中国が福島県産の食品輸入解禁?専門家「土壤汚染が一番心配」―中国

人民網日本語版    2018年1月31日(水) 21時20分

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日本政府はここ数年、福島県産の食品の輸入を解禁するよう世界各地に求めている。写真は福島の被災地。

日本政府はここ数年、福島県産の食品の輸入を解禁するよう世界各地に求めている。共同通信社は1月初め、宮城や福島など10都県の日本産食品に対する輸入禁止措置について、撤廃や緩和に向けて本格的に協議するために、中国が作業部会の設置を提案したと伝えた。この点について、中国社会科学院日本所の学者・盧昊(ルー・ハオ)氏は、「中国の農産品の基準をクリアしていることを確認してから、解禁を検討すべき」との見方を示した。科技日報が伝えた。

福島県産の食品をどのように見るべきなのだろう?中国科学院大学の彭光雄(ポン・グアンシオン)教授がこのほど、核科学という観点から、福島県産の食品輸入をすぐに解禁すべきかについて語った。

▼「一番心配なのは土壌汚染」

「原発事故に起因する大気や海洋の汚染より、私が心配しているのは土壌の汚染。影響が長く続く放射能で汚染された土地で生産される食物が、食物連鎖によって世界中に拡散すれば、深刻な結果を及ぼす。放射性物質が体内に入り、そのまま体内に残ると肝臓や胃腸などに影響を及ぼす。汚染した食品を食べると体内被ばくのようになり、健康にかなりの害がある」と指摘している。

原発事故で放出された放射性物質は、肉眼では確認できないほど小さい物質だ。彭教授によると、「ナノスケールは10億分の1メートルで表されるのに対して、原子核の大きさは1メートルの1000兆分の1であるフェムトメートルで表される。放射性物質はまず大気を汚染し、7年かけて、その影響が少しずつ小さくなる。しかし、大気中の放射性物質は最終的に雨や雪を通して、畑や田んぼに入り、その土壌を汚染する」。

原発事故発生後、放射性物質であるヨウ素131、セシウム134、 セシウム137の検出が日本で公表されるようになった。半減期は、放射性ヨウ素131が約8日、放射性セシウム134が約2年、放射性セシウム137が約30年だ。「セシウム137の半減期が約30年ということは、30年後になって、セシウム137の数値がやっと半分減るということ。半減期は、放射性物質の平均寿命と存在期間を示す」。

「この3種類の放射性物質より、私が心配しているのはプルトニウムとストロンチウム。原子炉で発生する放射性物質はヨウ素131、セシウム134、セシウム137だけではなく、もっと多い。天然に存在するプルトニウムの大半を占めるプルトニウム−238の半減期は約87年。その他、半減期が6000年以上、ひいては2万年以上のプルトニウムの同位体もある。ストロンチウム−90は一級発がん性物質だ」。

▼汚染物質の排出は現在進行形?

「福島第一原子力発電所の本当の現状について完全に把握している人はおらず、人々を不安にさせている。福島第一原子力発電所からの汚染物質排出は止まっているのか、まだ続いてるのかについて、検査を行い、情報を公開している国際機関はない。また、海底の汚染状況は、衛星を使っても分からない。また、福島第一原子力発電所を運営していた東京電力の信頼性にも疑問が残る。公開されている資料によると、事故発生以前にも、福島第一原子力発電所では、応力腐食割れ問題や事故が何度も起こっており、東京電力には、自主点検検査記録などのデータ改ざんをしていた前科もある」と彭教授。

「工程が複雑であるため、福島第一原子力発電所の廃炉作業も思うように進んでいない。廃炉で一番難しいのが、使用済燃料プールから燃料棒を取り出す作業だ。使用済み核燃料の処理は世界的な難題。最も一般的な方法は、密封して地中深くに埋めるやり方だ。土で深く埋めると、放射能が漏れだすことはない。しかし、深く埋めたとしても、地震や地質変動が原因でそれが出てくる可能性はゼロではない。1986年に旧ソ連でチェルノブイリ原発事故が起き、発電所全体を「石棺」と呼ばれるコンクリートの建物で覆った。鉄筋コンクリートで放射能の放出を防ぐ作戦であるものの、原子核はそれ自身の規律に従って、石棺の中で自然崩壊したり、放射能を放出したりしている。時間が過ぎ、石棺に割れ目が生じたり、破損したり、メンテナンスが十分でなかったりすると、放射性物質が漏れだす可能性もある。現在、石棺のメンテナンスはウクライナ政府にとって一番の課題となっている」。

福島第一原子力発電所の使用済燃料棒はすでに取り出され、保存されている。しかし、廃炉後の処理作業が続く中、小規模な火災などのトラブルも続出している。そして、汚染水が処理されずに直接海に排出され、水産物を汚染している可能性もある。

▼現状に基づいて福島県産の食品輸入解禁検討を

今年1月初め、福島県産の食品輸入解禁について、中国でも大きく報道された。この点について、彭教授は、「福島第一原発事故発生後、中国政府や世界各国の政府は、輸入を禁止、制限したり、検査を強化したりしたことは、必要で正しい措置だった。しかし、7年という時間が過ぎたため、汚染の程度に基づき、政策を適度に調整し、現状に基づいて、段階的かつ慎重に、解禁を検討することができる。それは、福島県産の食品輸入を解禁してほしいという日本に対する姿勢ともなる」との見方を示している。

▼福島県産の農産品は安心?

彭教授は、「色眼鏡でそれを見るのではなく、科学的にその問題を検討しなければならない。農産品の検査結果が食品安全基準をクリアしていれば問題はない。食品の放射性物質の検査基準は、国によって違うものの、その差は大きなものではない。土壌の検査も、放射能の強さや比放射能が基準をクリアしていれば問題ない」との見方を示している。そして、現在、福島県出身の人が自宅に戻り始めていることについて、「放射能の影響を受ける範囲は時間の経過と共に小さくなる。大事なのは、帰る場所の放射能の状況で、安全な数値内であれば戻ることができる」とした。

日本農林水産省の統計によると、2017年12月の時点で、中国、米国ロシア、韓国、シンガポール、台湾などが依然として、日本の一部の地域、またはすべての地域で生産された食品の輸入を制限する措置を講じている。(提供/人民網日本語版・編集/KN)

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