<羅針盤>日本の科学研究、課題山積=中国などに劣後、このままではノーベル賞受賞者激減も―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2018年2月11日(日) 6時0分

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理系研究論文数を左右する3要素は研究資金、研究時間、研究者の数だが、これらの全てで日本の科学研究状況は悪化しているという。しかも非正規雇用、任期付研究者が多く、今は優秀な理系学生の多くは修士の段階で一般企業に就職し、博士課程に進む学生が減少している。

目下受験シーズンたけなわ。前回のコラム「技術立国日本、理工系学部志望者を増やすために」で、将来の技術立国日本を支える理系学部への志望者を増やす努力が必要と訴えたところ、多くの読者から共鳴のコメントをいただいた。そこで今回、大学研究現場の課題について考えてみたい。

2015年のノーベ物理学賞を受賞した梶田隆章東京大宇宙線研究所長によると、理系研究論文数を左右する3要素は研究資金、研究時間、研究者の数。これらの全てで日本の科学研究状況は悪化しているという。知人の大学研究者に聞いても、非正規雇用、任期付研究者が多く、今は優秀な理系学生の多くは修士の段階で一般企業に就職し、博士課程に進む学生が減少していると嘆いている。

というのも主に科学研究を担う国立大学は研究予算の減額と短期的な成果を求める競争原理の導入により、おしなべて疲弊している。一握りのトップ大学を除き、教員の人件費は削られ、年間研究費50万円未満の教員が全体の6割を占める事態となっているとか。昨今問題になっている「研究力の低下」 「研究不正」はこうした背景下で起きているようだ。

一方、私立大学は転機となる18歳人口がこれから一直線に減少する「2018年問題」といわれる年を迎えた。定員割れの大学が4割に上っているにもかかわらず、潰れる大学は意外にも少なかったが、今後増えることが懸念される。

情報家電、燃料電池、AI(人工知能ロボット、ソフトコンテンツなどを日本が世界に誇れる先端的産業群として強化すべきであろう。ナノテク、バイオ、IT(情報技術)、環境などの技術革新は日本の強みである。今後の課題は、日本の優位な技術分野を戦略的に拡充し、日本発のグローバルビジネスモデルとして早期に育て上げていくことだ。

その戦略のコアになるのが「人材」であり、人材をつくり、育てるのが教育である。国際競争力の基盤をつくる「教育」への情熱こそが、日本が競争力を回復する鍵である。日本も産官学連携の下、国家レベルで人学改革や人材育成を進めなければ、中国に後れを取ることは確実だ。国も企業も「人づくり」を急がねばならない時期に来ているのではないか。

21世紀に入って理系の日本人研究者のノーベル賞受賞者が続出したが、「このままでは日本人のノーベル賞受賞者は激減する」と懸念する声もあるようだ。

私はかつて数十回にわたり中国の大学で講演を行ってきたが、印象深かったのは、中国人の高い学習意欲と教育に対する情熱である。最近の中国の大学は、国家の発展に向け、研究・教育体制の充実はもちろん、国内外を問わず産業界との連携とベンチャー企業の育成に大変積極的だ。こうした環境の中、中国では優秀な人材が多数輩出され、中国における高等教育機関の在学者数は、驚異的なペースで増加、2000万人以上に達している。

しかも中国人の若者は基本的に欧米の一流大学(大学院)に留学し、多くが首席を取り、留学後帰国せず、その地で事業を起こして成功し、実績を持って帰国し、中国の発展に貢献するケースが目立つという。最近ではインドや東南アジア諸国の若者も同様の傾向があるとされる。

英教育誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションが最近発表した「2018のアジアの大学ランキング(アジア・中東の大学を13指標で評価)」によると、日本からは東大が唯一トップ10入りしたが、順位は1つ下げて8位。東大はかつて1位を維持していたが、中国などの大学の台頭により順位を下げ続けている。100位以内に入った日本の大学は京都大、大阪大、東北大、東京工業大、筑波大など11校で、昨年より1校減少。首位は3年連続でシンガポール国立大。中国の清華大と北京大、香港大、香港科技大、シンガポールの南洋工科大が続き、トップ10の顔ぶれは昨年とほぼ変化がなかった。

研究者の絶対数で中国の足元にも及ばないものの、日本がグローバル競争に勝ち残るためには、大学の研究体制の拡充強化はもちろん、産官学が一体となって、生産性を高め、高付加価値化で勝負することが必要だ。日本が国際競争力を維持していくには、日本でしか作れないモノや領域を常に開拓する必要がある。そして、技術的に絶えず世界で先行することが大切である。

<羅針盤篇22>

  

立石信雄(たていし・しのぶお)

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC=企業市民協議会)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。公益財団法人日本オペラ振興会常務理事。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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