでした。語順がほぼ日本語式だ。モンゴル語と日本語は語順が同じですからね。自国語の語順通りに英単語を並べただけです。まあ、英語はある程度勉強したのでしょうが、会話をトレーニングした経験はなかったのでしょう。それでも通じている。私としては「それで、いーじゃん」です。

▼「英語はやっぱり日本人に限る」との結論
とはいえ、言葉は正しく使った方が意思疎通はスムーズだ。一生懸命使っていると、かつて勉強した文型や表現を少しずつ思い出してくる。語言学院で学ぶようになってから2、3カ月で、英語での意思疎通がかなりできるようになりました。中国語の会話能力はまだほとんどなかったのですけどね。

英語と言っても、国によってクセがあります。エジプト人やインド人、パキスタン人は多くの場合、語尾の「r」をはっきり強く発音します。例えば「teacher」だったら「ティーチャー」ではなく「ティーチェル」という風に。最初は面食らいましたが、会話を繰り返すうちに慣れてくるものです。

ある時、いろいろな留学生が集まるパーティーがありました。参加した日本人は私を含めて数人。そこでの会話も英語が主流。日頃から英語での意思疎通に努めているとはいえ、付け焼刃式もいいところなので、やはり疲れました。

パーティーもお開きとなり、寮の建物に戻る日本人同士で、「どの国の人が使う英語が分かりやすいか」という会話になりました。まず「ダメ出し」の対象になったのは、米国人、英国人、オーストラリア人。なにしろネイティブですからね。流暢に猛スピードで話す。聞き取りにくくて仕方ない。イタリア人やドイツ人の英語への評価はまずまず。インド人なんかの英語も聞き取りやすいのですが、「あの語尾のrはなんとかしてほしい」という意見には皆が同意しました。

居合わせた日本人数人の間で、誰が言い出すともなく「やっぱり英語は日本人にかぎる。ほぼ確実に聞き取れる」という結論になったのでした。

語言学院にやってきた外国人留学生は、授業が始まってから半年ほど経過したころから、主に中国語を使うようになっていきました。なにしろ、目的は中国語の学習ですからね。自然な成り行きです。それとともに私も英語を使わなくなり、私の英語力は残念ながら、元の木阿弥になる運命なのでした。

■筆者プロフィール:如月 隼人
日本では数学とその他の科学分野を勉強したが、何を考えたか北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは編集記者を稼業とするようになり、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。同時に、経済記事や政治記事、解説記事などにも注力。
※掲載している内容はコラムニスト個人の見解であり、弊社の立場や意見を代表するものではありません。
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